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雷神の暴走

 須恵吉大付属の次のレイダーは有田。


(本職のストライカーほどではないが、チームのなかでは私が一番体が大きいし、格闘の心得もある。多少警告を受けても、いや退場になっても、一人ぐらい道連れにしてやる! どうせなら甲斐! 防壁が発動する前に、あんたを潰させてもらうよ)


 有田は、アタックサークルを取り囲む龍堂学園四天王の内、甲斐に狙いを定めると、サークルの線いっぱいにまで甲斐に近づく。


(タックルして倒れながら、あばらの一本ぐらい折らせてもらうよ。いくら魔術遣いでも、体はひ弱い小娘だからね!)


 甲斐が「手ぇ出すんじゃないよ! こいつはあたしの獲物だからね」

 鳥居が「あたしの仕事は終わったからね。でもびびってケツをまくるなよ」

 金剛が「……潰されたらただじゃおかない」

 稲津が「まぁ、せいぜい高みの見物をさせていただきます」


 カウント1で、【跳躍】の術をかけた有田の肉体が、甲斐に向かって発射される。


「うぉぉぉ!」

 咆吼を上げながら有田は突進する。


 その発射速度はさすがに蘭や目黒ほどではないが、至近距離ゆえ、目黒の眼から見ても防壁の展開、いや避けることさえ困難に見えた。


 それでも甲斐は詠唱を始める。


 有田は体に力を込め、例え目の前に【対物防壁】が張り巡らされても、それを突き破る覚悟で突進していった。


 だが、甲斐の前に防壁は現れなかった。

(勝ったぁ!)

 勝利を確信した手が、腕が、甲斐の腰を包み込もうとした瞬間!


”どすぅぅぅん!”


 龍堂学園のコートが地響きによって震える。

 そして、龍一と龍堂学園四天王以外の口が大きく開かれる。


 甲斐の目の前では、【空から降ってきた対物防壁】によって、ゴキブリのように潰された有田の屍が横たわっていた。


「ばっかじゃないの? 防壁は防ぐだけじゃなく、頭の使いようでは攻撃出来るのよ」


 甲斐は髪をかき上げると”フン!”と鼻を鳴らした。 


 龍堂学園のレイダーは稲津。


「山路衣舞さん……いい弟さんをお持ちですね」

「あ、どうも」


 妖しい笑みを浮かべた稲津に、衣舞は戸惑いながらも返事を返した。


「短パン、Tシャツ、そして頭のハチマキ。本当……同じような格好をしていながら、どうしてこうも違うのか……。物心ついたときからすぐ側にいる幼なじみの男の子が、正にその格好をしていたんですよ。時には一緒に遊び、時には喧嘩をして、そして仲直り。そしていつしか女の子は、幼なじみの男の子ではなく、一人の男性として惹かれていく……。女の子なら一度はあこがれるシチュエーションですわね」


「あ、まぁ……そうですね」

「本当……この……”脳筋糞馬鹿野郎”がぁ!」


 稲津の体から光の糸が四方八方に放出された。


「いっつもいっっっつも! 私はあいつの尻ぬぐい! ときめいた事なんてありゃしない! たまに食事に行ってもニンニクたっぷりの焼き肉食べ放題! 喫茶店に行けばミルクの中にプロテインを入れて飲む始末! 映画に行けば爆音のイビキを奏でて、ゲーセンに行けば私の帯電体質でゲーム機がことごとく破壊され、あげくの果てには出入り禁止!」


 最後は明らかに自分が悪いのだが、それでも稲津の暴走は止まらなかった。


「ゲーセンのパンチングマシーンって知っています? こう叩いてパンチの破壊力が何㎏あるか表示するヤツです。こう見えても私……あれで999㎏出したんですよ。はい一トンです。すごいです。ちなみに理由は……わかりますよねぇ? 放電体質なのにグローブつけるの忘れてましたぁ! さらに! どこかの脳筋糞馬鹿が嬉々として私の名前を入力したから、未だに私の名前がチャンピオンとして表示されているんですよ……あっはっはっは!」


 既にカウントテンは終了しているのだが、須恵吉大付属のメンバーはピクリと動かなかった。


 ハッと気が付いた衣舞がみんなに指示を出す。


「気をつけろ! こいつはカミナリ、電気を放出するぞ! なぁに所詮”デンキウナギ”と一緒だ。数秒間我慢すれば電池切れになる! そこから一気に潰すぞ!」


(あ、馬鹿! よりによって、一番真理に言ってはいけない言葉を!)


(……残念ですが目黒君、もう私たちではどうしようもできません。私たちに出来るのことは、須恵吉大付属のご冥福を祈るだけです)


 デッドエンドラインの両端では、二人の男がテレパシーで通じ合ったかのように、稲津に【マギディ】を唱えながら、心の中で須恵吉大付属に向かって祈りを捧げた。


「”デンキウナギ”ですか……だあぁぁぁれがあぁ! ”デンキウナギ”だぁぁぁ!」


 稲津を中心に何十何百の光の糸が放たれる。


 外部に被害が及ばないよう、神の眼によってコートを包み込む《絶対対魔防壁》にカミナリがぶつかるその光景は、正にインテリアのプラズマボールそのものだった。


”我慢どころではない!”

と逃げ回る須恵吉大付属のメンバーに、正に天の怒りであるカミナリが直撃する。


 そして辺りには白煙を上げた七つの屍が横たわっていた。


”ふん!”と髪をかき上げ自コートに戻る稲津。

 もはや龍一でさえもあっけにとられ、ハイタッチすることすら忘れていた。


『龍堂学園レイド成功! 龍堂学園7ポイント獲得! 須恵吉大付属0、龍堂学園23』

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