百合小説【第69話】生放送のカラオケ大会②
ここで私と嘉陽田さんは別の方向へ歩いていく。向かう先は体育館で、演目が終わり休憩時間といい退出する人を待って中に入る。学生以外にも外部の人がおり、まだ座ってばっかりの席を積めるように言われ右にズレていく。
「あれ、?」
「為井くん??」
そこに居たのは為井 さん。折りたたみ式の宣伝プラカードを膝の上に置き、左腕を背もたれに置いてこちらを向いていた。
「やっぱり分かりやすいねその服は」
確かにメイド服を着て外を出歩いているわけだから目立つのは当たり前で、同じことが為井くんにも言える。
「為井くんシフト」
「まーバレないって、大丈夫大丈夫」
「程々にしてくださいね」
「シャーピン食べる?思ったよりおっきくてさぁ〜」
シャーピン、どこから布教したか分からないが大きめの餃子のようなもので、よく近くの神社の屋台に売っている。綺麗に半分、中の具材が歯型の残る凹面から肉汁と共に溢れだしている。
「いや、いいかな」
「おうよ」
椅子は人で埋まり、立ち尽くす人々が後ろに並んでいる。ガヤガヤと騒いでいた空間が照明が消えると同時に静まり返り、暗所の体育館の1箇所に眩い程の照明が射られる。
「渋谷学園新宿中学高等学校カラオケ大会を開始します。」
後ろの白い布にカラオケ参加者全リストが顔写真付きで投影されその8人がずらりと並ぶ。1人ずつ自己紹介をしていく中、各自アピールポイントで各々の特技を披露する人や出場経緯など話す人もいる。嘉陽田さんの出番を待ちわびているところで、それよりも先に馴染みある青髪にスポットライトが当たる。
「お前たち〜見てるかぁ〜?」
「見てるよ〜〜〜〜!」
椅子席の前列後列から黄色い歓声が飛ぶ。いつの間にこんなの
「エントリーナンバー5番西条友里恵です!僕の可愛さをバッチリ焼き付けて帰ってねカメラ越しに見てるお友達も応援よろしく!」
あれ、ボクっ子だっけ?いつもならネットスラングみたいな語彙か下ネタしか言わないイメージの西条さんがボクっ娘になっている。歓声が上がる中司会者が切りあげてバトンが次々に渡された。
「エントリーナンバー8番 白石杏里です!本日はよろしくお願いします!」
至って真面目そうな影井さんが芸名を名乗って壇上に立っている。所属しているプロダクションへの気遣いと言うべきなのか、カメラのシャッター音と場の盛り上がりが最高潮に達する。
投票方法は先程の大会用サイトからかQRコードで1人何回でも投票ができるそうだ。変なことにならなければいいけれど。
「それでは、歌唱順の抽選を行います。太田さんから番号順にお願いします。」
1番の人から番号を引いていき、歌唱順を決めていく。嘉陽田さんが何番になるかと胸を躍らせながらスポットライトの当たる壇上に目を向けた。
「それでは一斉に開けてください!」
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