第38話 謎
「で、お前らは結局何なんだ?」
燃は気功術でリンの腹部と手の治療をしながら言った。
リンは出血が酷すぎて気を失っているのだろう。
「・・・だから、俺たちは国からお前を監視するために派遣された特殊部隊の中の二人だ、ってさっき言っただろうが!!」
良平はイラつきながら燃に説明した。
「おお、そうなのか。ということは国は俺が無実だって認めたのか?」
感心感心、と頷きながら燃が良平に尋る。
「いや、その逆だ。国は完璧にお前が容疑者だと思っているようだ。」
首を振りながら良平が言った。
「は?じゃあ、何でお前らは?」
「俺たちは国の意見に反対だからな。」
にやりと笑いながら良平が言った。
「そうか・・・・・・そのことは国には?」
「いや、まだ言ってないが・・・?何でだ?」
良平は燃に不思議そうに聞く。
「・・・・・・そうか。よかった。」
安心したように燃が言った。
「?」
意味分からないと言った風に良平が燃の顔を覗き込む。
「じゃあ、黒田達はそのまま国には従っている風に見せてくれ。」
しばらく考えた後、燃は突然そんなことを言い出した。
「?・・・まあ、いいけど・・・」
良平はさらに意味が分からなくなったようだ。
「そんで、俺を指名手配とかで悪い方向で有名にしてくれ。」
再び燃は考え事をしながらそんなことを言い出した。
「あ・・・ああ、わかった。・・・って、はあ!?お・・・おまえ、何言ってんだよ。」
頷いた後に良平は驚いた目で燃を見ながら言った。
「後で話すから・・・なっ?頼むよ。」
手を前に合わせて燃は良平に頼んだ。
「・・・・・・分かったよ。何考えているかは分からんが、何か考えがあるんだな?」
しばらく考えた後、良平はため息をつきながら言った。
「サンキュ。」
燃はにやりと笑いながら言った。
「で、さっきから思ってたんだが、そいつよりもお前の方が重症なんじゃないのか?」
リンを指で刺しながら、良平が燃に向かって問い掛ける。
「あ?・・・ああ、そうだな。」
リンの治療を続けながら燃は答えた。
「自分の手当てはしなくて良いのか?」
傷だらけの体を見ながら良平が聞く。
「ああ、リンは普通の人間だからさ・・・」
リンを見下ろしながら、燃は良平の質問に答えた。
「・・・・・・そっか、お前はエネルギーの使い手だもんな。」
しばらく考えた後、良平は納得したように言った。
「いや、そういう意味じゃなくて・・・・・・まあ、いいか。」
燃は否定しかけたが、諦めたようにそう言った。
「ん?なんだ?」
途中で止めた燃を不審に思ったのか、良平は不思議そうに聞いた。
「いや、何でもない。」
もう傷は治ったのか、気持ち良さそうに眠っているリンの寝顔をじっと見つめながら燃は言った。