第142話:絶対零度のドームと焦がしざらめの聖域(と、極寒の中で背骨を完全に溶かしてカードゲームに熱狂する、究極の脱力フェス)
「……アリス、聞こえる? 私たちのQOL(生活の質)メーター(アウトドア部門)が、先日の空中コタツ熱気球(第141話仕様)の大成功を経て、今度は『冬の白銀世界』という最高のロケーションにおいて、氷の冷たさと炎のアツアツが対消滅するほどの『究極のウィンター・フェスティバル』を脳内でシミュレートし始めているわ……!」
「聞こえるわエレン! 確かにお部屋のコタツもいいけれど、冬のゲレンデ(第69話仕様)に絶対に溶けない巨大な『光る氷のドーム(大かまくら)』を建設し、その中でアツアツの『スモークローストポーク(第133話仕様)』や『骨付きハーブチキン(第93話仕様)』を貪り食う。これぞ冬を120%遊び尽くすオタクの浪漫よ! 物理の力をフル稼働させて、外壁はカチカチの氷なのに、中はサラサラで常春の天国をDIYするわよ!」
シルバーストーン巨大観光特区のリビング。
完璧に除湿されたドライコタツ(第65話仕様)の中で、キンキンに冷えたハチミツレモネードを啜りながら、銀髪の双子は脳内の専用回線を新たな「冬キャンプ熱」で同期させていた。
前世は三十代の理科教師、成瀬健一。その知識とチート能力を駆使し、お気楽に「氷の楽園」を完成させるため、双子の超絶同調が再び火を噴いた。
「いい、エレン? 今回の『大かまくらドーム』の命はね、氷の内側にLEDネオン(第105話仕様)を仕込み、かつ中に温風床暖房(第30話仕様)を張り巡らせても、相転移による潜熱を完全に遮断して『絶対に溶けない』構造にすることよ。そのためには、万年不融の氷晶(第136話仕様)を『構造材料』として幾何学的に配置するの。さらに、自重による崩壊を防ぐため、オイラー=ベルヌーイの梁のたわみ方程式をハックするわ!」
アリス(理論・設計・数理担当)が脳内の黒板に、構造力学と熱伝導の公式を書き殴る。
E I d⁴w/d x⁴ = q(x)
「(曲げ剛性をEI、たわみ量をw(x)、等分布荷重をq(x)とするわ! 雪の荷重に完璧に耐えるトラス角を45度に設計した『不融の氷晶カプセル(3Dドーム型)』よ。さらに、かまくらの床下に地熱温泉水(第30話仕様)の循環パイプを敷き詰め、デシカント除湿(第65話仕様)を連結して、中は常にサラサラの摂氏24℃の常春空間にするの。コタツの中には、背骨のS字カーブを完璧にホールドする『脊椎連動エルゴノミクス座椅子(第131話仕様)』を完備しなさい!)」
「最高よアリス! 氷の壁の中で半袖になってとろけるのね! だったら、私の『超精密魔力クラフト・一体成形(120,000 rpm)』、出力最大で最高のかまくらを物質化してあげる!」
エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。
アリスが脳内CADで算出した「3次元応力分散ドーム」の3D設計図に完全に同調し、エレンは不融の氷晶のブロックを、コンマ数ミクロンの精度でドーム状に積み上げ、チタン製補強フレームを無音で完璧にアセンブルしていった。
一人が「熱力学(相転移・潜熱)&構造力学シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&高精度地熱配管」。
双子の超絶連携により、雪がしんしんと降り積もるアストレア領のゲレンデ(最高峰)に、内側からサイバーブルーに美しく輝きを放ち、一切溶けることのない、全幅5メートルの巨大な『エコ温室大かまくらドーム』が爆誕した。
◇
イベントの夜。
氷点下の猛吹雪がゴーゴーと吹き荒れ、普通の人間なら数分で凍死する極寒のゲレンデ。
その真っ白な闇の中に、内側からサイバーブルーのネオンを透かして美しくきらめく「氷のドーム」がぽつんとたたずんでいた。
お揃いの特製パジャマ(第129話スウェット仕様)を身にまとったイゾルデ、アルド、エドワードお父様、レイラお母様、そしてハンスやエルフ、ドワーフのバイトメンバーたちが、
「ひ、ひぃぃぃ! 寒い! 死んでしまうべさ!!」と叫びながら、氷のドームの扉を開けて中へと飛び込んだ。
その瞬間、世界の理が完全に相転移した。
「……あ、あれ? あ、暖かい……!? それに、さらさらしてるわ!!」
イゾルデが、涙を流してスウェットの襟元を緩めた。
一歩入ったその空間は、外の猛吹雪が嘘のように、
デシカント除湿によって湿度が完璧に45%に管理された、摂氏24℃の常春のパラダイスだった。
足元からは、地熱温泉床暖房のぬくぬくとした熱が柔らかくお尻を温め、
コタツの周りには、座る人の背中の形を先読みして「うごうご」と自動変形する、極上の『エルゴノミクス座椅子』が完備されている。
「お嬢様方、このかまくら、氷の壁なのに1滴の水滴も垂れてこないし、温泉床暖房で背骨が……背骨がとろけて動けなくなるべぇぇ!!」
アルドが、サウナハットを被ったまま座椅子に完全に背骨を溶かされ、マヌケな笑顔でコタツに下半身を突っ込んだ。
「さあ! 第1回『シルバーストーン・大かまくらジンギスカン・パーティー』の開幕よ!」
アリスが不敵に笑い、コタツのテーブル中央に置かれた、おでこヘッドランプ(第45話仕様)の光に照らされた大皿を指し示す。
そこには、エレンが神速で焼き上げた「アツアツのスモークローストポーク(第133話)」、香ばしい「骨付きハーブチキン(第93話)」、
そして、アリスが調合した「焦がしざらめのスモークチーズ(第124話仕様)」がうず高く積まれていた。
「もう我慢できませんわ! いただきます!」
イゾルデが、箸を握りしめてスモークチーズをお口へ放り込み、冷たいビール(第6話仕様)をグイッと煽った。
サクッ……とろぉぉぉん!!!
ゴクゴク、プハァー!!!
「お口の中がQOL完全降伏(昇天)ですぅぅぅぅぅん!!!??」
口に入れた瞬間、ざらめがカラメル化したサクサクの表面から、濃厚なカマンベールチーズが「とろぉり」と溶け出し、ビールと合わさって脳内エンドルフィンが大爆発した。
「なんて、なんて美味しいの! 氷に囲まれているのに、中はサラサラのぬくぬく天国! そしてこのサクサクのスモークチーズとお肉の旨味! 没落貴族シルバーストーン家、本日をもって、大かまくらコタツの虜として完全に支配されましたわ!」
「旦那、このハイボール(第110話仕様)とスモークポークの相性が良すぎて、もう一生この椅子から立ち上がりたくないべぇぇ!!」
アルドも、涙を流してお酒を煽り、エルゴノミクス座椅子に骨を完全に溶かされてコタツの底へ沈没していた。
「お父さんも混ぜておくれ! 娘たちのチャリの最高級チタンパーツ(第28話仕様)を賭けて、このお父さんが無敗のプロデューサー(第17話仕様)としての、至高のデッキ構築を見せてあげるよ!」
お父様エドワードも、ウイスキーのロックを片手に、コタツの上にカードの束(第101話仕様)を叩きつけた。
「望むところだべ、旦那! 俺の『ハンス・ビートダウン(第32話仕様)』デッキで、明日の『お掃除ロボのメンテナンスお休み権(第86話仕様)』は全部俺がいただくべ!」
「私のターン、ドロー! 魔法カード『不融の氷晶』発動よ!」「いや、それには『ピザ窯の烈火(第32話仕様)』でカウンターだべ!」
「ぎゃあああ! わたくしの最後の一枚のクッキーがぁぁぁ!!」
深夜の氷のドームから、しんしんと降り積もる雪原の夜空に向けて響き渡る、大爆笑とカードを叩きつける「バチバチ!」という楽しげな大歓声。
そこには、美味しいお酒と極上の料理、そして「誰が一番だらしなく、楽しくゲームに勝てるか」を競い合う、異世界で最も賑やかで温かい「おうちコタツBar・大かまくら特別編」の光景が広がっていた。
「「ふふふふ……」」
コタツの特等席で、お互いのさらさらツヤツヤの髪(第40話仕様)を優しく撫で合いながら、ハチミツレモネードを片手にその様子を眺める小さな双子。
「計画通り、極上大かまくらとエルゴノミクス座椅子、そしてゲームで、今夜もみんなを完璧にコタツの底(だらだら仲間)に引きずり込めたわね、アリス」
「ええ、エレン。オイラー=ベルヌーイの梁のたわみ解析と、熱力学的潜熱遮断の完全勝利よ。これで私たちのスノーレジャーQOLは、年中無休で完璧な『氷と炎の帝国』として維持されるわね。科学の完全勝利よ」
窓の外では、月明かりの下、ガシャガシャと走る木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かにドームの周りに積もった新雪を自動で雪かきしながら、コタツから漏れ出る香ばしいスモークの匂いと楽しげな笑い声を、優しく、そして最高にお気楽に、世界中に広げていくのだった。




