百合小説【第63話】これから
「パパ!」
「よ〜小百合」
「広?!」
私の住んでる一軒家とは違く、パパは家族には内緒で高層マンションの上層階に住んでいる。玄関から大理石でできた広々とした空間と、左右に何個部屋があるか分からない扉が並ぶ廊下が一直線に広がっている。
「あーどうもどうも」
「あぁ!お久しぶりです!白石こと嘉陽田です!」
「どうぞ〜」
真っ直ぐに進んで出てきたのは、20畳はあるだろう広々とした空間のリビングだ。シックな色使いの中に、私がVTuberをやっている星野ルナの完全受注生産限定タペストリーが飾ってある。前来た時は空き缶や食べ物のゴミが少し散乱していた気がするが、その気配もなく清潔さを保っている。
「綺麗になったね」
「でしょ〜週1で家政婦雇っててさ〜」
「家政婦?!」
嘉陽田さんが驚きを隠せない様子でいる。芸能人だとそう珍しいことでは無い気がするが、実態として少し気になる。それはそうと、前の部屋がどうだったかを嘉陽田さんに話してみた。
「前嘉陽田さんみたいな部屋だったの」
「いわないでいいから!」
「良かったら雇って見な〜心に余裕ができるから」
「片付けてくれるも」
「嫌です雇ってください」
「ちぇ」
言葉をいい切る前に釘を打っておく。
「お金くれたら考えます」
「お金払ってやらせるなんて…イケナイ関係じゃない?」
「デリへル雇って下さい」
「セーラー服のオプションって」
「ないです」
「仲がいいな、口が回るようになったんじゃないか小百合」
「確かにそうかも…」
VTuberとしては人と話す機会が多くあるが、対人という意味では…頭の回転も前に比べれば早くなった気がする。
「そうそうルナの復帰楽しみにしてるよ」
「あー…うん。」
先程頼んだココアとお茶を淹れてくれて、テーブルへ持ってくる。
「にしても良かったのかい?家族の只事に付き合わせてしまって」
「いいんです戦犯なんで」
「え?そうなの?」
「そうなんですよ〜聞いてくださいお父様〜」
あまりにも軽いノリで嘉陽田さんが事の発端を説明する。
「つまりは冗談で嘘言ったら本気にしちゃって茜が逆上したと。」
「まぁこれから付き合うんですけどね〜」
「まだです」
「ほらね!」
嘉陽田さんが私の言葉に反応して、パパに共感を求めると、ニヤついた顔で私を茶化してきた。飲んでいたコーヒーを机に置いて、パパが口を開いた。
「あの人は説得難しいから距離置くしかないよねぇ〜」
「そういえばここ家賃何万するんですか?」
「ざっと50万くらい?」
「うわたっか!」
「そんぐらい稼げるようになりたまえ〜女優の卵さん」
「はーい!」
目をつぶりながら嘉陽田さんが上の空に返事をする。パパが声色を低くして、場の空気を裂くように、今まで団欒としていた雰囲気が一変した。
「それで話、これからについてだけど」
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