27話 魔法学校アリスデリカ
お久しぶりです。vurebisです。新章突入でございます!!!
書いている間に世間がどエライことになっていますね…
のんびり更新ですが見てくださる方が一人でもいる限り頑張ります。
是非応援お願いしますね!!
海。
キラキラと日差しを反射するどこまでも青い水面と、散りばめられた白波とが美しいコントラストを描く。
しばらく見ていると
「ずっとこの景色が続いてるみたい」
そう思えてくる。
海沿いのひたすらに長い一本道を駆け抜ける魔法車。グレンデルはその窓から顔を出しポツっと呟いた。
「海なんて初めて見たわ!こんなに大きいのね。やっぱり外の世界を知って正解ね」
「と、飛ばされないでね?」
グレンデルの頭の上に乗るロアは潮風に飛ばされないようグレンデルの髪を掴んで感動に浸っている。グレンデルの肩に乗りそれを見るロコはオロオロと風になびくロアの様子を見ている。
「この海は星海って言ってアリスデリカの周りをぐるっと囲む海だ。ここで採れる魚が美味いらしいな。ぞろぞろ着くから準備始めてくれ
海の反射が眩しいのか目を細めながら運転席に座るサリスが促す。
「はーい!ベルコちゃん楽しみだね!アリスデリカ!!」
「どこが楽しみだってのよ。あんたほんとに私の立場分かってるのかしら」
車内で器用にコートを羽織り、ワクワクといった様子のリューシュと初めての地で、しかも不自由の身。楽しむ余裕なんてないといった様子のベルコ。
「準備万端。すごくたのしみ」
グレンデルもコートを羽織り杖も握りいつでも出れる。
「よし。アリスデリカに入る。魔法を学ぶ都市。いいことあるといいな」
魔法車は大きな門をくぐりアリスデリカに入る。門番に止められ入場許可を取ると目の前に三つの城にも見える巨大な建物が見えてくる。真ん中にそびえる城がメインの学舎らしい。その両脇に建つ二本の塔は実習塔と呼ばれる実技演習を中心としたものらしい。
「大きい。それに周りの人、みんなここの学生?」
歩く人は皆同じ制服を纏い膝まであるコートに袖を通している。見たところ学生だがここまで多い人が同じ服を着ると壮観だ。
「相変わらず堅苦しい服だねぇ。これじゃあ個性が見られないよ~」
「あんたの個性が強すぎんのよ」
リューシュは魔法車とすれ違う生徒を見るなり溜息。ベルコは緊張こそしているもののそれなりに落ち着いているようだ。
一方グレンデルは窓の外の景色を見るのに忙しいのか「おぉ~」と声を漏らし会話など耳に入ってない様子。
「さあ着いたぞ降りてくれ」
魔法車は先程の学舎から少し離れたところで止まった。
「ここからは歩きだ。まずは学舎に入ってグレンデルの入学手続きだな。リューシュ達は暇だったら宿の確保を頼んでもいいか」
「まっかせてよ‼ベルコちゃんも行くよね?行こう!」
「はいはい。わかったから手を繋ぐのははやめなさい」
「私たちも連れて行きなさーい!ほら、ロコも行くわよ」
意気揚々と進むリューシュに連れられるベルコ。ロアはそれについて行くようにロコの腕を引っ張る。
「そんなに引っ張らなくても自分で飛べるよぉ…」
学舎の両開きの扉を開け中に入ると目の前に受け付け、道は左右に分かれ魔法の習熟度に合わせた教室につながっているようだ。ここからでは奥までは覗けそうにない。
「すごい。中身、全部木で出来てる」
グレンデルよりはるかに高い天井は木製のシャンデリアで照らされ優しい明りを零している。
「こんにちは。ようこそアリスデリカ魔法学校へ。本日はどのようなご用件でしょうか。こちらへどうぞ」
受付の男性が声をかけて窓口まで促す。それに従いサリスとグレンデルは前へ進む。
「こいつを入学させたくてな。席は空いてるだろうか」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
男性は名簿を取り出しペラペラとめくる。
「大丈夫そうです。お名前は」
「グレンデルです」
「グレンデルさんですねかしこまりました。このあとお時間はありますか」
「えっと…」
グレンデルはサリスの顔を見上げる。
「あぁ、構わない。魔力テストだろ?」
「えぇ。お話が早くて助かります。ではそのままお待ちを」
受付はスタスタとどこかの教室に向け歩き出した。そのまま二階まで上がり見えなくなる。
「魔力テスト?ドクター、今から何するの?」
受付から離れ椅子に腰掛ける二人。これから何が起こるのかグレンデルにはさっぱりわからない。
「簡単な検査って感じだ。どのくらい魔法を使えてどのくらい適性があるか見るだけだよ」
サリスは背もたれいっぱいにもたれ心配いらないさとくつろぐ。
「全力で良いんだよね?」
「あぁ。かましてやれ」
グレンデルは頷き床に届かない足をプラプラ振って時間を潰した。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
「あ、受付の人。ドクター寝てるみたいだから私だけでいいですか」
「構いませんよ」
駆け足できた受付と、首を上に向け座ったまま寝ているサリス。運転で疲れたのかな。とグレンデルは寝かしたままにしておくのだった。
誘導されるままついて行った部屋は大きな広間になっており他の廊下の内装とは全く違った見た目をしている。
「広い。それにちょっと雰囲気違う」
「はい。ここは魔法演習室。ちょっとやそっとの魔法じゃあびくともしません」
そんな質素なイメージの部屋には一人女性が立っていた。
「あなたが、グレンデルさん?」
金髪を1つに結い、黒縁の眼鏡をかけ、きっちりとしたタキシードを着ている。身長はサリスほどあり、グレンデルが今まであった女性の中では一番背が高い。といった印象。
「はい。グレンデルです」
かっこいい、と一眼見て感じた。リューシュやベルコもかっこいいと思うが、それとはまた違う上品なかっこよさがある。
「思ったよりも小さい子ね。私はレイモンド・ヨハンソン。レイでもヨハンでも好きによんで下さい。本来なら専門の係のものが魔力テストを行うのですが、不在なので代わりに、アリスデリカ魔法学校で“音と魔法“と言う授業をしています私が見させてもらいます」
「よ、よろしくお願いします」
軽くお辞儀をしたレイモンドは同じくお辞儀をしたグレンデルと対峙する。
受付の男性がその間に入り説明をする。
「これからグレンデルさんには魔法を詠唱してもらいます。なんでも構いません。自分の力を存分に奮って下さい」
「わ、わかりました」
「期待しているわよ。可愛い魔法使いさん」
グレンデルは誰かに見せるために魔法を使ったことはないからか、緊張が止まらない。だがサリスから全力を出せと言われた。
「やれるだけ、頑張り、ます」
グレンデルはそっと目を閉じ集中する。腰にさした杖を右手で持ち、ゆっくり前方に向ける。左手も添える様に突き出す。
なんの魔法にしよう。最近覚えたフナブの魔法?それとも慣れたフレイの魔法?
全力で出せるのはフレイの魔法。よし、フレイおじさんの魔法にしよう。
「おじさん、力を貸して『フレイ・ジャグル』!!」
突き出した杖から火の粉が上がる。次第に杖先が赤く灯り、熱を帯びる。出来上がった火の玉は十数個に拡散し、演習室の壁に当たり弾けた。壁は傷一つつく様子はなくそそり立つのみだったが放たれた熱は確かにここにいる三人の肌を撫でた。
「ほう。フレイ様の魔法を。それにかなり精度がいいわ」
腕を組んで見ていたレイモンドは素直に驚いている。
「それがあなたの全力かしら。その年齢にしてはとてもいい魔法を使うわね」
自分の魔法を褒められ少し照れるグレンデル。しかし全力ではなかった。
「もうちょっとできます。少し待ってもらえたら」
髪飾りを外しながらグレンデルは答える。
「それは楽しみね。いくらでも待つわ」
髪飾りの魔石を見つめギュッと握る手に力を込める。
「火の精霊さん、また力貸してね」
フレンデルが呟くと、ふわっと火の粉が体を包む。その火の粉は体に当たるが熱くない。優しく穏やかにグレンデルに力を与える。
舞い上がった火の粉は髪飾りの中心、赤い魔石へと吸い込まれていく。やがて全てを吸い込み切ると小さく赤色の光を帯びる。
レイモンドは今、目の前で何が起こっているのか、これから何が起こるのか、予想はできる。がまさかと信じない自分もいた。こんな小さな子がここまで魔法に長けるとは想像もつかないからだ。
握り締めた魔石が光り始めたことを確認したグレンデルはすぐさま魔法の詠唱する。
握った魔石を天井に向ける。
「『フレイ・ジャグル』!」
すると魔石から大量の火の玉が勢いよく飛び出す。天井に届きそうになった時、火の玉はゆっくりと降下を始める。すかさずグレンデルは振り上げた杖を思い切り振り下ろし次の魔法を詠唱。
「『フレイ・スピア』!」
降下をする火球は高速で回転をし、鋭い炎の槍となり、そのまま床に勢いよく叩きつけられて散る。
「ふぅ。これが、私の全力、です」
フナリスの町でも放った大技を披露した。えへへ。と少し恥ずかしがってレイモンドから目線を逸らす。
「あなた、その魔法どこで覚えたのかしら。それに初心者じゃないわね?」
予想したことが起こったとはいえ驚きは隠せない。それに確認しないといけないこともできた。
「私、魔法覚えたてです。まだフレイおじさんの魔法と、フナブおじいちゃんのしか使えない、です」
モジモジと答える目の前の子供はとんでもない素質を持った子であると確信を持った。
「セリック、あなたは今日何も見ていません。グレンデルという、ごく普通の少女の入学手続きをしただけです。いいですね」
セリックと呼ばれた受付の男は背筋を伸ばし頷く。
どうやら普通ではないことが起こっている様だ。全く話がわからないグレンデルだがそんな雰囲気は感じ取れた。
「そして、グレンデルさん」
グレンデルの方に向き直り、コホンと咳払いをし
「入学をしたら、必ず私の教室に入る様に申請をしてください。申請が通る様にこちらで手配します」
何を言っているかわからない。グレンデルは疑問だらけだった。
「なんでですか?それに何も見ていないって」
レイモンドとセリックを交互に見て問う。
「このことは信頼できる人だけに話して下さい。もし居なければ、私のところに来て下さい。グレンデルさん、あなたはこのまま普通に入学すると命を狙われるかもしれません」
レイモンドは静かに告げた。
「え?」
予想もしてなかった言葉にグレンデルは言葉を失った。




