1/54
プロローグ
そこは、どこにでもある中学校の昼休みの教室。
プレートには、2年2組とだけ書かれている。
ざわめきの中、ひとりの男子が机に突っ伏している。 肩をかばうような姿勢で、動きは鈍い。
その隣の席は、空いていた。
教室の後ろから、ゆっくりと歩いてくる女子がひとり。 足取りは迷いながらも、止まらない。
声がかかる。 男子が顔を上げる。 目が合う。
ほんの一瞬の沈黙。 そのあと、女子は隣の空いた席に腰を下ろす。
机と机の間に、互いの緊張が漂っていた。
けれど、その声は緊張の壁をそっと押し開けて、まっすぐに届く。
その瞬間、教室の空気が少しだけ変わった。 誰にも気づかれないほど静かに、でも確かに。
初恋は、隣の席から。




