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村長ノマッド

 時は遡り、スラムの住人達第二陣を運んで来たアルシュ商会の馬車。


 移住してきた子ども連れの母親が新村にやって来て唖然としていた。


「ねえ、僕達こんな立派なお家に住めるの?」


 子どもが母親に尋ねる。


「あの、スピラル様? どうなんでしょう……」


「うん。家族ごとに一軒家に住めるよ」


 スラムの民一同がどよめく。


「スラムのみんなにはミスリル鉱山でミスリルを採掘してもらうことになる。少し大変だけど、月に金貨百枚を給与として出すよ」


「金貨百枚も……」


「あの、病気を治してもらったばかりのうちの夫はまだ働けないかと思うんですけど」


「俺が病気を治したばかりの人達には、まずリハビリをしてもらってからだね」


「リハビリ……ですか?」


「うん、治療がまだ終わってないからね。動けるようになったら働いてもらうよ」


 新村に猫獣人達がやって来る。猫獣人達には、大きなムース(ヘラジカ)を解体しておいてもらった。


「さあ、歓迎会といこうか」


 歓迎会のバーベキューが始まる。


 俺はアルシュ商会の大旦那シェルシェール・アルシュと、スラムの顔役ノマッドと話しをした。ノマッドが言う。


「スピラル様、まずはスラムで蔓延していた不治の病を治療して頂きありがとうございます」


「いやいや、気にしないでいいよ。ミスリル鉱山で地下採掘してもらうから少し大変だしね。俺も手伝わせてもらうけどさ」


「「え?」」


 アルシュとノマッドがポカンと口を開ける。


「殿下……殿下自らミスリル鉱石を採掘するのですか?」


 アルシュが驚いて尋ねる。


「今のところミスリルを砕く方法が無いからね。俺が魔法で砕かないと」


「なるほど、確かにミスリルを砕く魔法使いはほとんど存在しないでしょうね」


「皇室の第一皇子自らミスリル鉱石を採掘しようと言うのか……」


 ノマッドが呟いた。


「さあ、二人とも食べて食べて」


 俺はトングで肉を焼いていく。


「これだけ贅沢に胡椒を使うなんて……さすがは帝国皇子……」


 そこへ、猫獣人の村の村長がやって来た。俺が立ち上がる。


「二人とも、紹介しておくよ。彼が猫獣人の村の村長、サイベリアンだ」


 ゆっくりと立ち上がり握手を求めるアルシュ。慌てて立ち上がるとズボンで手を拭き、手を差し出すノマッド。サイベリアンがまずアルシュの手を握り、次にノマッドの手を取る。


「私達の村からも男手を出しますので、これからお互いの村を発展させていきましょう」


 ノマッドの瞳に涙が浮かぶ。


「はい!お互い頑張りましょう!」


 ※※※


 ノマッドはグルートンの洪水で村を失った村長だった。洪水が起こってからは、食うに困り、村人達を連れて帝国のスラムに逃げ込んだ。そこで日に一度の食事を得た。仕事を失い、スラムで毎日無為な一日を過ごしていた。そんな日々を過ごす中、ある日突然この国の第一皇子がやって来て言った。「新しい村の村長にならないか?」と。ノマッドは即答した。「是非に」と。


 ※※※


 俺がいる間は実質的に俺がこの村の統治者になるが、ノマッドに村長になるように伝えておいた。


 俺とノマッドと新村の民(元スラムの民)達はミスリル鉱床に向かう。猫獣人の男達も一緒だ。


 アルシェが問うた。


「殿下、これから何をしに?」


「実際に現場を確認してみて、誰にどこを任せるか調べてみようと思うんだ」


「なるほど、新村の民達と猫獣人の男達にどれだけのことが出来るか調べてみると言うことですか?」


「そうだな、無理をしない範囲で仕事が出来るようにね」


「私も参りましょう」


 俺達はミスリル鉱床に着いた。


 猫の精霊様がぼんやりと現れ、その猫の姿がハッキリと見えるようになると、猫獣人達が膝をつく。俺もすぐに膝をつくとそれに倣い、新村の村人達も膝をついた。


「よいのです。立ちなさい」


 俺が立ち上がると、猫獣人の村人達が立ち上がり、続いて新村の村人達も立ち上がった。


「ミスリル鉱床へ行くのでしょう」


 猫の精霊様に俺が答える。


「はい」


「共に行きましょう。新たに毒ガスが出ているところがあるかもしれません」


「分かりました。では、中へ入りましょう」


 猫の精霊様がこくりと頷く。


 ミスリル鉱床の奥、オークキングが隔離されていた場所。


 そこにはミスリル鉱石が塊となって落ちていた。


「これ誰か持てるかな?」


 大柄な猫獣人の男がサイドチェストをすると、腕を筋肉で膨張させ、俺の出番だと前に出る。


「俺が持ち上げてやるよ」


「このトロッコに乗せてくれるかな」


「御意」


 大柄な猫獣人は、大きく目を開いてミスリル鉱石を掴んだ。


 持ち上げようとする大柄な猫獣人。しかし、なかなか持ち上がらない。


 顔を真っ赤にして、身体を膨張させる大柄な猫獣人。結局持ち上げることは出来ず、その筋肉は空気が抜けたように萎んだ。


「分かった、それまで。無理はしなくていいよ」


 俺はウォーターカッターでミスリル鉱石を細かく切り分けていく。


 拳大に切り分けたミスリル鉱石を痩せ細った新村の女性に持たせてみた。


「簡単に持ち上がります」


 女性は拳大のミスリル鉱石をトロッコに乗せる。


「じゃあ、この大きさに統一しようか」


 俺はミスリル鉱石を拳大に切り分けて、これからミスリル鉱床で働く村人達に持たせてみた。皆持てるようなので、拳大に切り分けるように決めた。


「明日から早速ミスリル鉱石を掘っていこうか」


「「「はい!」」」


 両村人達が姿勢を正して返事をした。


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