第92話 共感
美樹が到着してから数秒後に健一、洋子、そして昨夜学校に居た幽霊のような妖が到着した。
「よう燃。体の調子はどうだ?」
健一は不気味な笑みを浮かべながら、そう言った。
「ああ。おかげさまで最悪だ。」
汗をきながら燃が言う。
「先生!!死にたいんですか!?早く生徒を連れてこの町から出てください!!」
燃は驚いた顔で3階の窓から見物している担任に向かって大声で叫んだ。
「あ・・・ああ。おい、皆、避難だ。」
目の前で起きていることにパニックを起こしているのだろう。
徐々に皆動き出した。
「こらっ!!何をしているか、君達は!!」
校舎から出てきた教頭が不良の喧嘩だとでも思ったのか、そう叫びながら近づいてきた。
「・・・仕方ない!!」
燃は腕にエネルギーを集中させ、巨大な衝撃波を体育館目掛けてはなった。
「おわっ!!」
衝撃波の風圧で教頭が倒れる。
衝撃波は体育館に当たり、体育館は大きな音と煙を立てて崩れた。
「へえ・・・」
健一はうれしそうににやりと笑いながら、その体育館を眺めていた。
一瞬の静寂・・・
おそらく1秒も経っていないだろう。
校舎で燃たちのやり取りを見ていた生徒や教師は我先にと一気に出口へと向かって走り出した。
いわゆるパニック状態と言うものだろう。
しかしその騒ぎは5分ほどで終わってしまった。
収まったのではない。
誰も居なくなったのだ。
燃たちを残して・・・
「もうそろそろ良いか?」
健一は腕組みを解いて燃に訊いた。
「ああ、これは待っていてくれたことに感謝するべきか?」
「いや、いい。俺も同じ形をした生物を殺すのはなかなか気が引ける。それに逃げたところで結果は変わらないしな。」
そういって健一が身構える。
「そうか・・・だが、それはお前らが勝てればの話だろう?」
「・・・・・・いや、どちらにしろ変わらない。カイ!!」
健一がそう言うと空の亀裂の周りに張られてきた結界が空中に消えた。
「ごめんな・・・」
燃達が一斉に俊平のほうを見ると俊平は申し訳なさそうにそう言った。
「リン!!」
「うん!!」
燃がリンのほうをそう言いながら見るとリンは頷いてポケットの中からスイッチのようなものを取り出し、そのスイッチを押した。
その瞬間、地面から空にかけて空の亀裂を囲う細長い棒状の結界が出来上がった。
「へえ・・・」
健一はまたもやうれしそうに笑いながらその風景を見ていた。
「何!?」
俊平は驚いた様子でその結界を見た。
「私もあんたと同じ世界の住人だったんだよ?カイ。」
そういってリンが俊平を見ながら微笑む。
「俊平さん、別に謝んなくてもいいよ。俺もずっと疑っていたわけだし・・・だけど、理由だけ聞かしてくれないか?じゃないとあんたの家族が納得できないみたいだからさ。」
そう言って良平、美穂、光太郎の方を見る。
光太郎はやはり何かを感じていたのか、しかし複雑な顔をしていた。
良平と美穂は全く意味が分かっていない様子で俊平を見ていた。
「ただ彼らに共感しただけだよ。」
「共感?」
良平が俊平の顔を覗き込みながら訊く。
「ああ、そうさ。共感だ。僕はもともとこの世界の人間じゃない。リンさんと一緒でね。だから彼らに共感してしまうんだ。自分の世界が危なくなって仕方なく他の世界を襲う。これにはなってみないと分からない辛さがある。そんなところに共感してしまうんだ。」
俊平はリンを見ながら説明した。
「カイ・・・その共感を過ちの粛清という形には変えられないの?私たちと同じように過ちを犯している人がいるんだよ?それを直してあげようって思わない?」
リンは悲しそうな顔をしながら俊平に訴えるようにして言った。
「兄貴・・・どうしても、ダメなのか・・・?」
良平も相当苦しそうだ。
「・・・今まで楽しかったじゃん。こっちに戻ってきてよ・・・」
まるでお願い事をするかのようにして美穂が言う。
「無理にとは言わない・・・だが、やはりお前と戦うのは気が引ける。」
光太郎は隠しているようだがやはり辛そうだ。
「・・・・・・みんなの気持ちはありがたいけど、やっぱりもう決めちゃったことだから・・・」
そう言って俊平は健一の隣に行った。




