第三十三話
「【災獄旧海】“海”」
俺は一言呟いた。今回選んだのは、“海”の方だ。なんとなく、波よりもいいかな、と思って。
というか、火災旋風はイメージしやすいのに、こっちは波、海、だぜ? 嘗めてるよな。
まあ、災厄シリーズの一つだ。期待しておこう……そんな甘い考えだった。
ウォンッ
「…………え?」
突如として、目の前のモンスターとカナデが消えた。同時に。
ダメージエフェクトが出ておらず、カナデも同時に消えたことから、転移系統だろうとコルネは推測を立てる。そしてそれは半分正しかった。
フォンッ
「っ! こえええええっ!! 我ながらこえええええ!!」
「あっ、おかえりー。どうしたの? 何があったの!?」
「いやー。海だった! ちゃんと災厄で!」
「???」
軽く頭を振ったカナデは、数秒前の記憶を振り返っていた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「うおっ! なんだここ……空!?」
転移されると、眼下には地面があり、俺は浮いているということが分かった。これが……旧き世界か?
空が赤く染まっており、俺の頭上には雲が渦巻いている。ビル群は倒壊し、俺の周りを漂っている。荒れた岩肌とそこに立つモンスターたちがこちらを眺めている。まるで地球の成れの果てのようだ。終末の光景。
感覚的に、MPを使えば何か起きそう、と思ったので大地に向けてMPを使う。いや、MPを使うってなんだ?
地面から赤い亀裂が走り、モンスターの周囲から水が立ち昇る。マンホールから水が溢れた時のあれみたい。ボアーってやつ。
ドゴゴゴゴゴッ! というとてつもない音を響かせながら、この世界が丸ごと沈む。まるで海のようだ。ああ、だから海か。
そして、俺の周囲に漂っていたビル群(の残骸)が次々とモンスターに落ち、モンスターたちに莫大なダメージを与えた。いや、水が無ければダメージ上がったんじゃ? と思ったが、スキルだからそんなもんか、と納得する。
全員が死んだ頃、瓦礫が降り注ぐ中俺も転送される。やはり、そういうスキルだったか―――
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「というわけだ。いやいや、高火力なんてもんじゃねえな。転移式広範囲殲滅スキル。領○展開状態だったよ」
「あー、領域○開かぁ……。ちょっと想像つくかもしれない」
「だろう? 一回喰らってみるか? 俺がマジで魔王になるけど」
「遠慮しとく!」
軽口をたたき合いながら、残ったやつらや新たに出てきたやつらの殲滅を始める。だって特に話すことなかったし。残りのやつらは普通に戦った。やっぱり頭へのダメージが一番高いな。
というか、やっぱ感じる。手数の少なさを。特に俺とコルネだとハンドガンとスナイパーライフルだから、殲滅力が足りない。今回はギリギリ殲滅が間に合ったが、次くらいは間に合わないかもしれない。何だこの偏ったパーティー。
攻撃力上げれねえかなー、と考えていると、あるスキル達を思い出す。初期に手に入れた災厄だ。いつまでも使えるスキルだからな。忘れちゃダメだった。
「あっ、忘れてたわ。このスキル。【天災への反抗】!」
「んー? なにそれ」
「自分の敵の数×1%ステータスアップ。この流れだったら……そうだな。200%くらい伸びるんじゃねえの?」
「おー! これって私にも効果ある?」
「んー、そりゃあるだろ。基本的にこういうスキルってパーティーメンバーに効果あるし。あ、待って。【災厄伝播】」
「忘れすぎじゃない?」
「新スキルにテンション上がりすぎてた」
【災獄旧海】にテンション爆上がりしてたせいで、基礎的なスキルを使うのを忘れていた。もっと簡単に攻略できたかもな。うっかりうっかり。ゲームに慣れてないところが出てきた。
「さっ、第五ウェーブだ。気合入れていくぞ!」
「おー!」
右手の黒龍から五発の弾丸を撃ち放つと、STR74の弾丸が宙を駆ける。しかし、ステータスが上がり、数が増えた大量のモンスターをさばくのはかなりきつかった。なので、銃のみに頼らない。というか、残弾がヤバイ。ブラックホールに使いすぎた。流石に消費量が無視できないレベル。
あえてそこにいた巨大な蜘蛛に突っ込む。現在のSTRは計100で、AGIは153。流石強化200%と二倍だな。瞬間移動の如く速度で肉薄した俺は、脚を地に叩きつける。普通に蜘蛛は潰れた。ちょっと罪悪感がある。
それを見た別の蜘蛛とスライムが俺を『束縛』しにかかる。が、STR100もあればそこそこ速く離脱できる。粘液も糸も即座に破壊した。
今度は上から何か落ちて来る。見てみると、大きめの岩石だった。疑似的な隕石だ。慌てて飛び退くが、そのうちの二つが直撃。半分ほど削られたが、【不絶の混沌】でどうとでもなる。今度は、降り注ぐ岩石を足場として空中にいる鳥のようなモンスターを空中かかと落としで潰す。空中機動は大変だからな。逆にありがたいわ。
にしても、硬い。どのモンスターも共通して硬い。
いや、違うな。俺のSTRが足りていないのだ。流石に生身だと連続殴打くらいじゃないと銃器には追い付けないしな……。
「チッ、拳も脚も銃も、どれも一撃で死なねえのマジでムカつく! 新しいスキル取ってりゃよかったなァ! ウラァッ!」
「なんかカナデ君って、戦闘になったら性格変わるよねー。隠しきれてないよ」
「……そうだな。落ち着くわ。というかなんで隠してたのバレてんだよ」
「うちの学校にそういう人がいるからね。分かるんだよ。体育祭とか文化祭とかで、一度盛り上がったらキャラが変わる人。けど、いつもは大人しいんだよね。まあ、ところどころ隠し切れない狂気が漏れてるんだけど」
「いや、聞くだけでやべえなそいつ」
「君のことだけどね」
「えっ」
ふふっ、と笑うコルネと目が合い、思わず頬が引き攣る。嘘だろ? と。グオァーや、ウオオオオオッ! というモンスターの鳴き声や俺の黒龍、コルネのM24E1 ESRの銃声が響く喧しい空間で、その悪戯っぽい声が鮮明に響いた。
「さあ、どーでしょう?」
すみません。一時期FGOACをしてた時に彼女に惚れたんです。ビーストⅥ/Sの宝具、『今は旧き辺獄の底』に。ってか、あいつ可愛―――




