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第119話:夜空に躍る五色の稲妻

「……アリス、聞こえる? 私たちのQOL(生活の質)メーター(セレモニーフィナーレ部門)が、お昼のレーザーカット(第118話)の圧倒的大成功を終えた今、夜の帳が下りた特区の夜空を見上げて、かつてない『美しくド派手な大輪の華(花火)』を求めて、大臀筋を激しく躍動させるパルスを全身に受信しているわ……!」

「聞こえるわエレン! だけどね、テーマパークのフィナーレを飾る花火といえば、古来より火薬をドカンと爆発させるやつ。あれをそのまま模倣するだなんて、煙でスモッグが発生して、私たちが磨き上げた特区の美しい星空(第33話仕様)が見えなくなるから、極上の合理性とQOLを愛する元理科教師として絶対に容認できないわ! 第14話で培った『炎色反応』の知見と、第117話の『ポップコーンキャノン』の瞬間減圧膨張の力を融合させ、煙を一切出さずに夜空を五色に染め上げる『全自動・からくり多色魔導花火大砲』をDIYするわよ!」


シルバーストーン巨大観光特区の夜。

完璧に除湿されたドライコタツ(第65話仕様・冷風送風モード)でハチミツレモネード(第26話仕様)を啜りながら、銀髪の双子は、脳内の専用回線(テレパシー)を新たな「エコ花火熱」で同期させていた。


前世は三十代の理科教師、成瀬健一。

その知識と異世界チート能力を駆使し、煙を1ミリグラムも出さないクリーンかつ圧倒的に美しい大空中エンターテインメントを実現するため、双子の超絶同調(デュアル・コア)が再び火を噴いた。


「いい? エレン。花火における『打ち上げ』の物理よ。火薬の爆発に頼らず、気圧差だけで金属微粉末を上空300メートルまで一気に射出するには、熱力学における『クラウジウス・クラペイロンの式』による高圧過熱と、理想気体の状態方程式 PV = nRT に従う瞬間減圧膨張のハックが絶対条件よ!」

アリス(理論・設計・分子化学担当)が脳内の黒板に、気体の熱力学的相転移方程式を書き殴る。


 dP/dT = L/TΔV


「(チタン製大砲型密閉圧力釜の中に、アジドや硫酸塩を一切含まない無機塩類、ナトリウム、銅、カリウムなどの『炎色反応物質』の特製微細粉末を5色に調合してセットするの。釜の内部を魔力過熱ヒーターで一気に5気圧、温度120℃まで瞬間加圧し、エレンが設計したからくり自動調圧バルブを一瞬で全開放(パージ)! 気圧差による瞬間減圧膨張(水蒸気爆発)の物理的暴力で、粉末を上空へ弾丸の如く射出し、大気中の水分と瞬間衝突・熱励起させて、煙を一切残さずに夜空全体を鮮烈に染め上げるわ!)」

「最高よアリス! 物理の気圧差でおやつ(ポップコーン)の代わりに光の華を咲かせるのね! だったら、私の『超精密魔力クラフト・3次元切削(120,000 rpm)』で、5気圧以上の超高圧に耐えうる巨大チタン製大砲型圧力釜と、一瞬で全開放する魔力パージレバーを物質化してあげる!」


エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと精密な魔力放電が散る。

アリスが脳内CADで算出した「多色射出シミュレーター」の3D設計図に完全に同調し、エレンはチタンプレート(第28話仕様)を極厚の砲身へと成形。

さらに、からくり自動調圧バルブをハックした「超高速パージレバー」を砲尾に完璧に組み上げ、お庭の広場に、堂々とそびえ立つチタン製の巨大大砲『多色からくり魔導花火大砲』を爆誕させた。


一人が「燃焼化学・熱力学相平衡シミュレーター(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&高圧密閉チタン溶接(ハード)」。

双子の超絶連携により、セレモニーのフィナーレを飾る「完全無煙・五色光化学大砲」が完成した。


◇


グランドオープニングセレモニーのフィナーレ。

特区のメインゲート前広場には、王都の大商人ギルバート、王都から派遣された最高査察使たち、そして特区の専属お庭番アルド、監察官イゾルデ。さらに、イゾルデのパパである「王都重装騎士団長」をはじめとする最高首脳陣が、ずらりと並んで夜空を見上げていた。


「男爵、いよいよフィナーレですね。……しかし、火薬の匂いが全くしませんな?」

ギルバートが不思議そうに、父エドワードに尋ねる。

「フフフ、ギルバート殿。我が娘たちの『QOL』を甘く見てもらっては困ります。……アリス、エレン、いつでもいいよ!」

サウナハット(第51話仕様)を被った父様が、誇らしげに手招きする。


ゲートの脇、小さなコントロール台の前に立った、ドレス姿の双子。

「エレン、多色金属もろみ、圧力充填完了。5気圧ホールド。フィナーレトリガー、オン!」

「スイッチ、オォォォン!!!」


ポチッ。


エレンが真鍮のボタンを押し込んだ、その瞬間。

大地の地鳴りのような轟音と共に、チタン製大砲が火を噴いた。


ドォォォォォォォン!!!!!

パァァァァァァァァァン!!!!!


巨大大砲の砲口から、5気圧から1気圧への瞬間的な減圧膨張の物理的暴力により、凄まじい大音響が夜空を震わせた。

上空300メートルに射出された五色の金属微粉末は、大気中の水分と瞬間衝突・熱励起を起こし、

スモッグを一切出さずに、

夜空全体をオレンジ、グリーン、パープル、レッド、そして空色へと、幻想的な虹色で鮮烈に染め上げた。


「「「お、おおおおおおおおっっっ!!!???」」」


会場が静まり返る。

イゾルデが目を丸くし、騎士団長パパが口をあんぐりと開けた。

次の瞬間、会場の領民たち、そして王都から来た貴族たちから、割れんばかりの拍手と歓声が上がった。

「す、すげえ……! 煙が一つも出ていないのに、なんて美しい色なんだ!」

「さすが双子様! これぞシルバーストーンの技術力!」

「ハハハ! まるで星が地上に降りてきたようだ!」


イゾルデもアルドも、思わず顔を見合わせて笑顔で拍手していた。

「……イゾルデ様、この花火、煙が出ないから夜空が本当にクリアだべ。双子様の知識、やはり別格だべ」

「ええ、アルド……。火薬を使わずにこれほどの光景を……。さすがシルバーストーンの技術力ですわね……。これならわたくしのお肌(第76話仕様)も汚れませんわ!」


◇


その頃。

ゲートの脇、茂みに隠れていたのは、王都の最高査察使(エリート官僚)たちだった。

彼らは、今の一瞬の光景を目撃し、そのあまりの「オーバーテクノロジー」に開いた口が塞がらないようだった。


「お、おい……今の見たか……? 火薬を使わずに、化学変化だけで夜空を染め上げるとは……!」

「あ、あれが噂の……! 双子が開発したという、シルバーストーンの最先端化学技術か……! 確かに、火薬臭い王都の花火よりも100倍はエコで美しいが……それにしても、あの光り方は……!」


査察使のリーダーが、顔面を土気色にし、その場で崩れ落ちたかと思いきや、次の瞬間にはノートを取り出し、メモを取り始めた。

「間違いなく、王都の信号伝達にも使える技術だ……! あの双子、ただ花火を打ち上げるふりをして、実は王都の全信号技術を根底から覆すための『通信デモンストレーション』を行っているのだ……!!!」


彼らは、ただの「おしゃれでクリーンな花火」を、王都の通信力アップのための「最先端技術のデモンストレーション」と誤解して、

「お、お赦しください、化学の魔王様……! 我が王都に……どうかその技術を、その技術を伝授してくださいぃぃぃ!!!」

と、その場で駆け寄り、持っていた手土産の高級お菓子を差し出して、必死に弟子入りを願い始めた。


そんな大誤解など知らず、

双子は高らかに手を振り、ゲートをくぐり抜けて特区の中へと先導していく。

その後ろを、ホクホク顔の領民、そしてアルドとイゾルデ、さらには(すっかり洗脳された)査察使たちも、コタツBarで楽しむためにお気楽についていくのだった。


「アリス、成功ね。このクリーン花火、みんな脳がとろけてるわ」

「ええ、エレン。熱力学の相転移と、炎色反応の化学的完全勝利よ。これで私たちのテーマパーク・オープニングQOLは、年中無休で完璧な『夢の光の帝国』として維持されるわね」


窓の外では、月明かりの下、ガシャガシャと走る木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かに庭に落ちたわずかな金属の粉を掃き清めていた。

領内には、目に見えない「極限の熱力学・化学技術」と、隣領の貴族たちを「王都の結界を焼き切る(※ただの花火です)恐るべき最新技術」と、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。

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