百合小説【第68話】生放送のカラオケ大会
食べながら話していると、スマホからバイブレーションが響く。ポケットから取り出して開いてみると母からメールに1件のメッセージが届いていた。
『白石さんカラオケ大会出るらしいね』
なぜ知っているのか、先程書いたばかりの情報が即座に知られていることに恐怖で怖気付きそうになり手が震えた。震えていたその手を嘉陽田さんがぎゅっと握りしめ、座っていたベンチで腰を抱き寄せながら手を握りしめた。
「スマホ借りていい?」
「うん」
『そうらしいよ、どうして知ってるの?』
嘉陽田さんが私になりきってメッセージを打つと、すぐさま既読がついてURLが送られてきた。
『灯篭祭カラオケ大会出場メンバー一覧』
『ここに書いてあるものだから知ってるかなって』
『そういうことか』
『うん笑』
メッセージにグッドのスタンプを押して嘉陽田さんは会話を終わらせ私にスマホを返した。
「こういうことよくあるの?」
「たまにね、」
含みがあるけれど、実際にそう。スマホのメッセージや各種SNS、その他パスワードなどほぼ全て知られていた。知られては作って、また知られては作ってのイタチごっこが終わったのはVTuberになって仕事用のスマホが渡されてからだった。
「うちもそういうのあったなぁ〜」
「芸能人って大変そうですよねぇ」
「そうそう、子役時代は特に。私の知らないところでテレビの出演が決まったり歌とダンス踊ることになったり、それで睡眠時間2時間しかなかったりで大変だったなぁ…」
「今は」
「やりたいやつだけやってる感じかなぁ…もう16だしね」
余裕というのは自分で作るものなのだろう。そうでなければメンタルが病んでしまう。スマホを帰されて、会話がちゃんと切れていることにほっとすると同時に、先程送られてきたURLをタップした。中に入ると緻密に構成されたサイトの中に、出場者のプロフィールとアピールポイントが記載されている。その人達の中に、当日参加の欄に嘉陽田の書いてあり、その下を見るとズラっと並ぶ文章の中に大文字で3文字、生放送と書いてあった。
「はぁっ!?生放送だったんですか???」
先程の説明用紙をしっかり見てないので気がつかなかったが、嘉陽田さんはバカバカしそうに高笑いした。
「いやーまさかSNSで存在を知るなんて現代って感じがするよね」
「こういうのって事務所通した方が…」
「大丈夫っしょ、」
これを狙っていたかのように、嘉陽田のスマホにメッセージが届く。
『開始45分前になりましたので、参加する方は総合体育館前に集合してください。』
「私行かないとかも」
「したら途中まで私もいいですか?」
「いいよー?会場近いし、椅子座れるかもあるだろうしね!」
ベンチを立ち上がり、ビニールに入れたたこ焼きのゴミを捨てて体育館の近くに歩いていった。
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