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第九十二話

数か月前に書いた文章を今になってテスト勉強から逃げるために放出します。

『さあー! 今回も始まりました! 第三回イベント! 司会は私、ソフィアが務めさせていただきます!』


「「「「「「「オオオオオオオオッ!!!!」」」」」」」」


「よーーーーやくイベントだよ! ほんっとに長かったぁ……」


「でも、あれだけ期間が空いたって言うのに準備しきれてないんだよな」


「確かにそうですね。タキオンさんは、スキルに慣れましたか?」


「おうともよカリノ! この大会で活躍する準備できたわ!」


「あの、解説始まるんで少し静かにしてもらえますか」


「「「「すんません」」」」


 さて、ウッキウッキの〈魔王軍〉だが、ルールの把握は忘れない。ソフィアとやらの話を纏めるとこうだ。


①いつも通り時間加速された状態で五日間過ごす。

②各ギルドは無人島に送られる。その島の大きさはギルドの大きさに依存する。

③三日間はその島内で生存してもらう。しかし、四日目、五日目は島同士が肉眼で見えるくらいの場所に転移されるので、それから他ギルドと戦争を始める。これは強制イベントである。

④持ち込めるアイテムは事前に『審議』の項目で確認しているはずだから、それに引っ掛からないものだけ持ち込める。

⑤本イベントは運営側が盗撮して総集編動画を作ることはない。プレイヤー達から寄付された動画を使用して作る。

⑥弾薬は毎日午前零時に配布される。

⑦フレンドリーファイアはある。気を付けてね。

⑧地形は、一定以上のSTRで変えることができる。


 ざっとこんな感じだ。ありがたいのは運営の盗撮が無いこと、弾薬が無限に供給されることくらいだろうか。そういえば俺は『審議』をあまりしていない。何を持って行けるのかがあまり分かっていないのだ。ナイフとかランタンとかは確認したんだけど、それ以外からっきし。

 やべ、という表情で振り返ると、アオイが「むふー」とサムズアップしてきた。なんだなんだ。鼻の穴が膨らんでるぞ。


「……私は毎日『審議』をしてた。総アイテム数で言えば5837個。持って行けるものは意外と少なかったけど、戦闘に直接関係しないものとかは意外と持って行けた。あ、でも食料系は全部ダメだったよ。お肉から野菜まで全部」


「うわ、めっちゃ確かめてるねー! 私武器類だけしか確認してなかったのに。他に持って行けるものとかある?」


「『なりきり簡単サンタさんセット』、『【期間限定コスチューム】水精ビキニ』、『光るパジャマ』……これらはいけたよ。後は……あ、そうだ。ココネさん、カナデの、ユカはタキオンの耳を塞いで。男子達には聞かれたくないし」


「? 分かったわ~。ごめんね? カナちゃん」「……これでいいや」「おわっ」


 そういうとココ姉は俺の耳をガッチリ塞ぎ、リエはタキオンの耳に遮音性100%の耳栓を突き刺した。何も聞こえない心理的な恐怖を与える拷問用に開発したそうだ。被験者の俺が何も聞こえない恐怖を味わったから間違いない。


「…………クリスとアスカ用にピーーーとピーーー、サキさんとユカ用にピーーーーーとピーーーーー、それに、ピーーーーーーーー用のピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーも確認してある。全部いけたから、安心して」


「いやアオイちゃん……意外とピーーな子なんだね……ちょっと印象変わっちゃったかも」「わ、私のこともそんなに知ってたの!? も、もしかして、あ、アスカが喋った!?」「いや!? 何で疑われるのー!? 私も急すぎてびっくりしたんだけどぉ!?」「アオイ、もしかして私たちの部屋覗いたの!?」


「……そ、そんなことしてない。ただちょっと……ちょっとリエの作った偵察用ドローンと監視カメラの性能を確かめただけ……。悪いことは何もしてな―――」


「「「「ァアオイィィィィィィィッ!!!」」」」


 ……何も聞こえないが目の前で急に掴み合いを始めている。女子怖い。ココ姉が本腰を入れて止めていない辺り、マジ喧嘩では無いのだろうが、大勢の人が集まる前でこういうことをしないで欲しい。恥ずかしい。

 そう思っているのは俺だけではないようで、カリノやリン、凪でさえ死んだ表情をしていた。悟りを開けそうだな。


『それじゃあイベントを始めるよ! みなさん大きな声で! 3! 2! 1! すたーーーーーとですっ!!!』


 全員同時に転送される瞬間、一人の男と目が合う。その名はアイク。


『……分かっているだろうな』


『ああ、待ってろクソ野郎。そのすまし顔、ボコボコにしてやるからな』


 そうして、俺たちは小さな無人島に転送された。



♢ ♢ ♢ ♢ ♢



シュンッ!


「おお、ここがイベント会場の無人島か転送先は海岸……島の端っこってわけだな」


「マップは使えるみたい。まだ全部黒塗りだけど。カナデ、まずどうする?」


「んーそうだな……妥当に手分けするか……あ゛~、タキオン、カリノ、あとは……リエ。この島のマッピングに行ってくれるか? 多分その場に着いた時点でマップは解放されていくはずだから、難しいことはしなくていいと思う。何か気になる構造物があれば描いてくれてもいいぞ」


「おう! 任せとけや!」「分かりました。食料等があれば回収してきます」「らじゃーっ!」


 純粋に素早いタキオン、何があっても耐えられるカリノ、本気を出せばこの島の環境を丸ごと変えることができるリエで探索に行ってもらう。


「んで、次は拠点の作成……つっても仮拠点だけどな。本拠点は島の全てを把握してからだし。その仮拠点の作成は、俺とユカ、それにアオイと凪でやる。多分すぐ終わるだろ」


 【unlimited(不滅の) materials(素材王国)】と【ultimate(超産業) factory(革命)】の使える俺、それを除いても高品質かつ大量のアイテムを作ることができるユカ、大量のアイテムを内包しているアオイ、そして、言い方は悪いが俺の【unlimited(不滅の) materials(素材王国)】を稼働させるエネルギーを供給してくれる凪。この四人で作る。いや、凪本人がその使われ方を認めてるから。ウン。オレノセイジャナイヨ。


「あらぁ~? そしたら私達が暇になるのだけれど……」


 そういってサキ、リン、クリス、アスカを見るココ姉。無論、五人のすることも考えている。


「四人には重大なミッションを課すよ。なんたって、マップ外……島の外側を確認してもらうんだからな」


「え? 島の外? 海しか……ないわよ?」

「そうだよねぇ。カナデ、どうして海を? あ、もしかして魚が食べたいから?」


「いや違うわ」


「じゃあ、お兄ちゃんは何がしたいんですか?」


「だから探索だって。詳しいことは後でクリスには話してやる。超機密事項(トップシークレット)だかんな」


「えーっ! 酷いんだけど!? クリスちゃんにだけ!? もー、意味わかんないんだけど!」


「まあ、カナちゃんがそう決めたのなら私は信じるけど……何か目標はある~?」


「あーそうだな。見つけてほしいものは無いけど……マップ限界があるかどうかだけは知りたいな。実験には何を使ってもいい。アスカの【月読(ツクヨミ)】、クリスの【治癒神(パナケイア)】でもなんでもな。それほどまでに重要なミッションなんだ」


「わ、分かった……頑張るね!」


 こうして、俺たちは三つの班に分かれて作業を始めることに。その前にクリスに説明をしたが。


「私だけに伝えるってことは……神とか世界関連の話……?」


「んー、まあそう。一番詳しく知ってるのはお前だからさ。それに、あいつらにはまだゲームを楽しんでもらいたい」


「わ、私は……?」


「知ってしまった時点で無理だろ? 俺たちは共犯だぜ」


「えぇ……?」


 少し前から考えてはいた。ここは本当にゲームの世界なのかと。いや、ゲームでなければおかしな設定や現実味の無いものばかりなのだが、少し考えたらまあ分かる。


 NPC達の言動。これらで真っ先に疑った。主に七つの大罪、次にクリスの会ったゼウス。明らかにシステム外の話をしている。それすら内包したストーリーで、そういう世界観ならば言うことも無いのだが、メタ的な要素が強すぎる。

 例えば、サタンがブチギレた時。あの時の挙動から察するに、外界の何か(サタン)とゲームが契約を結んだが、サタンはHPが半分を切ったらそういうアクションをするように縛られていた……で、システムに体を乗っ取られそうになったサタンが自害してそれを阻止した……といったところか?


「確かに、明らかにゲーム外の話過ぎるよね……あ、ちょっと待って。いいこと思いついた」


「?」


「ん゛んっ……とすると、これはゲームのフリをした何か……というわけだね……。確かに、他にもおかしな点はいくつもある。ゲームにしては一つの階層にいくつものコンテンツを詰め込みすぎているのと、明らかなバランスブレイク要素があること。うちの凪もそうだし、カナデ達が会ったっていう白狐もそう。“幻獣”とやらは第二階層に出すには早すぎる概念だよね。まだ神の概念を知らないプレイヤーが大多数なのに、その神と共同作業して秩序とか概念を司っている“幻獣”っていう概念が出て来るのはおかしい。まあ、そこは純粋に運営のコンテンツの供給速度がアホみたいに早いって可能性もあるけど、フルダイブ型のVRゲームって新しいシステムを作るのがそこそこ面倒って話を聞いたことあるし、その線は無いんじゃないかな。しかも、“幻獣”だけじゃなくて“極禍幻獣”ってものまで出てきたじゃん? うん、凪のこと。白狐が言ってたんでしょ? 凪は“極禍幻獣”だって。意味わかんないじゃん? 何だよ“極禍幻獣”って、って感じだし。まあそもそも、凪の保有するエネルギーの大きさがおかしいしね。ああ、エネルギーといえば、ユカの発明した『神龍』。『黒龍』っていうユニーク装備と『白龍』っていう超高性能なハンドガンを『理外のシリンダー』で融合することで一時的に生まれるエクストラユニーク装備。こんなものが生まれる時点でゲームではないよね。だって普通のゲームってのは元から決まったレシピ通りにしか物を作れないはずだから、ここまでゲームバランスを崩壊させるものを生み出すことはできないはず。自由度の高さが売りとはいえ、新しく作られた武器のシステムを新しくプログラムするのは流石に無理だと思う。だって、作られた瞬間から効力を発揮する以上、そんなの(プログラム)書く暇ないでしょ? それに、よく考えたら『運営に契約の内容を伝えればそれを仕様として使うことができる』っていうシステムもおかしいよね。どっちかって言うと、申請されてからプログラムを書くんじゃなくて、既存のプログラムで色々な要素を縛っていて、その契約が出た瞬間に一部だけ解放する……みたいなことをしているんじゃないかな? まあ、どっちにしろバカみたいな量のプログラムがいるだろうけど……徐々に契約が増えていくんだったら、後者の方が楽な気がするけどね。私はそっち方面の知識がないから何とも言えないけど。まあでも、転移とか、そもそもステータスの概念とかはゲームじゃないとありえないから、これはゲームだって言う線を消せないんだけど。多分カナデもそういう状況でしょ? 今」


「……ア、ウン。ソッスネ。ア、エ、チョ、待―――」


「ああ、マップ限界を探ってほしいって言うのはそういうこと? ゲームならマップ限界を作っていないはずがない。だったら確認してもらおうって。でも、ゲームならマップ限界どころか、無制限である可能性もあるよね? どっかのマイン○ラフトとかも無制げ―――ああ、そういえば世界の端があるんだっけ。したことないから忘れてたよ。でも、端のない無限の大海原に一つの島がぽつんとある可能性はないのかな? だとしたらこの作業は無駄になっちゃうんだけど、その件についてはどう考えてるの? あ、違うな。カナデはもしかして、ここがゲームの世界でないならば、異世界。異世界ならば、この島の外側にも島があるかも? とか考えてるんだね? うーん。確かにその線もあるね。でも、よく考えたらゲームなら同じ空間を行ったり来たりさせることもできるよね? 地点Aを通った後に地点Bを通ったら、地点Aに瞬間移動してしまう、みたいな。確か、第二階層にある迷いの森はそういうシステムで狭い範囲で迷子率を増やしてるんじゃなかった? 前攻略サイトに載ってた気がするよ。てことは、そういうことがFFOではできてしまうってことだね。じゃあ、マップ限界を作らなくても問題なくなっちゃうね。それに関してはココネさんの氷とかを使って目印を作ることもできるし、アスカの【次元間狙撃】とかを使っても分かるかもしれない。そういう意味でも実験してほしいのかな?」


「そ、そう……そうなんだけど、あの、ちょっと饒舌すぎ―――」


「じゃあそろそろ探索に行くとするよ。余裕があれば魚を獲ってこよ―――と思ったけど、【水泳】スキルを持ってないから、取得からかな。あ、でもココネさんの氷を使えば深海だろうと無傷で潜れるし、銛かなんかを作ってもらえれば浅瀬の魚を捕ることも出来るね。じゃあ大丈夫か。でも、ここがゲームの世界じゃなく本当に異世界なんだとしたら、地球で見られる魚介類とか甲殻類じゃないかもしれない。そしたら、食べられないかもね。でも、ゲーム内の生物って基本的に現実とは少し離れてるから、確認することはできないかな? FFOの普通の階層で獲れる魚って、普通の魚だったっけ? それともゲーム仕様だった? あ、前にいっぱいフナ釣れた! とか言ってたね。その時食べたフナは普通のフナだったし、よく考えたら凪が来てすぐの夕飯パーティーで出された鹿って第一階層の門番の鹿だったんでしょ? じゃあモンスターも食べられるってことだね。いい証明になって良かった! いやー何事も繋がってるって本当なんだねぇ。小さなイベントでも大事な話に繋がって来るもんだよ。さて、そろそろ私は演技状態を切って通常のクリスとして接するつもりなんだけど、さっきからこの饒舌な(クリス)は何なんだ、と思ってるよね? これは、最近クリスが習得した新しい演技の使い方なの。容姿、喋り方、放つオーラ、全て私。でも、思考だけを切り替えるの。深い深い、思考の海へ。通常では考えられないほど速い思考速度になる分、それを整理するように口から出さないといけなくてね。黙って考え込んでたら記憶が吹っ飛んじゃうの。それを応用して嘘発見器から逃れることも出来るんだけど、まあそれは追々。ああ、そろそろ口が疲れちゃった。元に戻ったクリスがちょっと人格変わってるかもしれないけど、まあ気にしないで、五分くらいで直るから」


「お前が自分のことをクリスって呼ぶのも、第三者視点だからか?」


「そうだね。思考が速すぎて、(クリス)クリス()でも、別人として見ることができるの。一種の二重人格みたいなものよ。この三次元を俯瞰して思考するようなものだから、私は四次元的存在だと認知して考えてるの。まあ、それでも三次元的な存在であるクリスの思考だし、そもそも(クリス)クリス()だから、神でも何でもないのだけれど。ああ、そういえばこの状態は現実では三十秒しか持たないの。でも、FFO内部だとシステムが私の脳が壊れないように思考を補助してくれるからいつまでも持つのよね。ただ、この状態を続ければ続けるほど元のクリスの人格が薄れていくわ。元に戻ればその状態もリセットされるから、これを使えば使うほどクリスが消えていく! みたいなお涙頂戴展開は無いから安心して。はあ。本当に疲れるから消えるわね。じゃあ、この後のクリスをよろしく。多分、すっごく甘えるようになるから―――」


「あ、おい」


 プツンッと糸が切れたように倒れこむクリスを、慌てて支えるカナデ。その数秒後にはクリスが目を覚まし、自分の足で立った。


「あ、え、あ……ごめんなさい……その……迷惑だった……でしょ……?」


「いや? こっちとしても思考を整理できたし、助かったさ。まあ、びっくりはしたが……」


「えへへ……本当に困ったときにだけ使ってるんだけど、今回は内容が複雑だっただけに……使わなくちゃって……。ぁ~、それにしても……疲れちゃった……ちょっと、肩を貸してくれないかしら……?」


「え? あ、まあ。それくらいなら……」


 そう言ったクリスは、「よいしょっ」と言いながら俺の背中に乗って来た。


「……!!??!??」


 反射的に背負ってしまったが、パニクりすぎて挙動不審になってしまう。これ……いわゆるおんぶだ!


「………………あー……解除されるまで待つ、か?」


 その後二分ほどしたら再度クリスが目を覚まし、「うきゃああああっ!?」と焦りながら後ずさりしていたが、俺は気にしないことにした。


 こうして波乱の初日が始まることになる。

クリスが饒舌状態になって、三千文字使っています……びっくり。

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