↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
78/141

第78話:霧を裂いて爆進する光の矢(と、大気の水分を強制結晶化して世界をハチの巣にする気象ジェノサイド兵器)

「……アリス、聞こえる? 前回の『全自動保湿ナノスチームドーム(第76話)』のおかげで、私たちの肌年齢(QOL)がマイナス5歳……じゃなくて、赤ん坊(※今も幼児だけど)のぷるぷるレベルまで若返ったのは最高だけど、この極上バナナココナッツプリン(第75・76話)の甘美な余韻の後に、ただのぬるい麦茶を流し込むなんて、QOLに対する甚大な機会損失よ……!」

「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の大脳新皮質も、あの濃厚なプリンの甘みを完璧に引き締め、脳髄の奥深くまで芳醇な苦味と香りで覚醒させる『至高の深煎りコーヒー(カフェイン)』を求めて、凄まじい禁断症状(暴動)を起こしているわ。ターゲットは、隣領との境界に広がる、年中不気味な濃霧が立ち込め、一度入れば二度と出られないとされる魔境――『迷い人の樹海』の最深部にしか自生しない、伝説の『樹海コーヒー豆』よ!」


シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。

お肌ツヤツヤでもっちもちになった銀髪の双子は、ふかふかのコタツ(冷風ドライモード)の中で、ハチミツレモネードを啜りながら、脳内の専用回線(テレパシー)をかつてない「カフェイン熱」で同期させていた。


「でもアリス、あの樹海は視界が完全な『ゼロ』、前方が一歩先も見えないほどの濃霧よ? 普通のチャリで突入したら、一瞬で大木に衝突してフレームごと肉片になるわ!」

「フッフッフ、弱気ねエレン。空気中の微細な水滴(霧)なんて、ただの物理現象よ。目指すは、音響学の力で前方の霧を瞬時に叩き落とし、さらに地形を3Dスキャンしてナビゲートする、愛車スプリンター(第28話仕様)の『魔境突破スプリンター・エボリューション』への魔改造よ!」

「最高ねアリス! 物理法則で霧を消し去り、無音で爆走するのね! 私の指先、今から超精密ホーンスピーカー切削機と同調したわ!」


双子の美少女たちの瞳に、徹底的なグルメへの執念が灯り、台所の地下工房へと滑り込んだ。


1.「超音波散霧(消霧)シールド」の音響学


アリス(理論・設計担当)は、前世の理科教師としての膨大な知識から、エアロゾル(霧)の音響学的な挙動データを引き出し、共有視界に数式を書き殴った。


「霧の正体は、空気中に浮遊する微細な水滴よ。これに高周波の音波(疎密波)を放射すると、音響流によって水滴同士が激しく衝突・凝集(アグロメレーション)を繰り返すの。質量を増した水滴は、重力に抗えなくなって『ただの雨滴』として地面に落下するわ。超音波の凝集速度Vcの数理モデルはこうよ!」


 Vc = 2r²ρwω²A²/9η

(ここでrは液滴半径、ρwは水の密度、 ωは角周波数、Aは音波の振幅、ηは空気の粘性係数よ! 周波数 f ≈ 40kHzの強力な指向性超音波を前方に放出すれば、自転車の進行方向にある霧だけを瞬時に『土砂降りの雨』に変えて地面に叩き落とし、前方に視界100%の『青空のトンネル』を穿つことができるわ!)

「計算ガイド、完全にロックオンしたわ! だったら、私の『超精密魔力クラフト・一体成形(120,000 rpm)』で、結晶化した極小水晶(ピエゾ素子)をハニカム状に並べた『超音波ホーン型トランスデューサ』をフロントフォークの左右にデリバリー(配置)してあげる!」


エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。

アリスが脳内CADで算出した「指向性ホーン(音響管)」の3D設計図に重ねるようにして、エレンはチタンの塊をコンマ数ナノメートル単位の精度で削り出し、スプリンターのフロントへと完璧に組み込んでいく。

さらに、アリスは霧の奥の地形をリアルタイムで3D透過表示する「アクティブ・ソナーナビ(第30・52話応用)」の魔導回路を敷設。


一人が「音響学・流体力学の伝播シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&3D積層(ハード)」。

双子の超絶同調(デュアル・コア)により、わずか数時間で、フロントに銀色に輝く不気味なラッパ(ホーン)を二基備え、ハンドルにARナビモニターを搭載した、不気味な魔境爆走仕様『スプリンター・エボリューション』が完成した。


◇


2.霧を裂いて爆進する、無音の銀色


数時間後。年中、不気味で濃密な霧が立ち込め、生きて戻った者はいないとされる魔境「迷い人の樹海」の入り口。

お揃いの特製サイクリングウェア(母様デザイン・第37話の電熱インナー内蔵)に身をまとった双子が、愛車スプリンターに跨っていた。


「エレン、超音波消霧シールド、起動よ。水晶ピエゾ素子、最大出力同調!」

「スイッチ、オォォォン!!!」


ガチャン、とエレンがギヤを叩き込み、ペダルを猛烈に踏み込む。

次の瞬間、樹海の物理法則が完全にメルトダウンした。


キキィィィィィィィン……!!!!!


スプリンターが爆走を開始した瞬間、フロントのホーンから、人間には全く聞こえない、しかし大気の粒子を狂暴なまでに波立たせる「指向性超音波の咆哮(40kHz)」が前方に照射された。

その瞬間。


フッ……。


「「――きたわっ!!!」」


スプリンターの進む、前方わずか幅2メートルの領域の濃霧が、物理法則に従って「瞬時に水滴へと強制凝縮」され、ザザーーッ!と局所的な土砂降りの雨となって地面に叩き落とされた。

周囲は一寸先も見えない濃密な霧(ホワイトアウト)であるにもかかわらず、双子の走る前方だけは、まるで透明なドームで守られているかのように霧が切り裂かれ、木々の隙間から木漏れ日(青空)が差し込む「光のトンネル」が出現したのだ。


エレンは、ハンドル中央のARナビモニターに映し出される「霧の奥の障害物(大木や岩)」の3Dマッピングに視線を固定。

「アリス、前方30メートルに巨木を感知! 右へ5度スライド!」

「計算通りよエレン! 慣性モーメントを殺して、そのまま時速80キロで切り裂きなさい!」


「「っっっっっりゃあああああああ!!!」」


一切のエンジン音も魔力爆発音もなく、ただ「キィィィィン……」というベアリングの超高音と、霧が雨になって落ちる「ザザザーッ」という局所的な雨音だけを響かせ、

時速80キロという、生物の限界を超えた弾丸スピードで、大木の間を物理法則を無視したライン取りで無音爆走していく銀髪の双子。

それは、ただの「美味しいコーヒー豆を採るための、お気軽な山林ドライブ」なのだが、周囲の光景は完全に神罰の光景であった。


◇


3.隠密たちの、最悪の気象兵器大誤解


その頃。

アストレア公爵領のコタツ一体化(第69話仕様)に怯え、双子の「魔王級技術」を阻止すべく、樹海の崖の上から双眼鏡を覗いていた、王都の精鋭隠密(スパイ)たち。

彼らは、霧の魔境の深部を覗き込み、全身の骨がガタガタと恐怖で砕け散るのを感じていた。


「お、おい……嘘だろ……。あ、あいつら……ついに、大気(空)の水分まで完全に兵器化しおった……!」

凄腕スパイの班長が、恐怖で顔面を土気色にし、サウナハット(第51話仕様)を握りしめたまま絶叫した。


彼らの視界には、

誰も生きて戻れないはずの濃霧の魔境。その深部を、

一切の魔力爆発音も、煙もなく、ただ「無音」で、

前方の水分を一瞬で消去(※凝縮して雨にしているだけです)し、光のトンネルを作りながら、

時速80キロという恐るべき速度で爆進していく、あの双子の乗る銀色の二輪車。


「あ、あれは……! 進む前方の水分(大気)を一瞬にして魔力で強制結晶化させ、行く手を阻む敵軍の兵士を、氷の針(結晶)で一瞬にしてハチの巣にして消滅させる、最悪の広域気象ジェノサイド兵器――『フォグ・デストロイヤー』だ……!!!!! あの白い霧を、我々の王都に向けて大気ごと結晶化されたら最後、王都の民は呼吸すらできずに、全員肺の内部から氷の針でハチの巣にされて死ぬぞォォォ!!!」


ただの「視界を確保するための超音波消霧スプレー」なのだが、王都のエリート隠密たちにとっては、一瞬で一国の大気を凍らせて呼吸困難と氷の針で殲滅する、最悪の気象兵器にしか見えなかった。

あの自転車がゆっくりと、王都の方向(※ただの美味しいコーヒー豆のある最深部です)を向いて爆走している。


「お、お赦しください、気象の魔王様……! 我が王都の大気を……どうか凍らせないでくださいぃぃぃ!!!」


隠密班長と精鋭スパイ50名は、戦う意志を1ミリも残さず、

全員が持っていた黒い目隠し(第70話仕様)を両目にガチガチに巻き付け、

太陽を直視しないように(※ただの逆光対策です)しながら、

泥の上に頭を何度も何度も擦り付け、ひれ伏し、全力で土下座を繰り返すのだった。


◇


数分後。

樹海の最深部、ひっそりと自生していた、黄金に輝く「幻の樹海コーヒー豆」を、からくりピッキングハンド(第75話仕様)でちゃっかりと大量に回収した双子。

帰り道、スプリンターの荷台をコーヒー豆でパンパンに膨らませ、お肌ツルツル(第76話仕様)の姿で、コタツ(冷却送風モード)でぬくぬくと暖まりながら、お楽しみの時間を迎えていた。


「ぷはぁー! やっぱり、おひさまの光(第46話タワー熱)で焙煎し、温泉水(第30話)で淹れたての、この『シルバーストーン特製・極上深煎り樹海コーヒー』は、大脳新皮質のQOLを極限突破させるわね、アリス!」

「ええ、エレン。超音波凝集シールドの数理モデルの完全勝利よ。これであのプリン(第73話)の甘みを、至高の苦味で引き締められるわ。科学の完全勝利ね」


「「いっただっきまーす!!」」


ハフハフとプリンを頬張り、アツアツのコーヒーを喉に流し込む、お気楽極楽な双子の姿。


窓の外では、月明かりの下、すっかり目隠しをしたまま「WEB光ファイバー(第70話)」のケーブルを丁寧に磨いているアルドが、

「あの目隠し土下座、実にQOLが高い……」

と、幸せそうな笑顔で、木製のお掃除ロボ(第36話)と並んで庭の片付けをしていた。

新章を迎えたシルバーストーン特区には、目に見えない「極限の音響学・流体力学技術」と、隣領の貴族や王都の騎士たちを国家崩壊レベルの絶望に陥れる「近づいた人間を一瞬で氷の針でハチの巣にする、恐るべき気象破壊兵器の噂」が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。