閑話 愉快な国王
苦い経験をしたイレギュラーズは、とりあえずランランに頼み込んで不動産ビジネスを始めることにした。
あれだけ価値のある空間を所有しているわけだ。
無難で楽なのは不動産ビジネスで間違いない。
たった1日で、王都の軍事系大企業であるグレイフォード産業が迷宮の2階層全部を借りてくれることになり、それなりの額を定期的にもらうことになった。
所有者のランランの隣で交渉をやったわけだけど、気づけばランランが値下げ交渉をしていて、本末転倒。
でもオレはそんなランランが好きなので、一切口は出さなかった。
それでも毎月3000万もらうことになったのは、グレイフォード産業側が譲らなかったからだ。
「全然タダでもよかったんですけどね。なんでお金を出したがるんですかね」
「罪悪感があるんだろう」
「罪悪感? 罪でもなんでもありませんよ?」
ふわふわした純粋な子猫ちゃんを騙しちゃった的な罪悪感なんだろう。
オレの願いは、ランランが今の純粋さを持ち続けてくれることかな。
そもそもは王国からの支援金が月額4500万セントル。
4割引きで2700万。
つまりは今回の迷宮不動産ビジネスのおかげで、本収入を超える副収入を得たということ。
一件落着に思えたところで、また王国政府から通達が届いた。
「また課税か。今度も4割取られるみたいだね」
クリスはもう呆れている。
受け入れるしかないと思っているようだ。
手紙をクリスから強引に奪い取り、じっくりと目を通すジャック。
「マグノ・ボケリア城に行ってくる。国王に直接文句を言ってやらないと気が済まない」
手紙は燃やされた。
それ、一応ランラン宛ての手紙なんだけど。肝心なランランはオレンジジュースに集中していた。
勢いよく玄関を飛び出し、城に向かうジャック。
さすがに心配なので、ついていくことにする。
シエナも同じ気持ちだったのか、オレに追随するように玄関を出た。
「お前たちも来るのか?」
「見届けようかと思って」
「俺が国王に文句を言う姿を、か?」
「そうそう」
見物だからな。
「シエナまで来るつもりか?」
「わたしは……アキラ君が行くなら行こうかと思って」
「そうか。勝手にイチャイチャしてろ」
オレたちはジャックが心配で来たのに、イチャイチャとは失礼な。
そう言ってやろうと思ったら、なんかシエナが顔を真っ赤にしているのを見て思い留まった。
イチャイチャって表現に言及したら、もっと恥ずかしくなりそうだから。
国王はオレたちが行けば絶対会える。
城にいればの話にはなるけど、どうやら今日もちゃんと城でにこにこしてるらしい。
「早い時間からすまない」
国王を前にしても、一切敬語を使わないジャック。
こういうところがヒヤヒヤするんだよな。
「いいよー。儂は毎朝尿意で目が覚めるし、ノープロブレムじゃ」
なんて寛容な国王様。
ジャックは毎回彼の寛容さと人柄のよさに命を救われている。
ちなみに、イレギュラーズが国王と会話する時に護衛はいない。信頼されているので、国王と『ここだけの話』をすることができる。
「課税についていくつか文句を言いたい」
「課税?」
国王がいよいよ眉をひそめた。
もしやここで、ジャックの無礼な態度が急に気になって――。
「何のこと?」
転びそうになった。
「ランランが地下迷宮の所有権を得たので、その所有税でオレたちへの支援金の4割が引かれている。それに加え、今回の不動産収益からも税金で4割が消えることになった」
「課税とか初耳じゃ。そんな請求をしていたとは……」
「……」
ジャックも言葉を失っている。
国王に伝えずに政府は政府でやってましたってパターンか。なるほどね。
「これだけ王国に貢献してくれておる勇者パーティは他におらん。イレギュラーズへの課税なんてするつもりはないのじゃ」
「つまりそれは……」
「撤回じゃ! ついでにイレギュラーズはあらゆる税金を払わんでよい! 消費税もイレギュラーズ免税ということにしてもらおう!」
「さすがに消費税は払わせてください」
これはオレの言葉だ。
「それは断る! イレギュラーズは消費税を払うこと禁止じゃ!」
というわけで、最初から国王に物申すべきだったアホイレギュラーズでした。
《キャラクター紹介》
・名前:ランラン
・年齢:17歳
・種族:猫人族
・身長:150cm
・容姿:ミディアムボブの桃色髪、白の猫耳
方向音痴を極めているので、あらゆる状況でも迷子になる天才。
アキラを飼い主だと認識している。よく財布を落とすので、予備の財布も持ち歩いている。




