第26話 囁き
「お〜い、皆ちょっと聞いてくれ。重要な話だ。」
担任がバスの中でそう言って立ち上がった。
クラスの皆は一斉に担任の方に振り向いた。
「実は修学旅行においてもっとも大切なこと、班分けをするのを忘れてた。・・・ということで今決めちゃってくれ。」
先生はいい加減にそう言うとさっさと座った。
あちこちで呼びかけが飛び交った。
一班の人数は4人までということになっている。
「倉田君。一緒の班にならない?」
隣からそんな声が聞こえてきた。
燃が振り返ると、陽気で美人なことで有名な中原美樹が話し掛けてきた。
「あの・・・俺、男なんだけど・・・」
倉田信吾の姿をしている燃は戸惑いながら言った。
「うん、知ってるよ。だから話し掛けたんだもん。」
美樹はそう言ってウィンクをした。
「あの・・・ほら、男女共同は禁止とかになってないの?」
燃は咄嗟の思いつきで言った。
「この学校は・・・というか、このクラスはどういう訳か、なってないのよ。」
美樹は肩をすくめながら言った。
「で・・・でも、何で俺なんかと・・・?」
燃がそう言うと美樹はクスッと笑いながら燃に顔を近づけてきた。
「夜の学校、格好よかったよ。」
美樹は笑みを浮かべながら囁いた。
「・・・・ッ!!」
燃は驚いて美樹から離れた。
そこにはいつもの爽やかな笑みしかなかった。
「あなたに断る権利はないの。分かる?」
美樹はにっこりと微笑んだ。
「・・・・・・分かった。」
燃はしぶしぶ頷いた。
「ついでに部屋は二人っきりね。」
美樹はそう言って自分の席に戻った。
「なっ!?ちょっと待て!せめてそれだけは・・・」
「言ったでしょ?あなたに選ぶ権限ないって。」
美樹は燃の言葉をさえぎった。
「くっ・・・・・・健一、そういうことだ。」
燃は後ろにいる健一に話し掛けた。
「よく分からんが分かった。」
健一は意味不明な言葉を発し、他の友達と話し始めた。




