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1001番目の男  作者: ノーマー=Z=クアーズ
第2章 アキラメ
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20番目 逃亡の果て

 一体どれほどの距離を走ったのだろうか。まだ息切れが続いている。人のいない森の中に、上田の荒い息づかいが浸透していく。森は静かだが、体にまとわりつく羽虫がうっとうしい。

 休み始めてから、かれこれ1時間以上は経過しているように思う。追っ手は来るだろうか。アレは解除済みだから、すぐに居場所がばれるということはない。計画通りに動くこともできたし、予想外の事態も起きなかった。それにあの状況で上田を追うような判断はできないはずだ。もしも、そんな判断をする人間がいるとしたら、ただの馬鹿か、野性的な勘を持つやっかいな馬鹿だ。だいぶ距離は稼いだのでもう少し休んでも良いだろう。むしろ、まだまだ休息は必要だ。

 異世界に来てから全般的な身体能力が強化されているのにもかかわらず、今の上田は体力の限界に近付いていた。少なくとも上田自身は、そう感じている。

 戦場から逃走し、以来、半日走り続けた。逃走時に使ったせいで、体内の魔素も、ほとんど空っぽに近い状態だ。これでは魔法や魔術が使えたとして、せいぜいお遊び程度のものくらいだろう。それだけで敵を打ち払うようなことはできそうにない。

 上田は魔素をここまで消費したのは初めてだった。最初に魔法を使ったときや、ゲイリーの腕を焦がしたときもかなりの疲労感を感じたが、それは、また別の理由だ。単純に魔素の過剰消費でふらつきをおぼえたことはない。基地での訓練でなら、何度かそこまで追い込まれたことはある。ただしそれに関しては体力的な問題だ。今回とは少し違う。

 しかしこの魔素切れ状態というのは中々に気持ちが悪い。まるで二日酔いだ。気持ちは沈み、頭痛がひどい。水でも飲みたい気分だ。もちろん大した効果など期待はできないだろうが。ただ二日酔いと違うところもある。それは意識が散漫であることだ。考えるべきことはほかにもあるはずなのに、思いつかない、考えられない。脳が働くことを拒否している。そういった意識が定まらないという点では酩酊に似ている。だがそこにアルコール特有の浮遊感はない。ただ単に思考を深めていくことができないだけだ。そしてそれに対してもまた、はっきりとした危機感を抱くことができない。心身ともに疲労困憊であるということと、休憩を欲していることについてばかりに頭がいってしまう。そもそも今は夜。周囲はよく見えない。これでは危険だし、進む速さも上がらない。状況が上田に休めと言っているのだ。そうに違いない。

 もうあと5分だけ寝よう。そうしよう。


 上田は木々がこすれあう音で目が覚めた。

 何が木を揺らしたのだろうか。

 地震ではない。汗ばんだ頬に風は感じない。目を細めて見ても小動物の類はみつからない。

 代わりにみつけたのは、赤い髪の伊達男。やっかいな男。そして、尊敬すべき男。

 ジョーだ。

 僕は彼を殺さなければならない。

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