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  作者: 水野 すいま
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第91話 事件

次の日、リンはいつもと同じように燃のエネルギーで秋葉原竜太の顔を作り、学校へ登校した。

いつもと変わらない日常。

しかし、今日は燃の姿は無い。

あれだけ傷を負ったのだから疲れて寝ていてもおかしくないだろう。

というより、燃が学校へ来ようとしたため、ゆっくりと休んでいるようにリンが厳しく言っておいたのだ。

いくら燃が普通の人間でなくても休息ぐらいは必要なはずだ。

「おーい!!みんな席に着け!!」

そう言いながらSBクラスの担任の教師が入って来ると、みんな大人しく席に着いた。

相変わらず結束力だけは高いクラスだ。

「休みは倉田と金田と渡辺と中原か・・・なんだか常連だな・・・」

呆れたようにそう言うと、担任は連絡を始めた。

リンはその連絡を聞こうともせずに窓の外をじっと眺めていた。

一瞬、空の空間が歪んだように見えた。

「・・・!」

注意してよく見てみる。

目の盲点の移動等であったのだろうか。

しばらく見つめていても何も変わりが無かったため、リンは安堵のため息をついてそこから目を逸らした。

その瞬間、空が大きく割れ、その隙間からは赤黒い世界と大量の妖が覗いている。

それと同時に燃のエネルギーの衝撃波のような紫色をしたものがすさまじい勢いで学校の校舎めがけて飛んできた。

その衝撃波のようなものは校舎を両断してしまいそうな大きさだ。

それが校舎にぶつかれば学校の中に居る大半の人間は死ぬであろう。

しかし今はそんなことを言っている場合ではない。

他人のことを構っていたら自分が死んでしまう、そう思ってリンは防御体制をとった。

しかし後ろから何者かに突き飛ばされ、横に転倒する。

リンは一瞬だが、その者の顔が見えた。

倉田信吾の姿をした燃だ。

燃は窓を開け、空に両手を掲げてエネルギーを一気に放出する。

放出されたエネルギーは校舎を覆いつくすほどの巨大な赤い壁になった。

衝撃波がエネルギーでできた壁にぶつかる。

「くっ・・・!!」

相当衝撃が強いのか、燃が顔をしかめる。

しかし、しばらくすると衝撃波は勢いが無くなった為か、空中に四散した。

そのまま燃はエネルギーを大量に放出し、先程のものと同じくらいの大きさの衝撃を空の亀裂に向かって放った。

攻撃が当たったのかどうかは分からないが、とりあえず敵の攻撃は止んだようだ。

燃は空中に掲げた手を下ろしリンのほうに向き直った。

「よう。早く立てよ。次来るぞ。」

そう言うと燃は懐からレーザーガンを取り出してリンに投げ渡した。

「・・・うん。」

戸惑いながらもリンが頷く。

「それとこれももう必要ないな。」

燃がそう言って指を鳴らすと倉田信吾、秋葉原竜太の顔が消え、変わりに燃とリンの顔が現れた。

「それももうとって良いぞ。」

リンの頭を指し示しながら燃が言った。

「あ・・・うん・・・って、ちょっと待って。」

かつらを取り、結んである髪を解いてからリンが立ち上がった。

「ん?・・・何だ?・・・がっ!!」

燃が振り返ると同時にリンは燃の頭を殴った。

その場で燃が頭を抑えてうずくまる。

「な・・・何するんだよ!?」

涙目になりながら燃がリンの顔を見る。

「あのさ、燃。私、家で待ってろって言わなかった?」

呆れた顔でリンが言う。

「あ・・・いや、嫌な予感がしてよ。急いでここまで来たんだ。」

「ふ〜ん・・・じゃあ何で制服を着ているの?嫌な予感がしたんならそんなことしている余裕は無いはずじゃない?」

「あ・・・」

燃が硬直する。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

しばらくの沈黙。

「はあ・・・どうせい影から見張っているつもりだったんでしょ?まったく・・・いつも無理するんだから・・・」

「すまん、すまん。とりあえず今は許してくれ。こんなことしている場合じゃないみたいだからな。」

そう言って燃が空を見上げる。

空の亀裂は先ほどよりも大きくなり、その周りには丸い透明の壁のようなものが見える。

俊平が結界を張っているのだろう。

「お・・・おい、お前ら・・・いったい何なんだ?」

しばらく硬直していた担任がようやく口を開いた。

「ああ、先生。どうも、今まで騙していてすみませんでした。もうお気づきかと思いますが俺は荒木燃。そしてこいつが助手のリンです。」

リンを示しながら燃が言う。

「これからこの町を爆破するので逃げたほうが良いですよ。じゃ、俺はこれで失礼します。」

赤いオーラでできた羽を作り出し、にやりと笑いながら報告してから燃は窓から飛び降りた。

「なっ!!お・・・おい!!」

担任と生徒達が慌てて窓に駆け寄り下を見る。

通常、3階から落ちてはただでは済まないものだが、燃は普通に立ち上がって歩いていた。

「先生、皆、今までありがとう。とても楽しかったよ。」

「じゃあ、そういう事だ皆元気でやれよな。」

「本当はもって遊びたかったんだけど、ここまでみたいだね。みんな、じゃあね。」

そう言って燃に続き、リン、良平、美穂が窓から飛び降りた。

その3人どれもがきれいに着地し、そこから燃の後を追いかけた。

その4人が歩いている先には巨大な剣を背負っている男とその4人に向かって手を振っている男が居た。

「よう。持ってきてやったぜ。」

そういって光太郎は良平と美穂にナイフと大剣を投げた。

「光太郎さんありがと!!」

「師匠にしては気が利くじゃないっすか。」

良平は嫌味を含めながら礼を言い、美穂が素直に礼を言った。

「俊平さん・・・向こうは?」

燃が空の亀裂を示しながら訊いた。

「ああ、4体こっちに向かってきている。この4体は僕の結界じゃ防ぎきれなかった・・・つまりはそれだけ強いってことだ。」

「なるほど・・・」

頷きながら燃がエネルギーを放出し、手に収束した。

よく見ると空の亀裂にかぶって小さく人影が見える。

そこから小さく光が見えたかと思うと、あっという間に黄色い光が燃立ちの目の前まで延びた。

「ぐっ・・・!!」

燃はすぐに手を前に構え、それを止めようとする。

しかし、予想に反して攻撃が強かったのか、燃はその場から3メートルほど吹き飛ばされた。

「くっ・・・げほっ、ごほっ!!」

燃は苦しそうに血を吐くが、すぐに跳ね起きて空を見た。

そこにはすでに腕を近未来の大砲のような形に変えた美樹の姿があった。

「久しぶりだね。」

美樹は燃に向かって微笑みかけながらそう言った。

「ああ。そうだな。」

顔をしかめながら燃が言った。

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