第85話 助太刀
「・・・・・・」
りんは黙ってその女性を見る。
狙いを定めて撃ったはずなのにその女性は何事も無かったかのように立ち上がった。
その女性から5メートルも離れていないのだ。
その距離で外すはずが無い。
黙ったままレーザーガンを構え、リンは再びその女性に狙いを定めて撃ち込んだ。
「当たってる・・・筈だよね・・・?」
美穂が後ろから心配そうにリンに聞いた。
「・・・うん。一瞬だけだけど妖の気配がしたから妖みたいだけど、この妖・・・得体が知れない。ちょっと協力してくれる?」
そう言ってリンが再び構えた。
「OK。最初からそのつもりだよ。」
美穂は背中に括り付けてあった大剣を構えながら言った。
そう言って話している間にもその妖はリン達の方にゆっくりと歩み寄ってきている。
「いくよ・・・!!」
掛け声をかけて美穂がその妖の突撃していった。
そしてその妖めがけて剣を振るう。
しかし、切った感触がしない。
避けられたのかと思い、美穂は急いで体勢を立て直して辺りを見回す。
「前!!」
リンがそう叫ぶとほぼ同時に妖の赤く鋭い爪が美穂を襲う。
「くっ!!」
美穂は反射的に横に転がり、間一髪でそれを回避する。
リンは美穂が妖から離れたのを確認し、妖めがけて引き金を引く。
しかしその弾は妖に当たることなく、そのまま妖を通り過ぎて後ろの壁を破壊した。
「リンさん・・・!!」
切羽詰った顔で美穂がリンに呼びかける。
「うん・・・分かってる。」
リンの表情にも余裕が無い。
リンたちの攻撃はかわされている訳ではない。
当たらないのだ。
二人の攻撃すべてが妖を通り過ぎてしまっているのだ。
「仕方ない・・・逃げるよ!!」
そう言ってリンは廊下を一直線に走り出した。
「うん!!」
美穂も同じことを考えていくのかリンとほぼ同時に走り出していた。
「でもリンさん、逃げてどうするの!?」
美穂が走りながらたずねた。
「とりあえず燃たちと合流して作戦を立てる。どうやら普通の敵じゃないみたいだからね・・・!!」
そう言ってリンが曲がり角で曲がった。
美穂もその後に続く。
が、急に止まったリンに美穂は激突した。
「な・・・何?どうしたの?」
そういって美穂はリンの隣からリンが見ている方向を見た。
「・・・!!」
そこにはゆっくりと階段を上る先ほどの妖の姿があった。
「どうやら・・・逃がしてくれないみたいね・・・」
苦笑いをしながらリンが言った。
次の瞬間、妖の髪が突然生き物のように動き出し、リンたちに向かってすごい速さで伸びてきた。
「なっ・・・!?」
リンも美穂も構えておらず、その攻撃を受ける術が無い。
レーザーガンを取り出そうとするがさすがに間に合わない。
こうなったら合い打ちだけでも・・・と思いリンはレーザーガンの先を妖に向ける。
その引き金を引く直前、リンは何かに吹き飛ばされた。
「かはっ・・・!!」
苦痛の声を上げてリンが壁にぶつかる。
すぐに自分の体を確かめる。
どうやら穴は開いていないようだ。
美穂を見ると、そこには美穂ではなく、こちらに手を向けている燃の姿があった。
「よう、ずいぶんやられ気味だな。」
にやりと笑いながら燃が言った。