第三十五話
少し不安になりながらスキルの【邪淵の災呪】を見てみると、先程の不安はどこへやらレベルで素晴らしくなっていた。
【邪淵の災呪】
対象から攻撃を受けた際、確定で対象のSTR、DEF、AGIを30%低下させる。クールタイム一時間。
また、自身の死亡時に対象の最大HPを半減させ、復活する(一日に一度)。
「蘇生と弱化を両方同時に……いや、同時じゃなくてもいけるのか。強いな、これ」
「二つのスキルを足して二で掛けたような感じだね。確定で強力なデバフ、HP満タンで蘇生。うわー、羨ましいなぁ!」
「二で掛けたのか。割ったんじゃなくて」
「いいとこどりだったら割っただけど、いいとこを更に進化させてるから掛けてるじゃん」
「確かに」
納得しながら魔法陣に乗り、『果ての闇』に入る前の場所に返って来る。何だかんだ楽しかった。
「いやー、今日は本当にありがとう! もうずっとクリアできてなかったから、嬉しい! 楽しかったよ!」
「こちらこそだ。欲しかったアイテムも手に入ったし……」
「? あ、『ダークマター』だよね? 私のもあげるね」
そういうとコルネはインベントリ内の『ダークマター』を大量に渡してくれた。俺が手に入れた数の三倍だ。多いな。ブラックホールの時に大量にゲットしたはずなのに。
「うわっ、マジでありがとうな。もしかしたら今回は俺の方が利益出てるかもしれねえな」
「じゃあ、これからも付き合ってよね? ダンジョン潜るの」
「時間が空いてればいつでも呼べよ。多分すぐ行くから」
そしてそこでコルネと分かれ、『世界の風』に向かうことにした。素材をユカに渡すために。
あそこ地味に遠いんだよな、と一人ごちながら歩くのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
カランカラン!
「いらっしゃいま……って、カナデか」
「何だその落胆した顔は。わざわざいらっしゃいませって言った労力を返せ、みたいな顔は」
「よく分かってるね。あ、そういえばさっきリエが帰ったよ。私に素材を渡してから」
「うわ、マジか。もうちょっと急いだら話せたんだがな。ま、別にいいけど」
なんだ、さっきいたのかーと思いながらインベントリを開き、大量の『ダークマター』を回収する。そして、その形があるのかも分からない暗黒物質をユカに渡した。
「はい。『ダークマター』ってこれでいいんだろ? もしかして、間違えたか?」
「いや、これで合ってる。けど、こんな量を一日で集めて来たの……?」
「いや、四分の三はコルネのやつ。もらったんだ。あ、コルネって知ってるか……?」
「知ってる。第一回イベントで活躍した、めっちゃエイムのいい子でしょ。中央広場で見てたよ」
あの時の配信でコルネは知られていたのだという。へー、やっぱりエイムいいんだな、あいつ。今回のダンジョンでも思ったが、それを確信した。
「うん。この量ならハンドガン全体を余裕で作れる……。で、『オリハルコン』とか『アダマンタイト』とかは?」
「……ナカッタ……」
「まあ、レアアイテムだから仕方ない。リエは『アダマンタイト』を持ってきてくれたけど」
「マジかよ……どういうところにあったって?」
「ダンジョンに潜ったら、ボスが一つだけ落としてくれたって」
「ラッキーすぎるだろ……」
羨ましいと思いながら、少し肩を落とす。つまりアイツは、『聖水』というレアアイテムと同時に『アダマンタイト』というレアアイテムを手に入れたと。俺が手に入れたのスキルばっかなんだけど。アイテムは集めやすい『ダークマター』だけなんだけど。
「でも、スキルをいっぱいゲットできたんでしょ? ならいいじゃん。このハンドガンだって結果的にカナデのために、カナデが強くなるために作るんだから」
「そう言ってくれると助かるよ」
その時、ピロンッ! という通知音が響いた。見てみると、運営から。思ったよりも早い。仕事のできる人はモテるよ。
「誰から?」
「あー、運営から」
「運営? 何かイベントの告知とかあったっけ? 最近来た気がするけど」
「いや、今日運営と喧嘩して、そのお詫び? みたいな感じでアイテムをくれるらしいんだよ」
「何してんの……?」
喧嘩です。喧嘩。一方的に叱りつけただけじゃないです。
でもよかった。強制奪取とか、強制キックじゃなくて。あんだけやっといて見逃してくれるって、運営優しいな。
実際は運営にそんな権限がないだけなのだが、今のカナデにそんなこと知る由もない。
「見なよ。メッセージ」
「あーい」
from:FFO運営
to:カナデ様
いつもプレイしていただき、ありがとうございます。
先程は誠に申し訳ございませんでした。こちらの担当部門の打ち合わせ不足により認識の齟齬が発生し、カナデ様には大変なご迷惑をおかけいたしました。
お詫びとして、『ハジマリ』内部に保存されている機能を宿した鉱物、『ジアルメント蒼晶』をお贈りいたします。
この度は心より謝罪いたします。
gift:ジアルメント蒼晶 ×5
「だってよ。『ハジマリ』の力の一部が封印された鉱物だってよ」
「『ハジマリ』が何かよく分からないんだけど。それが喧嘩の原因?」
「まあ、簡単に言えばこのゲームのシステムの根幹。もうちょっと言えば、それが無ければこのゲームが壊れるらしい」
「へえ。それで何があったの?」
「俺が取っちゃった」
ユカは、カウンターから飛び出し、飛び蹴りをかまして来る。あまりに驚きすぎて、「え?」と呟いた瞬間にはもう喰らっていた。現実だったら壁まで吹っ飛ばされているだろう。やはりアクロバティックだ。
「痛って……。やっぱお前生産職じゃないだろ……」
「現実で人を斬りまくってるから、ゲームの中では好きなことだけしてたい。悪いこと?」
「悪くないさ。この世界は自由だからな」
何をするにも自由だと俺は初日に言われている。そんな世界で何をするかを人が言えるだろうか。
「『ジアルメント蒼晶』を渡して。ちょっと【鑑定】するから」
「うい」
手渡しで渡す。美しい青色であり、鮮やかな湖を彷彿とさせた。
うんうん、とひとしきり『ジアルメント蒼晶』を眺めた後、【鑑定】し終えたユカが苦々しそうに言った。
「これは使えない」
「え?」
ユカのステータスです。
ユカ
Lv35 ステータスポイント残り:0
HP 20/20
MP 30/30
【STR 20】
【DEF 9】
【AGI 15】
【TEC 30〈+45〉】
装備
頭 【空欄】
体 【技術者ノ作業着】【TEC+15】【破壊不可】スキル【空欄】【空欄】
右手 【達人ノ手袋】【TEC+10】【破壊不可】スキル【神業】【空欄】
左手 【達人ノ手袋】
靴 【新技術ノ足跡】【TEC+10】【破壊不可】スキル【生贄】【空欄】
装飾品 【修練者ノ称号】【TEC+10】スキル【繊細】
メイン武器 【未装備】スキル【空欄】【空欄】
サブ武器 【未装備】スキル【空欄】【空欄】
クラス専用スキル
【我が工房】・【達人の心得】・【創作者】
スキル
【ビルド】・【毒耐性(中)】・【盲聾耐性(大)】・【麻痺耐性(大)】・【作成の極致】・【リサイクル】・【鑑定】・【採掘Ⅶ】・【採取Ⅵ】・【釣りⅣ】
【我が工房】
自身の工房内で作った物の品質を向上させる。
【達人の心得】
制作途中、クリティカルを発生させやすくする。
【創作者】
制作系スキルの効果を上昇させる。
【ビルド】
全制作系スキルを総括した物。(作成・錬金・建築・錬成・金属加工・木材加工……etc)
【作成の極致】
作ったものに隠しステータスを付与する。
【リサイクル】
余剰分素材を一つにまとめる。
【鑑定】
物の情報を得る。




