第三十四話
「さあ、どーでしょう?」
いや知らねえよ。という一言を寸前で飲み込んだ。そういう雰囲気ではなかったから。それと、普通にピンチだったから。
背後から手を伸ばして来るスケルトン。これ一つ一つに当たり判定があるため、骨と骨の間は空振り判定だ。しっかり狙わなければならない。まあ、と言っても、
「頭蓋骨は通り抜けねえよなァ!」
パァァンッ! という二発の弾丸が頭蓋骨に突き刺さる寸前、何かが光り、頭蓋骨が銀に輝く。おっと? これは……
「なんっだこれ!? カーンだって! 弾丸がカーンッ! って弾かれちまったんだが!?」
「あー、それ、後ろにいるあの魔女みたいなやつのせいだよ! 味方……じゃなかった。敵のモンスターのDEFを上昇させるのが青い帽子を被ったやつで、赤い帽子を被ってるほうはSTRを上げるやつ!」
「はあ!? めんどっ!」
先にそっちを片付けようと思い、銃口をそちらに向ける。しかし、左から先ほどのスケルトン、背後から黒いスライムが襲ってきたため、諦めて黒龍をそちらに向ける。やはり、カーンッ! と小気味いい音を響かせながら弾丸を弾き飛ばす。少しイラっと来た。いや、だいぶ。
「……コルネ」
「何ー? 結構こっちもやばいんだけど!」
「ちょっと魔王るわ」
「え? ま、まおる?」
【憤怒】、【任務遂行】、ポーション(十本×4)の力でAGIとSTR、それにDEF、HPを超上昇させる。よし。
ちょっと魔王らしく行くか。
「来いよ」
『『『ウオオオオオッ!!』』』『『『キュエエエエエッ!!』』』『『『フォオオオオオッ!!』』』
迫りくる大量のモンスター相手に俺は駆け出す。今の俺ならば、多少の攻撃で死ぬことはない。
まず、軽くジャンプし、さっきから俺の邪魔をしてきやがるスケルトンの頭蓋骨を握り潰す。外部の力は弾くが、内部に強くかけられた力は弾くも何も無いようだ。
スライム……メタルスライムが飛びかかって来る。が、右下に上手く潜り、真上に弾き飛ばす。そして、打ち上げられた球状のメタルスライムを、ボレーシュートの要領でモンスターの大群に蹴り放つ。これだけで二割ほど減った。これでDEFバフの魔女が死んだようだ。それを見て、右腕の黒龍を前方に向け、数発撃ち放つ。
「【ピンポイントアタック】付きでなァ!」
急所を撃ち抜くスキルを使い、幾匹もを葬る。やはりまだ多いが、今の状態で走りまくれば攻撃が当たることはそうそうない。だが、それを見た何匹かのモンスターは俺の動きを止めにかかる。
「糸に、粘液、石の罠に、呪いに麻痺……無駄だァッ!」
『!?』
「えっ、いや、触れた瞬間に弾き飛ばすとか、それはダメだと思う」
「これはスキルだぞォ!?」
先程、蜘蛛の糸とスライムの粘液を弾き飛ばした時に進化した【束縛無効】。これと、【呪法無効】、【麻痺無効】により、先程の攻撃を無効化した。そして、なぜか動揺しているモンスター相手に拳を叩き込む。一瞬で赤い光が溢れ出し、すぐにモンスターは消滅する。
「いや、なんかさ……暴虐の限りを尽くしてるね……。こっちのモンスターも担当してよ」
「無理! マガジン数が残り九だから! 無駄遣いしたくないから肉弾戦しかないんだよ!」
「じゃあ頑張って体張ってこっちの奴倒してよ」
「ぶっ飛ばすぞ!」
「え、いいの!?」
「お前をだ!」
勘違いすんなァ! 俺だって忙しいんだよ! 一瞬視線をコルネの方向に向け、モンスターの方へ向き直す。すると、目の前には巨大な拳が―――
ドゴオンッ!!
「がはっ……! ……ちゃんっと呼気も漏れるんだなァ……!」
一撃でかなり持っていかれたが、すぐさま回復する。爆発的な上昇を見せたAGIによって、回復量が上がっているのだ。さすこん。
「オラァ! とっととくたばれやァ!!」
「君、自分が人間だと思ってる? 普通、オーガと殴り合う人いないんだけど。顔面からドゴオンッ! って聞こえるんだけど」
「だったら俺が一人目だ! 確かに痛いが、どうせ治るもんに気は使えねえ!」
「さいですか」
呆れたような目を向けて来るコルネを無視すると、殴り合っていたオーガがついに倒れた。そうか、この鬼みたいなやつはオーガというのか。
「あらたか片付いたな……あとは黒龍だけでいけるか。にしても、第四ウェーブとは違いすぎねえ? というより、第一からのやつ全部持ってきました感があるんだが……」
「じゃあこれが最後かな? というか、そうじゃないとこっちも残弾がヤバイ……。私超人的な反射神経とか持ってないから普通に死ぬよ?」
「ポーションいる? ステータス爆上がりの」
「爆上がってもなお倒されるのがオチでしょ」
「そいつは残念」
それから約十分ほど戦い続け、俺のポーション効果が切れる頃に戦闘が終わった。大量の経験値とゴールドが手に入る。ここめっちゃいいじゃん。周回に向いてるよ。
「あ! 宝箱出たぁ!」
「おっ、ちゃんと二つあるんだな。よかったよかった」
「ね、開いてもいい!?」
「どーぞ」
「やったー!」
ノリノリで宝箱を空けるコルネ。あちらの箱に入っていたのは装備だった。全体的に紺色でまとめてある、夜空のような装備だ。綺麗だな。
装備……というか、『夜空シリーズ』の解説を見てみると、ある装備を手に入れると、これがユニークに昇華するらしい。珍しいんじゃねえのかな。
「あー、やっぱりユニークじゃないね。でも! めっちゃ可愛くない!?」
「うん。めっちゃ可愛い。特にその金色の部分とか可愛いな。いいじゃん。さっきまでの殺伐とした装備じゃなくて」
「殺伐としたとかいうな。でも、こういう装備あるんだねー、このゲーム! 最高かも!」
「確かにこのゲーム、装備の作りこみとかデザインがいいよな。分かるわぁ~」
「分かるでしょ!? うんうん……あ、そっちの宝箱って何が入ってるの?」
「こっちは……予想が付くな」
開くと、やはり巻物が入っていた。なんとなく予想通りだ。まあ、二個は想定外だが。だってこいつの装備、スナイパー専用なんだもん。というか俺装備いらねえし。
「んー? スクロールじゃん」
「スクロール? ってなんだ?」
「それそれ。その巻物のことだよ。スキルが刻まれた巻物のことはスクロールって言うんだよ?」
「へぇ。じゃあ、スキルショップに置いてあるようなのも、全部がスクロールなのか?」
「うん」
スクロールを手に取り、開いてみる。まずは左の方から。
「ああ、これが言ってたやつか。【衝撃緩和】。これで多少なりとも防御力が上がればいいんだが……」
【衝撃緩和】
物理ダメージ3%カット。※一定の条件を満たすとスキルが進化します。
「ダメージカット3%って役に立つのか? 3%だぞ?」
「うーん。普通のプレイヤーはダメージカットのスキルをいくつか取ってダメージ減らすからなぁ……むしろ、今まで一つも取ってない人がいたことに驚きだよ」
「そこまで言う?」
「え、だって普通の人はステータスの割り振りをDEFとHPに偏らせるからね」
「マジで?」
「マジでー」
どうやら、HPやDEFを上げて弾丸に当たっても絶えられるようにするプレイヤーが多いようだ。確かにその割り振りだったら俺の【不絶の混沌】も活かせるな。まあ、俺はもはや当たらないようにしてるんだけど。
「もう一つのスキルは? 二個あるでしょ?」
「ああ、こっちは……」
右の方を開いてみると、そちらのスキルは、【幽玄】と言うようだった。
【幽玄】
対象から攻撃を受けた際、確率20%で対象のSTRを10%低下させる。
『スキルの統合を行います。スキル【夢幻】とスキル【幽玄】を贄とし、スキル【邪淵の災呪】を創造しました』
「「えっ」」
突如として行われたスキルの統合。結構有用そうだった【夢幻】が消えたのだが、大丈夫なんだろうな? と、少し不安になる俺だった。




