第122話:大陸の背骨、絶対零度の「神の頂」
「……アリス、聞こえる? 私たちの脳内QOL(生活の質)メーター(ティータイム部門)が、おでん(第71話仕様)や角煮(第96話仕様)を貪り、お抹茶(第108話仕様)を堪能した今、コタツのなかで『芳醇で上品なアッサム風紅茶と、お口を爽やかに覚醒させる天然ミントのロイヤルミルクティー』の不在を検知して、胃壁から激しい激痛を伴うストライキを再開しているわ……!」
「聞こえるわエレン! だけどね、あの極上の紅茶葉と幻の天然ミントが自生するのは、大気が極限まで希薄で、氷点下30度の暴風雪が常に吹き荒れる大陸最高峰の不帰の地獄――『神岳峰』の垂直の氷壁よ。普通の人間なら数分で低酸素症(高山病)と凍傷で即死する、物理法則の絶対障壁ね。無いなら、私たちの理系DIYで、気圧と温度を完璧にハックした『高高度極限登山ギア』を物質化して殴り込むわよ!」
シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。
完璧に除湿されたドライコタツ(第65話仕様)の中で、キンキンに冷えた炭酸水(第59話仕様)を啜りながら、銀髪の双子は、脳内の専用回線をかつてない「極上紅茶熱」で同期させていた。
前世は三十代の理科教師、成瀬健一。
その知識と異世界チート能力を駆使し、お気軽極楽に「お風呂上がりの一杯」を極めるため、双子の超絶同調が再び火を噴いた。
1.「電熱マスク」と「3Dアセンダー」の生理物理ハック
アリス(理論・設計・数理担当)は、標高4,000mを超える極限環境下での酸素分圧低下を防ぎ、人体の「酸素解離曲線(ヘモグロビン結合曲線)」を完璧にキープするための、呼吸生理学ハックを脳内スパコンで展開した。
「高山病の原因はね、酸素分圧( pO₂ )の低下によって、血液中のヘモグロビンと酸素の結合割合(酸素飽和度)が急激に低下することよ。第99話の循環呼吸装置を極小化し、大気中のわずかな酸素分子を魔力で『10倍に強制濃縮』して供給する『ポータブル酸素吸入・電熱防寒マスク』を設計したわ! さらに、氷点下30度の冷気が気管を焼き尽くさないよう、電熱インナー(第37話仕様)のジュール熱公式 Q = I²Rt に基づき、電熱マスクの吸気フィルターを正確に摂氏24℃まで自動加熱する回路を敷設しなさい!」
「設計図ロックしたわ、アリス! だったら、私の『超精密魔力クラフト・一体成形(120,000 rpm)』で、蜘蛛の糸に極細の熱線を縫い込んだ防風マスクと、氷壁を垂直に『等速スライド』で登るための、高強度クモ糸ワイヤー多段ギヤアセンダー(第45話仕様応用)を物質化してあげる!」
エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。
アリスが脳内CADで算出した「ヘモグロビン飽和度維持回路」と「動滑車による3倍力リンク機構」の3次元設計図に完璧に同調し、エレンはチタンの塊から極小の昇降プーリーを削り出し、マスクの内部に熱線フィルターを隙間なくアセンブルしていった。
一人が「呼吸生理学&熱ふく射シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&高強度繊維編み込み(ハード)」。
双子の超絶連携により、お揃いのピンクの「サウナハット(第51話仕様)」の下に、不気味に赤く明滅する(※ただの動作インジケーターです)「電熱マスク」を装着し、腰に「3D立体機動アタッチメント」を装備した、異形の登山仕様が爆誕した。
◇
2.氷点下30度の垂直氷壁を等速爆走する、小さな死神
数日後。大気が希薄で、猛烈な吹雪が吹き荒れる「神岳峰」の垂直の氷壁。
キキキキキキキキィィィィィン……!!!!!
スササササササササササッ!!!!!
「「――きゃっはーーーーー!!! 高濃度酸素のおかげで、脳髄のQOLが澄み渡っているわ!!」」
アリスが開発した「酸素濃縮電熱マスク」が完璧に作動。
氷点下30度の暴風雪を吸い込んでも、マスク内のジュール熱によって吸気は完璧に摂氏24℃まで加熱され、ヘモグロビン飽和度は常に99%の極上の健康状態が保たれている。
さらに、エレンが腰の「3Dアセンダー」からアイアンスパイダーの極太ワイヤーを氷壁の頂上へ向けてシュバッ!と射出し、
滑車の仕事の原理 W = F・s によって、引く力を3分の一に減衰された巻き取りドラムが高速作動。
エレンは驚異的な大腿四頭筋のバネを活かし、重力 F = mg を完全にバグらせたかのように、
垂直の氷壁を「カチャカチャ、スササササササササッ!」と、
一切の足音もなく、等速でクモのように無音爆走して垂直に駆け上がり始めた。
「アリス、前方10メートルの氷壁の奥に、伝説の『アッサム風紅茶葉』と『天然ミント』の結晶を感知! 採取ピッケル、起動よ!」
「了解! 地熱温水(第30話仕様)の熱量をピッケル先端に導電させて、氷を一瞬で熱的に融解(※ただの採取です)するよ!」
カンカンカンカンカンカン!!!!!
エレンが、先端が超高周波で微細振動するチタン製ピッケル(第45話仕様)を構え、
「カンカンカン!」と、凄まじい残像を伴う超高速の打撃で氷壁を削り始める。
熱的に融解された氷壁から、大地の底に眠る天然の温泉(地熱水)がプシューーーッ!と白い間欠泉の如く勢いよく吹き出し、その影に自生していた極上の茶葉とミントが、エレンのからくりピッキングハンドによってホクホク顔で一網打尽に回収されていった。
◇
3.おうちBarで繰り広げられる究極のティータイム
その日の夜。
シルバーストーン特区の屋敷に帰還した双子たちは、すぐにコタツBar(第105話仕様)をオープンした。
「さあ! 第一回『シルバーストーン・コタツBar・ロイヤルミルクティー&パンケーキ・フィナーレ』の開幕よ! この収穫したての茶葉を、完璧な湯煎温度と茶葉の揮発性エステルが飛ばないよう管理して、最高のアッサムミルクティーにするわよ!」
アリスがマイクを握りしめると、領民たちからも「おおおっ!!」「双子様万歳!!」と割れんばかりの歓声(※ただの居酒屋のノリです)が上がった。
イゾルデやアルド、エドワード、レイラも、みんなお揃いのサウナハット(第51話仕様)を被り、ノリノリでパンケーキを構えた。
「アルド! 覚悟はいいか! この天空の紅茶と極上メープルシロップの黄金の雲海を、わたくしの騎士のプライドにかけて受け止めてやりますわ!」
「ヘヘッ、イゾルデ様、このアッサムの芳醇な香り、めちゃくちゃ脳にくるっすよ! さあ、ティータイムの始まりだべ!!」
パァァァァァァァン!!!!!
アツアツの焼きたてスフレパンケーキに、黄金のシロップがとろりと溶け込み、そこへミルクティーを注ぎ込む。
「「「ーーーっっっっっっ!!!」」」
絶叫するみんなの笑顔、そしてお茶会という名の至福のひととき。
あまりの美味しさと、アリスが化学的に計算し尽くした「ハチミツ・ミルク・紅茶の黄金比」の刺激に、イゾルデやアルド、そして集まった皆も、大笑いしながらコタツの中にドロドロに沈んでいった。
終わった後の広場では、
「おい、このロイヤルミルクティー、脳の神経系を直接癒やしてくるぞ……!」
「あははは、もう一杯! もう一杯おかわり!」
と、大興奮で絶叫する面々。
アツアツのパンケーキを頬張り、キンキンに冷えた(※氷穴の氷で冷やした)アイスを添えて、みんなで大笑いしながらゲーム大会に熱狂する夜。
「アリス、成功ね。このティーパーティー、みんな脳がとろけてるわ」
「ええ、エレン。呼吸生理学の酸素濃縮と、熱力学のジュール熱をハックして、QOLを極限までブーストした甲斐があったわね」
窓の外では、月明かりの下、ガシャガシャと走る木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かに庭に落ちた紅茶のしずくを掃き清めていた。
領内には、目に見えない「極限の生理学・熱力学技術」と、隣領の貴族たちが「一口飲むだけで胃袋の理性を奪われてコタツの奴隷にされる、恐るべき暗黒経口精神支配ティー」の噂が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。




