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百合小説【第73話】終幕①

「まずはこちらをご覧ください」


8人が立っているポジションに、それぞれの点数が棒グラフが徐々に点数を追い抜いていくという手の込んだ映像が映し出された。徐々に上がっていくそれを見ながら、点数が行き着く先。


「99.168!カラオケ部門第1位は・・・エントリーナンバー2番!蔵前知代さん!!!!」


各順位が王冠と点数で発表される。嘉陽田さんは2位の99.105と2位、西条さんは94点で4位と某カラオケ番組と遜色ないレベル感で熾烈な戦いが繰り広げられていた。


「蔵前さん、さすが都内屈指のアカペラ部ですね〜」


「当然です!そうでないと蔵前の名が廃れてしまいますわ。」


初めて見た人ではあるが、育ちが良さそうな気の強いお嬢様という風格。赤黒の髪に黒紫の目の色をした嘉陽田さんよりも背の高い人。


「感想はありますか?」


「そうですわねぇ…私、蔵前知代は、カラオケグランプリで日本一になりますわ。」


この企画の引用元である。年に1回、全国の強者が会場に揃い、日本一の座を争い合うテレビ番組のことだ。

「日本一…ですか?」


「たとえそれが虚言になろうが…いえ、これは弱音になります。必ずや、日本一の座を取ります。その勇姿を、とくとご覧くださいまし。」


「蔵前知代さんのヒーローインタビューでした。」


ヒーローインタビューの使い方があっているのかはどうでもいい。負けは負け、小数点以下の熾烈な争い。このインタビューの流れは後にも引き継がれるのが恒例だと思う。高校初日の自己紹介も、初めの人がふざけたらふざける流れが続くように。


「続いて、投票部門の結果発表です!」


ライトが消灯し、映像が再び流れ始める。総投票数過去最高の38667票という数字と、目がチカチカするような派手な演出で表示される。学校の規模からすればかなり高い投票数ではあるが、複数回投票可能となると実際どうかは分からない。嘉陽田さんが勝つのか、それとも西条さんか、または別の…。


「投票数19660票 投票部門第1位は…」


「エントリーナンバー5番 西条友里恵!!!!」


「やっっっっっったああああああああぁぁぁ」


西条さんがその場で飛び跳ね、感極まった表情を露わにする。どちらも嘉陽田さんに優勝の王冠はなく、こちら16004票と2位にランクインされる。嘉陽田さんの顔は見えず、私事のように心に穴がぽっかり空いたような気持ちになる。この2部門と最優秀賞になる。そうなると、この2人の中から決まるのだろうか。心の内がざわついて心臓が痛い。


「西条さん、約2万票と半数を超える投票数ですが、こちらについてはどう思われますか?」


「はい、この会場にお越しいただいた皆さん、そして、配信を見てくださっている皆さんのおかげで、第1位になることができました。本当の本当に」


これ以上聞きたくないと耳を塞ぐ、順位をつけるということは、つまり誰かが下になるということだ。今手元に電動ドリルがあれば、耳元を貫いていただろう。それほどの痛みが、その輝かしい西条さんの振る舞いをする度に押し寄せてくる。顔を誰にも見られないようにして耳を手で抑え、鼻をすすりながら前かがみになる。


「そしてここで、1人あたりの投票数を1票とした場合の結果発表です」


その言葉は塞いだ耳を貫いた。こちらは事前予告がなく、唐突に発表が行われ、周りも同様に困惑しつつ盛り上がりを見せる。


「全体投票数2762人のうち、1430人の方が投票されました。」


「単独投票部門第1位は」


最後の希望をその1回にかけ、両手を繋ぎ額につけ祈る。その緊張はその一瞬を長く感じさせるように、そして焦らすように間を開けた。


「エントリーナンバー8番 白石杏里さん!!!!」


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