第40話 誤魔化し
「ん・・・」
傷を負って寝ていたリンが小さく伸びをして目を開けた。
「あれ・・・?私・・・」
リンは起き上がって辺りを見回した。
まだ辺りは真っ暗で街灯に照らされた部分に血が飛び散ったような痕がある。
「よう。やっと起きたか。」
あぐらをかいてだらけるように座っている燃が後ろを向きながら言った。
「・・・・・・あっ!敵は!?」
リンは突然思い出したように勢い良く立ち上がった。
しかし、突然体が痛み、その場でうずくまった。
「まあ、落ち着け。傷は塞いだが、まだ多少の痛みはあるはずだ。説明があるからとりあえず座っておけ。」
「説明・・・?」
リンはその場でそっと座りながら聞いた。
「ああ、とりあえず俺が今、エネルギーで向こうの世界の偵察をしているから、状況が変わり次第俺が連絡をする・・・どうだ?簡単だろ?」
「簡単なのは良いけど・・・それだけ?」
首をかしげながらリンが言った。
「ああ、それだけだ。」
にやりと笑って燃は親指を立てた。
「はあ・・・それじゃあ、今のところは何にも分かってないのね・・・」
呆れたようにため息をついてからリンは言った。
「まあまあ、そんなに焦っても仕方ないだろ。」
燃はからからと笑いながら言った。
後ろで真面目な顔をしていた良平が燃の側に歩み寄ってきた。
「おい、燃。そんなことよりさっきの・・・」
「しっかし、明日、このボロボロの体で過ごさなきゃいけないのか・・・結構辛いな・・・」
燃は良平の言葉を途中でさえぎった。
「リン、お前は大丈夫か?」
心配そうに燃がリンを見ながら言った。
「え・・・?あ・・・まあ、結構辛い・・・かな?」
リンはいきなり話が変わったので戸惑いながら言った。
「だよな・・・よしっ、俺はここを直してから行くから皆は先に部屋に戻っててくれ。それから良平はあの二人が居なくなった理由を考えておいてくれ。」
「あ・・・ああ。」
良平は戸惑いながら答える。
「じゃあ、解散!!」
燃はそう言って手を挙げた。
三人は訳がわからないという表情をしながら宿に向かった。
すばやく燃は良平の手を掴んで自分の方に引き寄せた。
「わっ!っととと・・・」
良平はたまらず転びそうになり、何とかバランスを保った。
「なんだよ?」
良平は不機嫌な顔で燃に向かって言った。
「あの作戦のことはリンには内密に頼む。」
真面目な顔で燃が言った。
「はあ?何でだよ?」
意味分からないと言った風に良平は眉にしわを寄せながら言った。
「リンは絶対に反対する。だから言わないでくれ。」
燃はじっと良平の顔を見る。
「・・・・・・分かったよ。何でかは分からんが、とりあえず承諾しておくよ。」
しばらく悩んだ後に良平はフッと笑いながら言った。
「サンキュ。」
燃はホッとしたように笑った。