【第62話】家族の再定義
相談に関して、パパにメールを送ってみたものの、5秒も経たずに既読がつき、すぐに返信が来た。電話できるかとのことで、返事をする前にパパから電話がかかってきた。
「もしもし」
『ん、どした?』
電話に出るとお洒落な音楽と、人のガヤガヤとした声が遠くに聞こえる。居酒屋と言うには多分雰囲気が違う。
「ちょっと相談あって、今どこにいる?」
『今は、横浜おるね、そっち向かう?』
「いいの?」
『アレの話だろ、場所は?』
「渋新付近の喫茶店かなぁ」
『飯田橋とかの方だよね、ちょっと遠いな…電話しながらでもいいか?』
「大丈夫」
『資料送っとくから目つけといて』
「資料?!わかっ…た。」
メールに送られたのは、離婚後の対応と話題に出されるだろう内応の数々が32ページほどずっしり書かれている。資料を見ながらだと聞こえないので、電話の音声をスピーカーに変更した。下までスワイプすると、離婚理由やその後の条件、離婚の原因なども画像付きで入念だった。
「なにこれ」
嘉陽田さんが私の太ももを手で抑えスマホを覗き込み、何かも分からない顔でこちらを見てくる。
「パパがまとめた離婚に関する資料?」
「こんなに書くんだね」
いきなり呼び出して、すぐに察しがついたとしても…。
「本当に大丈夫?会社の飲み会とかじゃないの?」
『あー今?キャバクラ』
「おいおい」
『お母さんには内緒でね、もう時期そっちに向かうわ、今友達と一緒?』
何を話すべきか、ママの件や離婚の件、嘉陽田さんの件と悩むことは色々あるが、答えは一つしかなかった。
「そうだねぇ、その…友達の件で」
『と言うと?』
ママから何かしらで聞くだろうし、こういうのは自分から話すのがいい。
「同性同士が恋愛するのってどう思う?」
『別にいいんじゃねぇか?愛の形は人それぞれっていうだろ?…あ〜〜〜ひょっとして』
「多分その解釈であってる」
『変わってもらってもいい?』
「いいよ?」
スピーカーにしていたものだったので、嘉陽田さんは状況を把握している。スピーカーはそのままに嘉陽田さんがスマホに向けて話しかけた。
「お父さん初めまして!同級生の白石杏里です」
『あぁ〜杏里ちゃんか!久しぶりだねぇ〜まさかこんなところで再開するなんて』
終始困惑が隠せないまま、私と幸代さんとの目が合った。
「あのぉ…?どちら様で」
『後藤だよ、明応塾の広告作った』
「あぁ?!その節はどうもお世話になりました」
「知り合い?」
「中学生になる前に予備校のイメージモデルやってて、それ作った人がさっちゃんのパパらしい」
「あの人なんでもやってるから」
『ってことは小百合と』
「まだですがいずれは」
『なんじゃそりゃ』
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