姉
我が家は歴史だけはあるがお金がないカロン伯爵家。先代が事業に失敗をして、借金にまみれた。父が少しずつ返していき、まだ借金はあるが何とか没落せずにすんでいる。
家の庭にはお花ではなく野菜が実っているし、侍女が1人だけしかいないので自分の事は自分でやるのが当たり前。それでも両親と私達双子は貧しいながら慎ましく仲良く暮らしていた。
「ねぇ!レイラ!コレ見て!」
妹のアイラが扉を開け入ってくる。ものすごくキラキラした目で何かを発見したようだ。
「アイラ…もう少し静かに扉を開けてよ。もし壊れたら修理高いのよ。ってアイラ瞳の色どうしたの?!」
私達は銀髪にピンク色の瞳なのに、綺麗な金色になっている。なんで?!
「ゴメン…って違うの!私達お金持ちになれるかもしれない!!」
何?って聞くとアイラがナイフで手を切る。何してるのよ!!?やめなさい!驚きすぎて大きな声でアイラを止める。声を聞きつけ、どうしたんだと両親がやって来た。
「アイラが!おかしくなった!」
「もう…落ち着いてよ。見て。」
アイラが傷に手をかざすと光を放ち傷が塞がった。え…治癒魔法は聖女様だけが使えるのでは無かった?当代の聖女様はご高齢で次の聖女を探していると聞いた。まさかアイラが?両親は驚きすぎて呆然としている。
「アイラが聖女様?」
「さっき庭で怪我をしてあまりにも痛くて少し力入れたら治ったの!これでお金持ちになれるよ!私ちょっと神殿に行って詳しく聞いてくる!」
「待って!そんな気軽に行かない!酷使されるかも知れないし、離ればなれになるかも知れないじゃない!?」
「んー…元々跡継ぎはレイラだし、遠くにお嫁に行くなら離ればなれになるし一緒じゃない?なら家のためになる聖女しかお得よ。」
「…知り合いの神官様に明日聞いてみるから少し待って。あともう自分で切ったりしないで。アイラが傷つくのは嫌だよ。」
「わかった。待ってるね。コレで借金も返せて良いお婿さんも探せるよ!聖女決まったら頑張るね!」
アイラの明るさに家族皆で笑ってしまう。少し不安を抱えながら悩んでいても仕方が無いので、明日神官様に相談してみようと決意する。
ーーーーー
「今日はどうされましたか?」
昨日のうちに昔からよく行く神殿の神官様にアポを取り、朝からお会いできて相談をする。
「あの聖女様ってずっと王宮に住まれているのですか?結婚とかは出来ないのですか?家族には会えます?」
矢継ぎ早に質問をする私に少し戸惑いながら、神官様は落ち着いてくださいと声をかけてくれる。
「私は下っ端なのでそこまで詳しくはありませんが、当代の聖女様は大神殿でしばらく修業をしたのち王宮へ移られたと聞いております。結婚はされてないはずですが、ご家族とは良好です。過去の聖女様は結婚された方もいますよ。」
「なるほど…扱いは酷くないですよね?」
「王族と同等扱いですね。他に聞きたい事はありますか?」
「どうやって聖女様と判断されるのですか?」
「大神殿で特別な確認方法がありますので、そこでの判断となります。どなたか聖女の力が出たのですか?」
「…妹が昨日治癒魔法を使えるようになりました。瞳も金色に変化しました。」
神官様は慌てて至急大神殿へ連絡しますと言い別の神官様へ指示を出している。連絡がつき次第迎えが来て大神殿に向かう事になると言われた。では家で用意をして連絡を待ちますと神殿を出る。
家に帰り家族に話をしてアイラだけだと不安なので私がついて行く事になり2人分荷物をまとめる。その日の昼過ぎには伝令が届き、すぐ迎えが来るとの事で出発となる。
現れたのはとても豪華な馬車で中から騎士様が降りてきた。黒髪に青い瞳で騎士服がとても似合っていて、目元のホクロが印象的なキリッとした男前。色気が凄い。
「大神殿までの蒼龍騎士団が護衛をさせて頂きます、私は団長のフィリップ·ウェリントンと申します。よろしくお願いいたします。」
「アイラ·カロンです。こちらは共に行ってくれる姉のレイラです。よろしくお願いいたします。」
レイラですっと挨拶をし、両親にお別れをし馬車へとエスコートされ乗り込む。想像以上の豪華さに驚きつつ大神殿へと向かう。騎士団に囲まれ仰々しい形になっていて戸惑うが、アイラは道中外を見て楽しそうにしていた。私達は貧しい暮らしのため中々出かける機会もなくいたので、間に見る街々は珍しい物ばかりだった。
休憩のたびに団長様は気を使ってくださり、付き人の私にまで優しく気を使ってくださった。何故かわからないがたまにアイラが団長様を睨むのでそのたびに叱る。何処に敵意を持つ必要があるのか…。それでも騎士団の方は皆さん優しく、快適に目的地である大神殿へ向かう事ができた。
ーーーーー
「こちらに手をかざしていただけますか?」
大神殿に到着をし奥にある広い部屋に通され待っていると、数人の神官様が現れ手をかざす様に言われる。アイラはいつもの明るさでわかりましたー!と言い手をかざす。
ピカーッ!!眩しい光が放たれた。眩しすぎて目が潰れてしまう。手を離してください!と慌てた神官様に言われアイラは手を離す。皆目がチカチカしている。神官様達は立ち上がり膝をつく。
「聖女様お待ちしておりました。これから我々は貴方様に従わせて頂きます。すぐに神官長を呼んでまいりますのでしばらくお待ち下さい。」
え?え?立って!?とアイラが戸惑うが神官様達は頭を下げ礼をとる。神官様達は立ち上がりアイラに座るよう促し、先程までよりもさらに丁寧な態度になっている。
ノックされガチャと扉が開き神官長が入ってくる。話をすでに聞いている様子でアイラの前に膝をつき礼をする。
「こちらの方から王家には連絡をさせて頂いております。遅くとも数時間以内には陛下との謁見が行われます。大神殿では今から貴方様を次代の聖女様として扱わせて頂きます。よろしくお願いいたします。」
私達2人は思っていたよりも大事で震える。いつも気楽なアイラですら少し怯んでいる。私達はさらに奥の部屋に移動させられアイラは謁見用に着替えをするよう言われ着替える。
「ねぇレイラ?どうやって儲ける?」
「まだ早い!!」
着替え終わり呼びに来るのを待っている間アイラが聞いてくる。早いって!まだ今じゃないから!
フッと笑った声が聞こえ振り向く。先程の団長様が居た!護衛として居たのを失念していた。あとでねっと小さな声でアイラに言いながら2人黙る。
聖女様お時間ですと神官長が迎えに来て部屋を出る。共に馬車に乗り込むが私はいつまで一緒に行っていいのだろうか?そのまま王宮へ共に向かい豪華な応接室に案内をされる。姉君はこちらでお待ちくださいと言われ、聖女様はこちらへとアイラが連れて行かれた。
チラッと見ると何故か団長がいる。行かなくていいのですか?と聞いたら、こちらで待ち帰りの護衛をすると。
「アイラも帰れるのですか?」
「いえ、きっと先程の大神殿に留まる事になります。聖女様を送ったあと、レイラ様をお家までお送りいたします。」
「え?!私自分で帰れます!勝手に一緒に来ただけなので大丈夫です!」
フフッと笑い、大丈夫ですよ。聖女様の身内の方にそんな事をすると我々が罰せられますので送らせてくださいって微笑んでいる。そういうものなのかと納得する。騒いですいませんでしたと謝りソファーに座る。侍女の方がお茶を入れてくれアイラを待つ。
「レイラー!ただいま!」
しばらく待っていると戻ってきた。アイラ!良かった!無事に戻ってきた。アイラに抱きつかれ抱きしめる。耳元で大金話つけてきたよって呟く。この子は本当に…無茶しないでよね。
「疲れてない?お茶頂く?もう全部終わったの?」
「疲れてないよ!お茶は飲みたいな。まだあと少しあるみたい。私大神殿にしばらく住むんだって。わかってたけど寂しいな。」
私もだよってくっつく。ずっと一緒でずっと仲良くやってきた。寂しいに決まっている。
「私仕送り頑張るね。レイラはお婿さん探し頑張って!こっちで誰かお金持ちの良い人見つけたらレイラに紹介するね!」
だから早いって!と、シーって口に指を当て止める。聞こえたかチラッと団長を見ると、口に手を当て遠くを見ているが肩が揺れている。もう絶対変な姉妹だと思われている…恥ずかしい。
その後全てが終わりお別れのために大神殿へと一緒に向かう。お互い泣いて抱き合い、また会いに来ると約束をして離れる。エスコートされ馬車に乗り込むと団長も乗ってきた。
「帰りは私が送っていくね。」
微笑まれ目が合う。目元のホクロがやはり印象的で見つめてしまう。帰りは私だけなので馬車のみで送ってくれるみたい。
「団長様が自らですか?違う方でも…」
「私だと嫌なの?」
いえ!とんでもないです!わざわざ団長様に送っていただくなんて恐れ多くて…と弁明をする。一瞬不機嫌そうだった顔が優しく笑っている。
「君が跡継ぎで合ってる?」
「はい!両親には子供が私達だけなのでそうです。」
「婚約者はまだいないという認識で間違い無い?」
はい。いないです。先程のアイラとの会話を思い出す。やっぱり聞こえてた…。
「どなたか紹介してくださるのですか??」
「いや、私と婚約しないかと思って。私は次男だから婿にいけるよ。」
は?今日初めて会ったのに?え?なんで?
「うち貧乏ですよ?あ!聖女様の身内狙いですか??」
「私はそこそこお金持ってるし大丈夫。うちの家から支援もするし、苦労させないよ。聖女様は関係無くて家に向かえに行った時から可愛いなと思ってた。道中も可愛くて結婚したいなって。」
「でもお家の方とかね…勝手に相手決めれないのでは?」
「さっき軽く確認したけど良いって。私凄くお得だよ。次男で婿入り出来るし団長だしお金もある。幸せにするよ?どう?」
開いた口がふさがらない。隣に移動してきて私の手を取る。嫌でないなら考えて欲しいなって。アイラは家のために聖女になった…私も家のためにこの人を選んだ方がいいのでは…団長だし漂う高貴さから本当にお金持ちのはず。
「でも団長様のメリット無いですよね?」
「可愛い好ましい相手と結婚できるのが最大のメリットだよ。あと名前で呼んで欲しい。フィルと。」
「…フィル様。あとでやっぱり無しって無理ですよ?」
キャンセルしないよ。君もしないでねと笑う。ずっと手を握られていることに緊張する。
「私と結婚しよ?」
「わかりました。します。もう取り消せませんよ!」
ありがとうって頬にキスされた。真っ赤になり怒るが聞いてくれない。今日出会ったばかりの人が激甘なのは何故?家に到着するとフィル様も中まで着いてくる。ご両親に挨拶しないとって嬉しそうにしている。両親がおかえり!と迎えてくれるがフィル様を見て驚いている。
「アイラは聖女に決まったよ。しばらく大神殿で生活をしてこの先はまだ未定だって。」
そうか寂しいなって両親は口々にいっているが、フィル様が気になるようだ。
「えーっとこちらは朝会ったフィリップ·ウェリントン様です。我が家に婿入するそうです。」
「…は?殿下が?」
「殿下?誰が?」
「私だよ?第二王子なんだけど気づいてないなーとは思ってたけど、全く気付かれないのも寂しいね。」
「このお話無かった事で。」
頭を下げるが、レイラが取り消せ無いって言ったんだよ?約束したよね?ってフィル様は微笑む。言った…言ったけど。先に教えて欲しい。家族って王家って事?震える。
「うん。さっき家だったからすぐ聞けたんだ。婿入り了承貰ってるし大丈夫だよ。」
そういえば王宮にいる時に1度少しだけ離席していた。両親は完全にキャパオーバーになっている。双子の娘が1人は聖女になり、もう1人が殿下を婿に取るなどありえない展開。
「王家ならアイラの方がいいのでは?」
「あぁ…聖女様は溌剌過ぎて私には無理。レイラが良いんだ。」
わかりましたと言うとフィル様は胸元のポケットから紙を出す。これ婚約届で持って帰るので記入お願いしますと固まっているお父様に渡す。お父様は今すぐ書きます!と走っていった。
「なぜもう婚約届など持っているのですか…」
「さっき了承貰った時に持っていけってくれた。」
第二王子殿下の婚約なのに軽くない?本当にいいのかな…。お父様が戻ってきてフィル様に書類を渡す。軽く確認をして、ありがとうございます。戻って提出しておきますと帰り支度をする。
また近々詳しい話をしようね。すぐ会いに来るよって頬に口づけをし、呆然とする私達3人を置いて素早く帰って行った。




