穏やかな日々 ②
◆◇ 第三十一章 ② ◆◇
「お嬢様、今日は王宮へ行く日でよろしいですね?」
アンナは毎朝フェリシアの予定を確認した。
「えぇ、そうよ。」
「お妃教育ですか?」
「ううん。マティアス様が新年祝賀会までは時間に余裕があるから二人でゆっくり過ごそうとおっしゃってたわ。」
フェリシアの答えにアンナはグフフと笑った。
「まぁ、今日はお二人でイチャイチャなさるのですね?」
「そ、そんなんじゃないわ。」
「あら、いいではありませんか。婚約が発表されてしまうとお二人きりで甘い時間を過ごすのは難しくなってしまうでしょうから。」
「あ、甘い時間って。。。。。」
甘い時間という言葉を聞いただけで大人の男女を想像し、勝手に赤面してしまったフェリシアだった。
マティアス様はイチャイチャなんてなさらないわ。
今日は天気もいいから。。。
そう、おそらく庭園散歩ね。
王族専用の庭園かもしれないわ。
そして東屋でお茶ね。
きっと、そうよ。
イチャイチャ甘い時間なんて。。。。
ルイス様ならやりそうね。
ダレルはどうかしら?
意外と恋人と二人きりだと。。。
いやだわ、私、何変なこと想像してるよ!
フェリシアは両手で顔を覆った。
「お嬢様? もしかして変なこと想像していませんか?」
「し、してないわよ。もう、嫌だわ、アンナったら。」
「はい、はい、わかりました。 では、今日はお二人でゆっくりお過ごしになるようですから可愛い感じに仕上げましょうね。」
「えぇ、お願い。あっ、あの髪飾りがいいわ。」
「はい、承知しました。」
フェリシアが王宮に到着するとダレルが待っていた。
「フェリシア様、殿下が騎士団棟の執務室でお待ちです。」
あら、騎士団棟?
庭園かとばかり思っていたけど。。。
違ったみたいね。
フェリシアが納得がいかないような顔をしたのをダレルは見逃さなかった。
「どうかされましたか?」
「ううん、何でもないわ。騎士団棟は久しぶりだなぁと思ったの。」
ダレルは黙って聞いていた。
「マティアス様と出会ったばかりの頃はよく騎士団棟や厩舎に行ったのよ。厩舎へ続く小径が大好きなの。特に途中にある小さな花壇がお気に入りで初めて通った時は黄色いモッコウ薔薇が見事だったわ。その頃ダレルはどこの所属だったの?」
無邪気に話しているフェリシアはダレルの顔が一瞬曇ったのに気づかなかった。
「・・・・・その頃私は、王宮担当班所属でしたがパルトで大規模な暴動があり緊急に組まれた鎮圧隊に参加しておりました。」
ダレルは淡々と語った。
フェリシアはハッとした。
「私、気が利かなかったわ。嫌なこと思い出させちゃってごめんなさい。」
ダレルは春に起きた暴動で負傷したんだったわ。
しかも正式にはまだ休職中だったはず。。。。
フェリシアが申し訳なさそうにしているとダレルはいつもの口調で話し始めた。
「いえ、お気になさらないでください。私は騎士ですから怪我は当たり前のことです。負傷したのも自分に隙があったからでしょう。」
ダレルは一瞬黙ったがフッと笑うと続けて話した。
「最近思うのですよ。あの時負傷していなかったら、もしくはすぐに復職していたら、こうしてフェリシア様をお守りすることはできなかっただろうって。きっと今日も王宮にフェリシア様がいらっしゃるのに存在も知らずに任務を遂行していたことでしょう。逆に事件があったからこそフェリシア様のお側にいられるようになったと思えるくらいです。」
フェリシアはダレルの顔を見るといつものお澄まし顔をしてた。
「・・・・」
本当にもう、ダレルのお澄まし顔は困るわ。
どう反応していいかわからないもの。
こっそり読んでる恋愛小説にも登場してこないタイプだし。。。
フェリシアは黙ったままだったがダレルは全く気にせず執務室の前で立ち止まった。
「フェリシア様、着きましたよ。」
ダレルはノックをしフェリシアを連れてきたことを伝えた。
「入って。」
室内からマティアスの声がした。
扉が開けられた。
「マティアス様、フェリシアでございます。」
フェリシアが入室すると室内にはマティアスとルーファスがいた。
マティアスはまた机に足を投げ出していたようでフェリシアが入ると慌てて立ち上がった様子だった。
「座って、フェリシア。」
マティアスはフェリシアに席を勧めると嬉しそうに長い時間彼女を見つめた。
「あ、あの、私、変ですか?」
マティアスが穴の開くほど見つめるので不安になったフェリシアだった。
「へっ?何で?」
マティアスはキョトンとしていた。
「ずっと私を見ているので。。。」
フェリシアは答えながらだんだん頭を下げていった。
「あー、今日は、いや今日も可愛いなと思って。」
フェリシアは下を向いたまま目だけをチラッと上に向けマティアスを見た。
彼は恥ずかしがっているフェリシアを満足そうに見つめていた。
今朝アンナが言っていた「イチャイチャ」ってこういうことかしら?
いや、違うわ
これはただ恥ずかしいだけだもの。。。
フェリシアが悶々としているとコホンと軽い咳払いが聞こえた。
顔を上げるとルーファスがお茶を持って立っていた。
「フェリシア様、これで一息ついてくださいね。」
ルーファスは慣れた手つきでお茶をカップに注いだ。
「あら、甘くてうっとりする香りだわ。」
フェリシアは香りを楽しみたく目を閉じた。
するとルーファスはマティアスしかいないのにフェリシアに近づき小声で言った。
「実はこのお茶、フォークナー総騎士団長のお茶なんです。こっそり頂いちゃいました。」
フェリシアはバチッと目を開けた。
「大丈夫なのでしょうか。」
フェリシアの心配そうな顔を見たルーファスはウィンクをした。
マティアスも問題ないといった表情を見せた。
「総騎士団長はお茶がお好きなのですね。」
お茶を一口飲んでからフェリシアは言った。
「総騎士団長はお茶にこだわりがあるらしく時々邸から茶葉を持ってきているんだ。フェリシアが美味しかったと言えばむしろ喜ぶと思うよ。」
マティアスも香りを楽しむようにカップを顔に近づけながら言った。
剣術しか能がないようなレッテルを貼られていたマティアスだったが、こうしてお茶を楽しむ優雅な姿を見るとやはり王子様なんだとフェリシアは改めて感じた。
「フェリシア、どう? 落ち着いた?」
「はい、総騎士団長のお茶が効きましたわ。」
フェリシアは微笑んだ。
マティアスは少し身を乗り出した。
「フェリシア、今日は天気がいい、本格的な冬が来る前にウィザードと一緒に出かけないか。」
「は、はい。ウィザードに乗りたいです!」
フェリシアの喜びようにマティアスは満足気だった。
二人を見ていたルーファスは執務室の前で待機したいたダレルに何かを告げるとダレルは頷きどこかに向かった。
フェリシアが好きな小径を通り厩舎に行くとすでにダレルがおり厩舎係のダンとウィザードの世話をしていた。
マティアスたちが行くとダンは帽子を取り深々と頭を下げた。
「こんにちは、ダン。」
フェリシアが軽い感じで声をかけるとダンは嬉しそうに挨拶をした。
「お嬢様、お久しぶりでございます。」
ダンを見たマティアスは急に彼を呼び止めた。
「ダン、もう妃殿下って呼んでもいいのだぞ。」
そう言うとフェリシアを横目で見た。
驚いたフェリシアは高速で首を振り、ダンはアワアワ狼狽えていた。
「あはは、ダン、遠乗りに出かける。馬場の門から外に出るから。」
マティアスは笑いながらダンに伝えるとダンは再び頭を下げた。
「承知いたしました。」
「本当に今日はいい天気ですね。なんだか春みたいですわ。」
フェリシアは暖かい日差しに目を細めた。
「あぁ、そうだな。真冬になる前に遠乗りに行きたかったんだ。」
マティアスが喋ると密着させている上半身に振動が伝わった。
マティアスとの相乗りは初めてではないが、やはりドキドキしてしまう。
フェリシアは自分だけが変な意識をしていると思われたくないので、冬色に染まりつつある木々を眺めて気持ちを落ち着かせた。
「いつもの場所、パルトの街が一望できるところで休憩するかい?」
「えぇ、パルトの街並み、見たいわ。」
この場所も初めて訪れた場所ではないが、何回訪れても感動を与えてくれる場所だ。
二人は柵ギリギリまで身を近づけ王都パルトの街並みを眺めた。
「パルトはいつ見ても綺麗な街ですね。」
「俺もそう思うよ。」
パルトは中央広場を中心に放射線状に道が広がってる。
「マティアス様、あそこが中央広場ですよね?三番通り、見えますか?」
「あぁ、わかるよ。」
「あそこに美味しい食堂があるんですよ。庶民向けなんですけど。」
フェリシアは「フフ、王子は知らないだろう?」と得意な顔をして教えた。
「え?食堂?フェリシアは行ったことあるの?」
「フフ、店主も女将もいい人なんですよ。」
フェリシアはちょっとはぐらかすように言った。
「あー、行ったことあるんだな。よし、今度一緒に行こう。」
「フフフ、仕方ありませんね。付き合ってあげましょう。」
フェリシアは笑いながら、そして少しだけ上から目線で言った。
「今日はもう少し遠くまで足を伸ばそうと思っているんだ。」
マティアスは馬を繋いでいる場所に戻ろうとした。
「まぁ、もっと遠くですか?」
「ここは騎乗の練習をする馬場で城壁内なんだ。今日は外に出ようと思っている。」
マティアスはウィザードを走らせた。
ここがまだ城壁内だなんて驚くほど広いのね。
今度一周回ってみようかかしら?
でも私の足で一日で終わるかな。。。。
フェリシアが周りの景色を見ながら王宮に来た時の楽しみを考えていると、小さな扉と門番らしき男が二人立っているのが見えた。
マティアスは二人に近づくと門番は慌てて敬礼をした。
「ご苦労。門を開けてくれ。」
一人は扉の鍵を開錠し、もう一人は何やら帳面らしきものに書き出した。
マティアス、ルーファス、ダレルは一瞬顔を見られただけだけだったが、ウィザードに乗っているフェリシアの前で立ち止まりじっと顔を見上げた。
王宮の出入りはしっかり管理されているので、いつ、誰がどの門から出て行ったかを記録するのだが、男性三人はすぐ判断つくが、フェリシアが何者かわからなかったのだった。
「殿下、こちらのご令嬢は。。。。」
記録担当の門番は申し訳なさそうに小声で聞いてきた。
フェリシアは隠す必要もないと思い名前を告げようと「フェ」と言いかけた途端、マティアスはウィザードの手綱を引いた。
「彼女は俺の婚約者だよ。」
マティアスがいい終わらない内にウィザードは門の外へ走った。
門番は腰を抜かしそうなくらい驚いていた。
「マ、マティアス様、婚約者だなんて言ってしまって大丈夫なのですか?」
「平気さ。きっと今ルーファスがちゃんと説明しているよ。」
マティアスがケロッとしているのでフェリシアは上半身を捻って後方を見ると、マティアスが言った通りルーファスが門番と話しているのが見えた。
「にしても、今日のマティアス様ったらお口が軽すぎではありませんか?」
「アハハ、そうか?」
「妃殿下とか婚約者だとか。。。」
「だって事実だからいいだろ? それに。。。」
「それに?」
「アーサー兄上の婚約が決まったら何だか開放された気分になって皆んなに言いたくなってしまったんだ。」
「まぁ。」
「これからはもう兄上に気を使うことはないさ。手を繋いで歩くし、聞かれたら俺の慕っている令嬢だと堂々と言える。こんな喜びあるか?」
フェリシアはマティアスに圧倒され目をパチクリさせていた。
「フェリシアが楽しみにしていたダンスだってそうさ。今度の新年祝賀会ではあの大広間で一緒に踊ろう。」
「はい!楽しみですわ!」
「一応マデリン嬢のお披露目も兼ねているからあまり目立たないようにしないとな。」
「うふふ、そうですね。王太子様とマデリンが主役ですものね。」
「本当は十曲位続けて踊りたいけど少しは兄上に気を使わないとね。」
「まぁ、マティアス様ったら。」
「アハハ」
二人は森の中を進んだ。
冬とはいえ森の中は木が生い茂っており側に川も流れていた。
日差しが届かないため空気は冷たかった。
フェリシアはブルっと震えた。
「寒い?」
「いえ、大丈夫です。」
「もうすぐ森を抜けるよ。もっと身体を俺にくっつけるといいよ。」
いえいえ、そんなことできないわ
と思っていたらマティアスの言葉通り少しずつ太陽の光が届いてきた。
「ここだよ。」
そこは森を出たすぐの本当に小さい空き地のようだった。
「さぁ、こっちへ来て。」
マティアスはフェリシアの手を引いて低い丘のような場所へ移動した。
「わぁ、見渡す限り畑だわ。さっきの街並とは全然違いますね。」
ここは森や畑しかない王都のはずれだった。
あとは童話の小人が住んでいそうな可愛い木造の家がポツンポツンと建っていた。
「ここはパルトですか?」
「ギリギリ境界線と言ったところかな。あそこの林道を進むとエマーソン領、エマーソン伯爵の領地に出る。」
「こういう景色初めて見ました。それに女神様もいらっしゃるんですね。」
貴族邸の踊り場程の広さのこの場所に生えている小さな木に女神リライラ像が彫られていた。
「かなり崩れている部分もあるからだいぶ前に彫られたのだろうな。」
マティアスは女神像を触りながら言った。
「おそらくここらの農民たちの休憩場所になっているのだろうね。」
「お祈りしてもいいですか?」
フェリシアは女神像の前に立ち胸の前で手を組み目を閉じた。
マティアスは祈るフェリシアを斜め後ろから見つめていた。
時折フェリシアの愛らしい唇は何かをつぶやいているように小さく動いていた。
フェリシアは何を祈っているのだろう。。。。
静かな空間を終わらせたのは子供の声だった。
フェリシアも目を開き向きを変えた。
「子供の声が聞こえたわ。」
「ほら、あそこの畑に子供がいるよ。」
マティアスが指差した畑に三歳位の男の子がよちよち歩いていた。
お手伝いをしているのだろうか、男の子は籠を抱えていた。
フェリシアは微笑みながら子供を見ていた。
「うふふ、よちよち歩いて可愛いわ。マークみたい。マティアス様、マークのこと覚えていますか?」
フェリシアは畑を見たままマティアスに尋ねた。
マティアスは黙ってフェリシアに近づき背後から腕を回した。
「キャッ」
フェリシアは飛び上がりそうな程驚いた。
マティアスはニヤッとしてから耳元で続けた。
「覚えているさ。だってマークは俺の息子だからね。」
フェリシアは思い出し笑いをした。
「うふふ、パパって呼ばれてましたものね。」
二人で子供を目で追っていると、母親らしき女性が子供の方へ向かってきた。
子供は母親を見つけると「ママー」と声を上げ抱きついた。
「お母さんを探していたのね。」
フェリシアは優しい眼差しで親子を見つめた。
「あら、マティアス様、見てください。お母さんのお腹大きいわ。あの子もうすぐお兄ちゃんになるのね。」
母親はお腹に顔をスリスリしている子供の頭を撫でていた。
マティアスはフェリシアの温かみのある微笑みを見つめながら聞いてみた。
「いい顔しているね、フェリシア。今、どんな気分?」
「どう言えばいいのでしょう。すごく満ち足りたというか心穏やかというか。賑やかな街とは別世界のこの素朴な景色がこんなにも心の安らぎを与えてくれるとは思いませんでした。今日はここに連れてきてくださりありがとうございました。」
マティアスは大満足だった。
「フェリシアもすぐ我が子に愛情を注ぐあの母親のようになるんだろうな。」
フェリシアは慌ててマティアスを突き放した。
「そ、そんないきなり何をおっしゃるんですか。。。そういうのはちゃんと段階を踏んで。。。」
「アハハ、もちろんさ。でも、早くマークをお兄ちゃんにしてあげたいだろう?」
フェリシアは顔を真っ赤にして横を向いた。
そんな彼女を見ながら今度はマティアスが幸せな気分になった。
「あー、でも、俺としてはもっと二人でイチャイチャしたいからフェリシアの母性を見るのはもっと先かな。」
「え?イチャイチャって。。。。」
フェリシアは朝アンナが口にした「イチャイチャ」に反応した。
「イチャイチャはね。。。。」
マティアスは言いながら一旦離された距離を埋めるためにフェリシアを引き寄せてギュッと抱きしめた。
そして流れで彼女のおでこに唇を二回重ねた。
数秒そのままフェリシアを抱いていたが口を開いた。
「俺は王子という特殊な立場だけど、フェリシアと出会ってから王子の前に一人の人間なんだと気づいたよ。初めて会った時、フェリシアのことは何も知らないのにこの令嬢と一緒にいたい!って思ったよ。愛する人と共に歩み、いずれ授かるだろう子供はどっちに似るのかな?なんて考えたりした。」
フェリシアは一瞬何が起こったのか理解できず混乱していたが、身体をマティアスに委ね彼の言葉に耳を傾けた。
「こんなことを想像するだけで人は幸せな気分になるんだとわかったんだ。」
マティアスはフェリシアを木彫りのリライラ増の前まで手を引いてくると改めて二人向かい合った。
「フェリシア、今まで俺の都合ばかり押し付けて悪かったよ。」
フェリシアはマティアスの顔を見た。
「愛しているよ、これからもずっと俺の隣にいてくれるかい?」
マティアスは膝をつき手を差し出した。
フェリシアはしばらく黙ったまま何もしなかった。
マティアスはもう一度フェリシアの顔を見つめた。
キラキラ輝いている銀色の髪、美しく澄んだ青い瞳、いつも優しく繋いでくれる剣だこのある手。
フェリシアはひとつひとつゆっくり確認すると頷き自分の手を差し出された手に乗せた。
「はい。私もマティアス様のお側にいたいです。」
フェリシアの言葉にパアッと明るい表情になったマティアスはフェリシアの手の甲に口づけした。
マティアス立ち上がるとフェリシアを抱き寄せ掌で彼女の頬を包んだ。
恋愛オンチのフェリシアでもこれは口づけされると思い声を出した。
「め、女神様の前ですから。。。。」
マティアスはちょっとだけ意地悪を言った。
「じゃあ、反対を向いてならいい?」
「こ、こっちはダレルたち見られてしまいますわ。」
「彼らは下にいるから見えないよ。」
「で、でも。。。」
マティアスは笑った。
「残念だけど今日は解放してあげる。でも、次は覚悟して。」
フェリシアは、あぁ、助かったと深く息を吐いた。
「お腹が空いたね。戻って美味しい物を食べよう。」
マティアスは何事もなかったようにフェリシアの手を取りウィザードの元へ急いだ。
王宮に戻るとどこで情報を聞きつけたのかジョシュアが仁王立ちしていた。
「フェリシア!王宮に来たのになんで僕に教えてくれなかったの?」
怒っている男の子も意外と可愛いものだ。
フェリシアは余裕で謝った。
するとマティアスはフェリシアの前に立ち、
「何を言っているんだ、ジョシュア。フェリシアは俺の恋人であり婚約者であり妻になったら俺の子を産んでくれる大切な人だぞ。」
マティアスはあっちへ行けと追い払うように言った。
「フェリシアは僕の側仕えでお義姉様になる人だもん。それに僕はフェリシアが大好きなんだ!」
ジョシュアも負けていなかった。
フェリシアは二人を交互に見て苦笑いをした。




