言われるがままについていった結果…
整然とした街並み。
真夜中なのに街灯などが道を照らしているのでけっこう明るい。
まるで東京の街を歩いているような感覚だったが家々の塀は高くデカい石やレンガで出来ている。
…やっぱりここは私のいた国ではないんだなと改めて実感した。
小一時間ほど歩いただろうか、気づくとある屋敷の門の前で先頭の子が立ち止まった。
「ここね」
そう短く言ったその子は、なんの躊躇もなく鉄のでかい門を押し開けようとした。
が、鍵がかかっているのか重かったのか、門はびくともしなかった。
「見てないで手伝いなさいよ!」
女の子が振り返って小声で怒っている。
…勝手だなぁと思い前に出ようとしたが私の後ろにいた虎の獣人が
「しょーがねーなぁ…」
と愚痴りながら早足で前に出た。
エッホは鉄の門に辿り着くと中を覗き込んでからカンヌキのような形の取手を捻り横にスライドさせてから門を押した。
キィ
門はそう短く声を出したが特に問題なく内側に開いた。
「開きましたよ、お姫様」
エッホは振り返って満面の笑みでそう言った。
「ふん! 何度も言ってるでしょ!? 私はお姫様じゃなくて聖女様なの!」
「はいはい」
彼は笑いながらそう言って後ろの方へと戻っていった。
「…全く…」
彼女はブツブツ言いながらも開けてもらった門をくぐり屋敷へのアプローチを進んで行った。
アプローチの石畳をスタスタと進み屋敷の玄関へと辿り着く寸前で扉が音もなく開いた。
「どちら様でしょうか?」
そう言って無表情でこちらを見ている初老の女性。
室内からの灯りのため逆光にはなっているが、玄関の明かりもあるせいか彼女の表情までちゃんと見えた。
彼女は…所謂〝メイド服〟を着ている。
「ここに変な貴族のおっさんがいるでしょ? 会いに来てあげたわ。通しなさい!」
問われた彼女は胸を張り腰に手を当てそり返り気味にそう言った。
「…私は、どちら様ですか? とお伺いしたのですが?」
メイドの女性は怯む事なくそう言うと女の子をジッと見つめた。
女の子はフンと鼻息を荒くし、右手を前に出しメイドさんを指差しながら
「霊体のあなたに用はないわ! って…あれ? あなた、実態があるじゃない! なんで?」
と言った。
そう言われたメイドさんの眉間に一瞬だけ皺が寄る。
「…どういう意味です?」
「えー…以前街の公園で声を掛けられまして…」
突然後ろにいた奴隷商の店主が声を上げた。
「…」
「その際、何かあったら幽霊屋敷を訪ねてこいと言われまして…」
彼はそう言って上目遣いでメイドさんの顔色を窺っている。
…私的にはこういう感じは嫌いだ。
卑屈で…でも商売人の人が客や上の人に対してよく見せる顔だ。
いけない…この人だってやりたくてやってるわけじゃないはず。
相手の顔色を伺う行為はこの場合は間違っていない。
平民が貴族の屋敷で…日本じゃこう言うシチュはないけど…
なんて思ってたら今まで偉そうにしてた子が
「おかしいわねぇ… 私が受けた〝神託〟だと、エーレシュタート王国に霊体と暮らすおっさんがいるからそいつを頼れって…」
なんて私の横でブツブツ言っている。
神託?
神様から直接言葉が降りてくるってヤツ?
異世界だからやっぱりいるのかな…神様って。
「そのお話なら聞いておりますが、こんな時間に来られるのは少々常識がないかと」
「いや、それだけ緊急事態だって事だろう」
女性のメイドさんの背後から老齢の紳士…これは、執事さんっぽい人が出来て私たちのことを肯定してくれます。
…このまま入れてくれないと思っていたのでちょっと嬉しいかも。
「おい! お前ら! そこで何している!!」
そう後ろから怒鳴り声がしたので全員が一斉に門の方を向いた。
うわっ! あれは例の白装束!




