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第113話:重力を弄ぶ鋼鉄の龍

「……アリス、聞こえる? 私たちのQOL(生活の質)メーター(娯楽部門)が、おでん(第71話仕様)やスフレパンケーキ(第107話仕様)、さらに温水洗浄トイレ(第104話仕様)による極限のだらだら快適環境に対し、ついに『深刻なアドレナリン及びドーパミン分泌の欠乏アラート』を鳴り響かせているわ……!」

「聞こえるわエレン。というか、共有されている私の大脳皮質も、リニア(第68話仕様)やハイパーループ(第97話仕様)といった等速スライド移動の快適さに慣れすぎて、脳のG(加速度)センサーが完全に不活性(退屈)モードに陥っているわ。人間が最も手軽に、かつお気楽に脳汁(脳内伝達物質)を大爆発させる至高の娯楽――そう、あの前世の遊園地の華『絶叫宙返りジェットコースター』を、この特区のシンボルとして爆誕させるわよ!」


シルバーストーンQOL巨大観光特区のリビング。

冷え冷えのハチミツレモネード(第26話仕様)を啜り、ツルツルもちもちのお肌(第76話仕様)をコタツの温風にさらしていた銀髪の双子は、脳内の専用回線(テレパシー)をかつてない「重力加速度(G)熱」で同期させていた。


前世は三十代の理科教師、成瀬健一。

スリルすらも物理法則で完璧にハックし、お家でだらだら楽しむのが、美少女双子としての矜持である。


「いい、エレン。宙返りコースターの命はね、ループに入る瞬間の急激な遠心力の変化を打ち消し、乗客の頸椎を物理的に保護する『クロソイド幾何学曲線(曲率が移動距離に比例して変化する曲線)』の設計よ! 曲率半径をR、移動距離をsとした場合、クロソイドのパラメータAの公式はこれよ!」


 s・R = A²


「さらに、高さhにおけるエネルギー保存の法則 mgh + 1/2mv² = const から算出される速度vをベースに、ループ頂点での最低必要向心力Fcの設計を行うわ!」


 Fc = mv²/R ≧ mg


「(リニア(第68話)の極性スイッチング技術を応用した『超高速電磁カタパルト(LIM)』をスタート台に搭載し、一瞬で時速120km(マッハ0.1)まで電磁射出するのよ! 軌道は3次元のチタン製中空管ダブルレール、車両の車輪軸受には摩擦抵抗 μ≈ 0 の極限水晶ベアリング(第48話仕様)を敷き詰めて、ガタガタ音を完全に封殺した無音の『死のスライド』を物質化しなさい!)」

「最高よアリス! 脳みそを遠心力でエマルション(乳化)にするのね! 私の『超精密魔力クラフト・3次元切削モード(120,000 rpm)』、出力最大でいくよ!」


エレン(実技・精密加工・物理演算担当)の指先から、バチバチと凄まじい物理圧を伴う魔力放電が散る。

アリス(理論・設計・数理担当)が脳内CADで算出した「クロソイド曲線軌道」の3次元等高線図に沿って、エレンはチタンプレートとアイアンウッドの塊を、コンマ数ナノメートル単位のクリアランスで完璧に削り出し、うねうねと空中をのたうち回る巨大な双頭の蛇のようなチタンレールを敷設していった。


一人が「3次元幾何光学&力学応力解析(ソフト)」、一人が「ナノ精度放電カッター&高速コイル巻き(ハード)」。

双子の超絶連携により、わずか数時間で、特区の緑豊かな丘の上に、青く妖しく輝く魔石LED(第39話仕様)のシグナルを明滅させ、真鍮の電磁カタパルトが「キキキキキキキキ……」と不気味に静電チャージ音を響かせる、異様極まりない超弩級絶叫アトラクション『クロソイド・スプリンター』が爆誕した。


◇


さっそく、アリスが構築した「脳髄とろとろ絶叫シーケンス(試運転)」がスタートした。


「エレン、車両の磁気吸着ロック完了よ! 水晶ベアリングの潤滑も完璧。電磁カタパルト、チャージ100% !」

「いつでもいけるよ、アリス! 脳みそフォーマット・スタート!」


ガチャン!


エレンが起動レバーを倒した瞬間、特区の丘から、世界の理を完全に無視した「大爆風と怪奇現象」が爆発した。


キキィィィィィィィィン……!!!!!

ドゴォォォォォォォォォッ!!!!!


「「――きゃっはーーーーー!!! 遠心力が! 遠心力が私たちのミセル結合をぶち壊していくわーーーーっっっ!!!」」


電磁カタパルト(LIM)の推進力によって、水晶ベアリングを敷き詰めたチタン製車両は、

一切の煙も爆発音も立てず、ただベアリングの「キィィィィン……」という脳髄を直接沸騰させる超高音の金属音だけを大気に響かせながら、

一瞬にして「時速120km」へと加速射出された。

そのまま、3次元にうねり、逆さまにのたうち回るクロソイド・ループを、

重力を完全にバグらせて等速スライドで回転しながら、

銀髪を風に激しくなびかせ、目にも留まらぬ「残像」となって爆進していく双子の姿。


「エレン、頂点での向心力Fcが重力加速度gを上回ったわ! 逆さまになっても私たちは絶対に落ちない! これぞ物理学の完全勝利よ!」

「最高よアリス! 景色が一瞬で引きちぎられて、お肌(第40話仕様)が後ろへ引っ張られるよ! きゃっはー! 脳みそ溶けるー!」


空中でグルグル回転しながら、大はしゃぎで大爆笑しているアリスとエレンの姿。

その傍らの2号車両には、

「ふにゃあああああん!!! 聖騎士のプライドがぁぁぁ!!!」と、頭におむつ(※ただのサウナハットです)を抱きしめたまま、ととのい(昇天)の表情で白目を剥いて叫んでいるイゾルデ。

そして、「お嬢様方、これは、これはQOLが高すぎて心臓が止まるべぇ!」と、涙を流してビールを煽りながらシートに張り付いているアルドの姿があった。


◇


数分後。

「プシュー」とエレンが真鍮の減圧ブレーキを引き、

「スン……」と何事もなかったかのように駅舎に着地・停止した『クロソイド・スプリンター』。

ドアがからくり自動でパカッと開き、お肌ツルツル(第76話)の姿で、冷たいレモネードを片手に出てきたアリスとエレン。


「ぷはぁー! やっぱり、時速120キロで宙返りした後の、この暖かいコタツで飲む冷たいレモネードは、大脳新皮質のQOLを極限突破させるわね、アリス」

「ええ、エレン。クロソイド曲線と水晶ベアリングの摩擦減衰モデルの完全勝利よ。これで私たちのテーマパークQOLは、年中無休で完璧な『脳みそとろとろ帝国』として維持されるわね。科学の完全勝利よ」


その日の夜。

完成した『クロソイド・スプリンター』には、特区の住民たちが集結していた。


「さあ! 第一回『シルバーストーン・コタツBar・絶叫耐性選手権』の開幕よ! このコースターをクリアした猛者には、特製の『アツアツのから揚げ』と『キンキンに冷えた黒エール(第10話)』、そしてお掃除ロボのメンテナンスお休み権(第86話仕様)を授与するわ!」

アリスがマイクを握りしめ、特区の全領民に向けて叫ぶと、広場からは「おおおっ!!」「双子様万歳!!」と割れんばかりの歓声が上がった。


コタツから這い出てきたイゾルデやアルド、エドワード、レイラも、みんなお揃いのサウナハット(第51話仕様)を被り、ノリノリで乗り込んだ。


「アルド! 覚悟はいいか! この重力Gとやらを、わたくしの騎士のプライドで受け止めてやりますわ!」

「ヘヘッ、イゾルデ様、このチタンのシート、めちゃくちゃ乗り心地が良いっすよ! さあ、射出だべ!!」


パァァァァァァァン!!!!!


電磁カタパルトが火を吹き、客車が一瞬で「時速120キロ」へと爆速射出される。

重力加速度を物理的にハックしたクロソイド曲線は、乗客の頸椎に「0.1秒の不快感」も与えず、ただ「心地よい、脳が揺れるような浮遊感」だけを叩き込んだ。


「「「ーーーっっっっっっ!!!」」」


絶叫する乗客たちの笑顔、そして大空を駆け抜ける銀色の弾丸(コースター)。

あまりの快適さと、計算し尽くされたGの刺激に、イゾルデやアルド、そして乗り込んだ騎士団の面々も、大笑いしながら空へと飛び出していった。


終わった後の広場では、

「おい、この加速、ビールが飲みたいぜ……!」

「あははは、もう一回! もう一回乗りたい!」

と、大興奮で絶叫する面々。


そのまま彼らは、特設のコタツBar(第105話仕様)へと雪崩れ込み、

「第一回・絶叫耐性選手権」の表彰式が始まった。


「勝者は、誰よりも綺麗な姿勢で宙返りを決めたイゾルデ! さあ、特製から揚げ(第67話仕様)と黒エール(第10話仕様)を、好きなだけ食べなさい!」

「ふふ、わたくしの騎士のプライド(物理的安定度)が認められましたわね。最高にお気楽ですわ!」


アツアツのから揚げを頬張り、冷えた黒エールを喉に流し込み、みんなで大笑いしながらゲーム大会に熱狂する夜。


「アリス、成功ね。この絶叫アトラクション、みんな脳がとろけてるわ」

「ええ、エレン。物理法則をハックして、QOLを極限までブーストした甲斐があったわね」


窓の外では、月明かりの下、ガシャガシャと走る木製のお掃除ロボ(第36話)が、静かに庭に落ちたポップコーン(第39話仕様)の屑を掃き清めていた。

領内には、目に見えない「極限の慣性力・幾何学技術」と、隣領の貴族たちが「王都を粉砕する重力兵器」と(※以前のパターンで)勘違いしそうになるほどの圧倒的な迫力(※ただのコースターです)の噂が、優しく、そして最高にお気楽に広がり続けるのだった。

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