百合小説【第22話】影井小百合の服選び②
「乗る前に下着買いたいです…」
「この辺に服屋…そもそもその大きさに合うものって…」
スマホのナビで神楽坂駅近く洋服屋を探したがあるとすれば高田馬場のファッションチェーン店になる。
「…高田馬場にあるかもしれないです。」
「ほんと?!なら行っちゃおう!お!ゲロあるかな?」
「吐瀉物は観光名所じゃないです」
神楽坂駅からほんの少し電車に揺られ、高田馬場に着く。そこから近くのショッピングセンターに入り、2階にあるその店に行こうとしたか、行先に嘉陽田さんがある店で足を止めた。
「ちょっと、これ可愛くない?」
そう指さしたのは、華やかな色と柄をした下着専門店である。身の回りの衣類や身だしなみに頓着がないので普段行くことは無い。
「えぇ…っと」
あと私には縁がないと思うほど輝かしく、心理的に入ることは容易ではない。
「次いつ”そういうこと”があるか分からないでしょ!あといつものやつ気分上がらない!」
「と言われましても…」
確かに、服や下着選びなど、今までママとの買い物でしか買うことがなかったし、私が選んだことなんか幼少期の女児アニメが最後だと思う。光るパジャマを着て寝ていたあの頃が懐かしいと感じながら、高校生になった今、どこか遠い過去のようで胸が苦しくなる。
「さっちゃんはねぇ、黒かなぁ…色白だしブルベだから水色もいいなぁ…」
「あ、あ、うぅ」
ち○かわのような情けない声が出て、目的の店に行こうにも伝えられない。
「お姉さん!採寸いい」
「では試着室に…白石甘里さんですか?」
「はい!お姉さんうちの事知ってるんだ!嬉し」
「子供の頃によくテレビで見てました!良ければサインとお写真よろしいですか?」
「もちろん、あ、終わったらこの子の採寸お願いしていい?」
「えぇ!良ければ写真撮ってもらっても」
「…あぁ私?!はははい?!」
店員さんのゴツゴツにデコられたスマホを渡され店を写して2人のツーショットを撮る。そういえば嘉陽田さんは女優で『見られる側』の人間だった。身近な距離でその感覚すら今はない。撮影音が鳴り、スマホを店員に渡して写真を確認しているのだろう。それが終わり、試着室でバストのサイズを測ってもらうことになった。
「白石さんの同級生ですか?」
「あぁ…はい?そうです?」
「芸能関係ですか?これからトップ測りますねー…?!」
「あ、っっとその…」
「たまにそういうお客様もいらっしゃるので安心してください!…90、アンダーが…62…H…かな?」
たまにそう言うお客様…下着の事か芸能関係の事か、後者は無さそうだが相槌を打ってすぐに計測は完了した。
「何カップだった?私はBカップ」
「聞いてないです」
高校生になってより1層サイズが大きくなった気もするが間違いじゃないかもしれない。
「お客様のサイズだと…この辺りになりますかねぇ」
先程嘉陽田さんが選んだ下着の適正サイズを出してくれた。
「着替えるので待ってて貰ってもいいですか?」
試着に入り、ブラホックをつけようとするものの、体が硬く後ろに手が届かない。なんせ初めてだから仕方がないと、ネットで付け方を調べた。前でホックをつけてから後ろに回して装着するといいそうなので試してみるとすんなり行った。いつものよりも締め付けがなく、体が楽に感じる。2着あってもいいかなと黒と水色を試すがどちらも体に合う。肝心の値段はと思うと、今使っているものの2…いや3倍はする。高校生にはなかなか手が出しずらい価格で困惑する。水色よりかは性格上モノクロのが性に合うので黒を選ぶことにした。
「終わりました」
「まだ私見てないんだけど」
「すみませんこちらで」
「無視?!あと水色は?」
「その…あまり言いずらいのですが…値段が」
「お姉さん、ここカード使える?」
「ご利用いただけます!」
「ならそれも、あとちょっとまっててください」
サイズを理解しているのか、タグを見てブラの下に置いてある下着もレジに持ってきた。
「かしこまりました」
「いや、いいです本当に」
恩を返すという行為以外にも、サイズが本当に合っているか今までの行動から不安が募る。
「こう見えて私、物欲がないんだから」
「…」
あの無造作に散らかった部屋を見た後にそれを言われても説得力に欠ける。今の行動を見て、これから先ダメ人間に捕まらないか心配になる。依存型な人間だと思う、今がそう…と言っていいのかな?
「さて、越谷行きますかぁ」
「一休みさせてください」
今度は袖を引っ張りアピールしてきたのでふてぶてしく嘉陽田さんの顔を見上げる。
「何です?」
「手つなアイテ!」
魂胆が丸見えなので手を振り払い手の甲を叩いてみた。
「あぁごめん。嫌だった?」
「ううん…いいよ」
「うわ…」
さっきまであれだけ意気揚々と動いていた大型犬が涙ぐんでいる。あれだけ騒いでたのに大人しくなるこの感じがとても愛らしい。
私から手を握ると、その手は子供が繋ぐ手のように弱く、私の手よりも遥かに大きい。
「その、さっきはありがとうございます。」
「これが服を推しに送って着てくれるという神イベントかぁくぅー!テンション上がるわァァァァ痛い…今日アタリ強くない」
「気のせいですよ」
エスカレーターで嘉陽田さんを前に乗せ、手をつなぎながら1階に降りる。フードコートへ向かうも食べたいものは特に何も考えていない。
22話の小話
高校生は本来クレジットカードを持つことが出来ませんが、海外留学予定の方のみのみ特例で作れるそうです。
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