第25話 作戦
「竜太、ちょっといいか?」
信吾の姿をした燃は途中のパーキングエリアで止まったバスを降りて、はしゃいでいるリンを呼び止めた。
「なんだい?」
竜太の姿をしたリンは楽しそうな顔のまま振り向いた。
「ちょっとついて来てくれ。」
燃はそう言って歩き出した。
しばらく歩くと人気のない場所に健一もいた。
「どしたのさ、二人して?」
リンは首をかしげながら言った。
「お前、風呂はどうする?」
燃は先ほど健一に言われたことをリンにそのまま伝えた。
「風呂って普通に入れば・・・あっ!!」
リンは今の自分の姿を見て途中で言葉を切った。
「まあ、そういうことだ。風呂には入らないほうが良い。」
燃は困っているリンに言った。
「一週間入るなって言うのかよ!?冗談じゃないぜ。」
リンは怒ったように言った。
「何とか我慢できないかなあ・・・」
燃はリンを見ながら言った。
「できない!!」
リンの瞳には炎が灯っている。
リンは意地でも引かないようだ。
「・・・・・・仕方ない、お前は夜に旅館から抜け出して銭湯に行け。それが最善策だ。」
燃は諦めたように言った。
「なるほど・・・」
リンは納得したようにそう言った。
「よしっ、じゃあバスに戻ろう。何とかなるだろう。」
燃はそう言ってバスに向かいだした。
健一達もそれに続き、三人はバスに乗り込んだ。
「何で私だけ置いてったの?」
洋子は不満げに言った。
「男三人に女一人で姿消したらおかしいだろ。」
先生に酷くしかられた燃は右手をひらひらとさせながら言った。
「うう・・・確かにそうだけど・・・」
洋子はそれでも不満のようだ。
おそらく仲間はずれにされるのが相当嫌いなのだろう。
「まあまあ、何とかなりそうだしいいじゃないか。」
燃は洋子の様子を見て笑いながら言った。
「う〜ん・・・」
洋子はしばらくそのまま唸っていた。