15話 異変との短期決戦
「さて、腹ごしらえも終わったし情報の交換だ。」
モコシュを一番に食べ終わったサリスは全員が食べ終わるのを待って本題に入る。
「ドクター。私食べ終わってない。」
1人まだ半分程しか食べてないグレンデルは抗議する。
「お前待ってたら日が暮れちまうよ。それに二つ目なんだろ?ゆっくり食べてていいから話だけ聞いてな?」
「分かった。」
納得のいかない様子でまたモコシュを一口。何度食べても飽きないのか「むふ〜。」と幸せそうにまた食べ始める。
「さて、こっちは『西の教会』に行ってきた。あそこはもうダメだ。既にでかい二足歩行の化物が居着いて敵の手中になっている。」
先程見た光景を思い出し苦い表情を浮かべるサリス。
「ありゃりゃ。ブードゥー教の本拠地が落ちちゃってるのか〜・・・そりゃ混乱も生じる訳だね〜!」
「街で何かあったのか?」
「教会の人間は大混乱。皆疑心暗鬼になっちゃって大変な感じだよ〜!でも街の人はいつも通りの生活をしてるんだ!これっておかしいよねぇ〜??おかしいよ!!」
簡単に収穫を伝え合うサリスとリューシュ。
「確かにな。周りの人間もブードゥー教徒ではあるが教会関係者だけってのはおかしな話だ。」
サリスは手を顎に当て思考顔。
グレンデルはモコシュをモグモグと噛みながら浮かんだ疑問を投げかける。
「なんで教会の人達の中で疑心暗鬼なの?普通なら、街の人みんな疑ってもいいと思う。」
「確かにな。何か教会の人間を確実に疑う根拠でもあるのか・・・」
「それについては僕が話そう。さっき見た二足歩行の化物。首元をよく見るとブードゥー教徒の証である首飾りをしていたんだ。しかも関係者である妖精を象ったやつ。」
アベンチュリンは冷静に光景を思い出し、根拠を告げた。
「って事は・・・教会の人が化物になった事を知ってるのは同じ関係者だけで、他の人たちは全く知らないって事か!」
思考がまとまったサリスはアベンチュリンの肩を叩き「お手柄だな」と笑う。
「でもでもサリス君?もうこれ以上手がかりないよ〜??黒幕には程遠い気がするんだけど〜・・・」
困った様にアハハと苦笑いするリューシュ。しかしサリスはサリスなりの答えの出し方を導き出していた。
「それについては問題ない。『西の教会』にいる化物、あいつを倒す。そしたら手がかりが出てくるかも知れん。」
「サリス・・・君はちょっと強引過ぎないか?」
頭に手を当てるアベンチュリンを横目にサリスは丁度モコシュを食べ終わったグレンデルの頭にポンポンと手を置く。
「良いんだよこれくらいが。だろ?グレンデル!」
「うん。ドクターのやり方は間違ってないと思うよ?」
キョトンとした表情のグレンデルを見て微笑むサリスはそのまま立ち上がり言う。
「さぁ、化物退治だ。この街を荒らす奴の尻尾掴もうぜ。」
「どうでもいいけど〜さっきのグレンデルちゃんとサリス君、ちょっと親子みたいだったね〜??」
リューシュはニヤニヤとサリスを見ながら支度をしていた。
◇
「ここが『西の教会』。真っ白だね。」
「あぁ、中はかなりえげつないけどな。気分悪くなったら教会から出るんだぞ。」
「分かった。」
西の教会を前に四人は少し作戦会議。
「短期決戦で行こうと思う。各々が好き放題魔法出したら最悪味方に当たる可能性もある。だから一方方向からデカイのを御見舞してやろうと思うんだがどうだ?」
「早い方が疲れないからいいね〜!!私は何でも賛成だよ〜!」
操る魔法が比較的柔軟なリューシュは右手を挙げる。
「あぁ、僕も賛成だ。長引くとより不利になりそうだからね。」
グレンデルはコクンと頷く。
こうして教会の扉の前に来た四人はそれぞれの武器を構える。
「よし、入る前に全員に魔法を唱えておこうと思う。リューシュ。」
「了解〜!『ウイン・ソール』!!」
リューシュが唱えると同時、四人の周りを風が吹き続ける。
「突入だ!!」
勢いよく開け放たれた扉の音に主祭壇の前に居座る化物は敏感に反応する。
「喰らえ!『フレイ・ジャグル』!!」
正面から突っ切るサリスは右手を化物に向け無数の炎の球をを弾丸のように打ち込む。
「『フレイ・ランス』っ!」
教会に入るなり右側に進んだグレンデルは化物に杖を向け、杖の先から出てきた炎の槍を飛ばし横っ腹を突いた。
「なかなか大きい化物だねぇ〜!!こりゃ怖いや〜『ウイン・ハッシュ』」
高く跳躍したリューシュは細身のナイフを抜き化物に向け振ると鎌鼬が巻き起こり化物の肉を断つ。
「サリス!離れて!!うぉぉぉりゃ!!『テラ・スパイク』!!」
教会の扉の前から動いていないアベンチュリンは背負った不動槌を振りかぶり地面に叩きつける。不動槌に刻まれた彫刻が青色に輝く。
すると教会の床の部分が割れ、割れ目から巨大な岩の棘が出現する。そのまま化物に直進する棘は化物の足元からも出現し足を深く抉り取る。
「ーーーウガゥゥァウァァァァ!!?」
グレンデル達の姿を確認した化物は威嚇するも気付いた時には満身創痍。抵抗も出来ないままに魔法の餌食になった。
「ふぅ。あれだけ打ち込めば十分だろ。」
傷口から出た血の匂いとそれが炎によって焦がされる匂いが交じる中でサリスは一息。
少し離れたところからグレンデルが杖を持ったまま駆け寄ってきた。
「ドクター。私槍飛ばせれたっ!見ててくれた?」
「あぁ、見てた。上達速ぇなホント。」
サリスはグレンデルの頭を撫でる。
「サリス君、グレンデルちゃんお疲れ様〜!!」
「僕の魔法も鈍ってなくて良かった。」
跳躍した後天井の梁に着地していたリューシュはピョンと飛び降りる。
背後からはアベンチュリンの声。
「よし、全員無事だな。本題はここからだ。化物の死体を調べよう。グレンデルとアベンチュリンは入口で待機していてくれ。」
「了解した。異常があれば知らせよう。」
「気をつけてねドクター。」
手を挙げヒラヒラと振り返事をしたサリスは先程まで人を喰らっていた化物に近づくと片手剣を構えつつ周囲を調べ始めた。
「損傷が激しいな・・・ちとやりすぎたかな。」
無残に焼かれ、切り刻まれた死体はもはや生前の姿形を留めていない。
「サリス君は手加減を知らないからね〜??」
リューシュが挑発的にサリスを茶化す。
「うっせ。何事にも全力なんだよ俺は。」
とサリスが言い返したその時、化物がうめき声をあげブルブルと震えだした。
「グググォォアォォオォ・・・」
サリスはすぐさまその場を飛び退く。
「おいおい、コイツまだ動くのか!」
「サリス君!!大丈夫だよ〜私には聞こえないよ〜この化物の心音は聞こえない。少し様子がおかしいだけだよ〜」
「グルァァァ・・・」
死体は再び声を上げる。
「少し苦しんでるみたいだね〜??もうちょっと様子を見てみようよ〜」
リューシュが離れた位置から様子見をしていると、化物はガクガクと震えだした。すると、どす黒い煙が化物を包み出す。
しばらくして煙が晴れると、毛むくじゃらだった化物は中年ほどの人間へと姿を変えた。その人間は
「ふ、なぶ、様ぁ、、申し訳、ございま、、」
と言い、事切れた。
見開かれた瞳には涙を浮かべ、辛うじて残った右手で首飾りを握っていた。
「聞いたかリューシュ。」
「しっかり聞いてたよ〜。勤勉なブードゥー教徒の最後の言葉。」
リューシュはちらりとサリスの方を向く。
「サリス君?これは〜流石に・・・」
「許せないな」
「許せないね」
一人のブードゥー教徒の死を前に二人の瞳には明らかな敵意が浮かんでいた。




