百合小説【第32話】開催!全学系交流会③SNSの正しい使い方
『おつかれ〜…という空気でもなさそうだね』
午後11時、全員が事情聴取から解放されて重々しく疲れが残る。そんな中でまたグループ会議というのだからたまったものじゃない。
『寝たいから早めに話してくれると助かる。』
『早めに終わらせるよ☆3時間あれば!』
早めってなんだろう、日付が変わってる。どちらにせよ、明日は学校そのものが休校になるのでゆっくり寝れる…寝れればいいが。
『先生臨時休校の期間はどれくらい?』
『敬語を使え、そうだな…1ヶ月はくだらないと思うぞ』
『学祭10月ですよ????』
『こうなると開催自体が怪しい。世間の目は今回の事件をどう見るかはこれからだろうが』
それはそうと納得する。こんな経験…まさか加害者側になるなんて思ってもいなかった。マスコミや新聞に大々的に取り上げられてしまったら手の打ちようがない。今のうちに打開策があれば…
『ということで〜スペシャルゲストをお呼びしました〜』
「?」
『法律事務所の佐藤耀平と申します。』
『芸能系のスペシャリストだよ☆』
『今回の事案ですと、影井さん、伏田さんは1週間程度の停学処分で解決するかと思います。ただ、アスリートとして活躍している伏田さんの場合は、今回の事件を穏便に解決してもらうのが先決です。』
『それはどう言う…』
1週間の停学処分で住み、無事学校登校とは行かず嘉陽田さんが家まで迎えに来た。
「いつもお世話になっております。嘉陽田杏奈です。」
「あぁ例の!うちの娘がお世話になっています!あれからずっと引きこもってて…スマホも壊してろくに食べ物も食べなくて…」
「任せてください!煽てるのは慣れてますから!」
「あんた、言い方ってものがね!」
「学校怖い…」
「私の右手が…」
「ヒィ」
黒板に飛鷹の頭を叩きつけた音と、黒板を引っ掻くような音が鮮明に思い出す。右手の感触、湧き出す怒り、周りからはきっと冷たい目で見られている。陰キャがイキリ散らかしたとか、喧嘩慣れしてないから起こると手に負えないとか。
「あぁごめんそんなつもりじゃ」
ノイズをかき消すように、何も聞こえないように、篭城するように布団に丸まり光を閉ざした。
「ああああああああぁぁぁ」
叫ぶことで周りの音を意図的に聞こえないようにした。嘉陽田さんだろうとママだろうと誰からももう…もう何も聞こえない方が、関わらない方がずっとマシで、生きてる事が迷惑で…私は…
「落ち着いて!!ね」
布団の上から私の体さすってくる。あやすような、優しい、優しい撫で方をしている。布団越しに人の温もりが伝う。抱きついて、敵意がないことを示しているのだろうか、それとも、何も考えるような頭のリソースは残っていない。
「もう飛鷹居ないよ」
「え?」
その一言は鮮明に聞こえた。私が逆上したから、きっと。
「退学、強制退学らしい」
「私のせいだ」
「そんなことないよ、学校側が経緯を見て判断したらしい。」
「…」
「守られちゃった。ありがとう」
守った…?よく分からない。ただもう大丈夫だって言葉その一言でわかった。もう楽になっても、いいのかもしれない。布団から私を覗いて頭を撫で下ろす。嘉陽田服を引っ張り、カーテンから陽光が差してくる。
「はい!ほら泣かない!」
「別に…」
「はい強がらない!」
「それ…それは投げやりですよ」
「そうかな?」
「泣き止んだら行くよ!」
11時5分、神楽町行の電車に福山雅治の曲を、片耳ずつ繋がったイヤホンで聴きながら電車に揺られる。嘉陽田さんの肩と音楽プレーヤーを借りて、その揺れに居心地を感じている。
「あの動画見た?あの女の子理数にいるらしいよ!行ってみようよ!」
動画?ケータイを壊してしまいここ1週間の情報がすっかり抜けている。嘉陽田さんからは最低限の情報しか聞いていないので一切把握ができていない。
「…人気だね?さっちん」
その一言で即座に理解した。理数科の女子、目立っていたのは私のみ。勘違いではなくほぼ確実であろう。私、人、怖い。検索なんてスマホがないわけで、どうやら私は積んでいる。
「私これから…どうすれば」
「意外とブーム去るのって早いよ〜2〜3ヶ月くらいかな?」
「生々しいですそれは!」
国際学系側から見覚えのないジャージを着た女子が追いかけてくる。
「あ!影井さんですか?!」
「フビ」
「Twitterの動画見てて、良かったら写真とか」
「私も!勇気貰えました!」
「あ、あの」
「あぁごめんねちょっと照れ屋さんでね」
「あ!白石さんだ!本物…」
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