第94話:脳の全ニューロンを融解させる黄金の魔粉(と、一口で人間の胃袋を永久に化学支配する暗黒経口精神侵食スナック)
「……アリス、聞こえる? 私たちのQOL(生活の質)メーターが、お庭の極上ピザパーティー(第93話)を終えたというのに、大脳皮質の奥深くから、かつてない『ジャンクの暴力』を求めて血の涙を流しているわ……!」
「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の前頭葉も、あの前世の夜更けに映画を観ながら袋を開けた、あの塩気とアミノ酸が脳髄を直接揺さぶる『ポテトチップス・コンソメパンチ』と『うま味調味料(MSG)』を寄越せと狂暴なパルスを送信し続けているわ。カブやおでんも美味しいけれど、ジャンクフードの王様を科学の力でDIYせずして、真のQOLカンストはあり得ないわ!」
シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。
完璧に除湿されたドライコタツ(第65話仕様)の中でハチミツレモネードを啜りながら、銀髪の双子は脳内の専用回線をかつてない「アミノ酸渇望熱」で同期させていた。
前世は三十代の理科教師、成瀬健一。
その知識とチート能力を「お気楽に美味いジャンクを貪る」ことだけに注ぎ込む双子にとって、味覚のパラダイムシフトを起こすことなど、お茶の子さいさいであった。
「いい、エレン? うま味(L-グルタミン酸ナトリウムなど)はね、単体で摂取するよりも、複数の成分を組み合わせることで旨味の強さが掛け算で跳ね上がる『うま味の相乗効果』という美しい化学反応を起こすのよ。その数理モデルはこうよ!」
y = U + k・Uglu・Uino
(ここでグルタミン酸ナトリウム( C₅H₈NO₄Na )の旨味をUglu、イノシン酸ナトリウム( C₁₀H₁₁N₄O₈PNa₂ )の旨味をUinoとするわ。この二つが結合した瞬間、相乗効果係数kによって旨味yは実に【8倍】に跳ね上がるのよ! 領内で収穫された海藻からグルタミン酸を、干し魚からイノシン酸を、乾燥キノコからグアニル酸をアリスの有機化学スキャンで抽出し、ナトリウム塩として結晶化させた世界初の『特製うま味調味料(ハイ・味覇=MSG)』を精製するわよ!)
「最高よアリス! アミノ酸の暴力ね! だったら、私はジャガイモを厚さ0.5mmの極薄にスライスして、コンビナート(第24話仕様)の極上油でカラリと二段階揚げしてあげるわ!」
二人の『二心同体』が、有機化学と界面化学の極致へと完全同期した。
アリス(理論・設計・分子化学担当)が、アミノ酸の熱分解を防ぎつつ塩基置換を行うための、イオン交換とろ過結晶化のプロセスを脳内でシミュレート。エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の視界へ、結晶成長を促すための「冷却温度勾配」をAR(拡張現実)の青いグリッドとして投影する。
エレンの指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。
エレンは、アリスの設計図に沿って、じゃがいもを自慢の『超精密魔力クラフト・3次元切削モード(120,000 rpm)』で、厚さわずか0.5mmの極薄にスライスしていく。
さらに、チタン鍋(第64話仕様)に満たした極上植物油の温度を、最初は160℃でじっくりと水分を脱水相転移(蒸発)させ、仕上げに180℃の高温で表面のデンプン層をサクサクに結晶化させる「二段階温度ドロップ(熱移動制御)」を正確に執行した。
一人が「アミノ酸相乗効果・結晶化シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度超高速スライス&油熱制御」。
双子の超絶連携により、台所のテーブルの上には、雪のように白い不思議な結晶粉末(※ただの味の素です)と、黄金色に輝くパリッパリの極薄ポテトチップスが爆誕した。
◇
「よし、エレン! 仕上げの調合プロセスよ! 抽出したオニオンエキス、ガーリックパウダー、そして私たちのMSG(黄金の魔粉)を、上空から均一にスプレーコーティングしなさい!」
「スイッチ、オォォォン!!」
パチパチ、ジュワァァァ……!
台所から、不気味に油が弾ける音が響き、エレンが巨大なチタン製のヘラ(コテ)を振り回して、
「黄金に輝く極薄の白い結晶(※ポテトチップスです)」を揚げ、
その上から、アリスが「白い不気味なサラサラの怪しい粉(※ただのうま味調味料です)」を嬉々としてパラパラとバラ撒いている不気味な光景。
同時に、換気口から、
焦がしにんにく、コンソメ、そしてアミノ酸が焦げた、
「嗅ぐだけで脳の満腹中枢をダイレクトに破壊し、強制的に唾液の海を発生させる、暴力的なまでに美味そうな匂い」が、風に乗ってリビング全体へと大爆発した。
◇
「ひぎぃっ!?」
コタツ(除湿ドライモード)でハチミツレモネードを啜っていた監察官イゾルデ。
そして、新しく別棟を監視していた王都の最高査察使(エリート官僚)の二人は、換気口から漂ってきた「悪魔の匂い」に脳をダイレクトにハッキングされ、よだれをダラダラと流して、その場で膝をついた(卒トール)。
「お、おい……アルド……。あ、あの方々は、今度は台所の暗がりで、一体どんな暗黒の化学物質を生成しているんだ……!?」
査察使が、恐怖で顔面を土気色にし、サウナハット(第51話仕様)を震える手で握りしめながら叫んだ。
彼らの視界には、
不気味に青白く光る(※ただの魔石LEDです)台所の奥。
そこで、二人の小さな悪魔(双子)が、
「どう、エレン? グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果で、旨味が物理的に8倍に膨張(爆縮)しているわ!」
「最高よアリス! ひと口食べるだけで、脳のニューロンが『旨味』で完全に焼き切られて、理性が消滅するよ!」
と、邪悪な笑みを浮かべながら、
謎の「白い怪しげな粉(MSG)」を、黄金のチップの上に嬉々として振りかけている光景。
「ま、間違いないわ、査察使様……!!! あれは、ひと口食べるだけで脳の神経伝達物質を『旨味』で完全に焼き切り、胃袋の理性(満腹中枢)を永久に消失させて、一生あの白い粉なしでは生きられない狂信的な奴隷に変える、暗黒の経口精神支配化学兵器――『メルト・ブレイン・スナック』ですわ……!!!!!」
イゾルデは、あまりの「化学支配」の光景に、よだれをダラダラと流し、コタツの布団をギュッと抱きしめた。
あの香ばしい、焦がしにんにくとコンソメの匂い。あれをひと口でも食べたら最後、脳の全ニューロンが旨味で融解され、一生双子のお掃除ロボット(第36話)と並んで、庭の落ち葉を掃き清めるだけの操り人形にされるに違いない。
「に、逃げろ……! あの匂いだけでも、私の……私の胃袋のプライドが、バ、バターにされるぅぅぅ!!」
査察使は、あまりの「経口化学兵器」への恐怖と、美味しすぎる匂いに脳のキャパシティが完全に崩壊。
白目を剥いて泡を吹き、よだれをダラダラと垂らしながら、コタツの上にへなへなと崩れ落ち、完全降伏(昇天)するのだった。
◇
数分後。
「ポチッ」とコンロの火を消し、出来立てのポテトチップスをお皿にうず高く盛った双子。
「いっただっきまーす!!」
パリッ、サクサクッ……ジュワァァァッ!!!
「「――う、ひょお、おおおおおおおおお!!!」」
口に入れた瞬間、アリスの『相乗効果数理モデル』が弾き出した「8倍の旨味(MSG)」が、大脳新皮質にカラフルな衝撃を叩き込んだ。
サクサクの極薄じゃがいもから溢れ出るコンソメと焦がしにんにくの旨味、そして冷たいラムネ(第59話仕様)を喉に流し込むと、
塩気とアロマと炭酸のマリアージュで、双子の脳内ニューロンは完全に幸福の彼方へと融解した。
「最高よエレン! 外カリ中サクサクの極限相転移と、アミノ酸相乗効果の完全勝利ね!」
「ええ、アリス! これで私たちのスナックQOLは、いつでも無限供給体制よ!」
お互いのツルツルキューティクル(第40話)の髪を揺らしながら、大はしゃぎでハイタッチを交わす小さな双子。
窓の外では、月明かりの下、すっかり目隠し(第70話仕様)をしたまま「WEB光ファイバー(第70話)」のケーブルを丁寧に磨いているアルドが、
「あのお嬢様方のスナック、実にサクサクしてQOLが高い……」
と、幸せそうな笑顔で、木製のお掃除ロボ(第36話)と並んで庭の片付けをしていた。
新章を迎えたシルバーストーン巨大観光特区には、目に見えない「極限の高分子化学・熱力学技術」と、隣領の貴族や王都の役人たちを「一口食べるだけで胃袋の理性を奪われて奴隷にされる、恐るべき暗黒のメルト・ブレイン・スナックの噂」が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。




