13.トモキが導き出した答え
「なにか方法はないの? トモキが戻れないんなら、わたしがこっちに来る。どうすればいい?」
『だから世界が触れ合うのを待つしかないって言っただろう。紺青世界の接触は1980年後。直接の接触が待てないのなら間接的な接触を利用するって手もあるが、それには各世界の動きの把握と接触時に発生するエネルギー量の計算のために膨大な時間が……』
『終わったよ』
トモキが尾を振りながらあっさりと言った。
『は?』
『計算。ついさっき、ようやく全部の計算が終わった。おれは一年と五ヶ月二十二日後に青世界に戻れる』
「え……?」
『おまえまさか……その電算機で?』
『うん。計算してみた。無数に存在する世界は実は頻繁に接触しているって教えてくれただろ。それらの世界を上手く渡りついでゆければもしかしたらと思ったんだけど、まさかこんなに早く戻れるなんて、おれもびっくりだ』
「もしかして……もしかして、ずっと、その計算をしてたの?」
『1980年間も生きるのは無理だから、他の方法を考えるしかないと思って。よかった。これで確かな約束ができる』
「最初から、戻ってくる気だったの?」
『まあね』
「だからあんなに平気そうだったの?」
『平気ではないけど、なんとかなるかなとは思ってた。でもまあ、そっちに戻った時、おれがどんな姿になってるかはちょっとわからんけど』
トモキが目を細めて言うのを見て、わたしはうれしいのとほっとしたのとで、涙が溢れ出してしまう。
「馬鹿ぁ。そうならそうって言ってよ!」
「計算した結果やっぱり生きてるあいだには会えんって結果が出たりしたら、期待させた分ショックが大きくなるだろうってのはおれにもわかったから。それに、今度会う時は、下手したら哺乳類ですらないかもしれんでしょ。例えばなめくじとかうみうしとかだったら、さすがに引かれるだろうなとか思うし」
「トモキなら、どんな姿でもいいよ」
『その点は安心しろ。運良く元の世界に戻れた場合、多少時間はかかるかもしれないが、その世界に順応して元の姿に戻れることが確認されている』
【世界境管理人】のおれさま雪だるまが言うのだから、きっと本当なんだろう。
それなら、トモキのお母さんも悲しまずにすむ。
『おれを待っててくれる?』
「待ってるよ、もちろん」
頷くと、涙がぼたぼたと床に落ちた。
頬を伝う涙を、虎姿のトモキがざらざらの舌でぺろりと舐める。
驚いた拍子に、涙が止まった。
『じゃあ、一年五ヶ月二十二日後に』
いつものぼーっとした顔で、けれど僅かにいつもと違う、どこか覚悟を滲ませた声で、トモキが言った。
「うん。一年と五ヶ月二十二日後に」
わたしはそっとトモキの鼻面にキスをした。
*
*
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カレンダーに赤丸がつけてあるその日、わたしは朝からずっと何者かの来訪を待っていた。
だから、開け放したままの窓の桟に一羽の白い鳥が降り立った時、わたしは笑顔で言うことができたんだ。
「おかえり」
『ただいま』
返ってきたのは、とても懐かしい彼の声だった。
了




