11話 知らない土地では友人を頼る
炎神フレイから髪飾りを貰ったグレンデル達は魔法車をひたすら西に走らせていた。
舗装された道路を走る魔法車の窓から見える景色は茶色の地面がむき出しの荒野。遠くの辺りに森が茂っているのが見て取れる。とても良い景色とは言えない。時々すれ違う魔法車はサリスが運転している物と比べると小さく、少し古い感じがするものばかりだった。
「ところでサリス君〜!なんでフナリスなの!?なんでなんで??魔法都市は他にもたくさんあるよね!?たくさんあるよ!!」
「リューシュ、耳元で叫ぶなよ・・・フナリスはそこそこ近くにあって守護神に用事があるんだよ・・・」
「・・・ん?まだ、運転中・・・」
狭い車内でリューシュがはしゃぎ、それに付き合わされるサリス長時間の運転とリューシュのハイテンションな会話で疲れている様子。
グレンデルはスヤスヤと本日5度目の睡眠を開始しようとしたところでサリスが口を開く。
「起きたなグレンデル、寝る前に少し事前情報だ。目的地フナリスの守護神はフナブ。治癒の神だ。まぁ、もっとも今回は神にはあまり用事は無いんだがな・・・」
「え。恩恵、貰えないの??それに守護神っておじさん(フレイ)と同じって事?」
神に用事が無いと聞き使える恩恵がが増えないと考えたグレンデルは少し不服と同時に知っている神との共通点に少し親近感が湧いた。
「恩恵が貰えそうなら貰うさ。多いに越したことはない。ただフナブは気難しいんだよ・・・ちなみに守護神になっている神は何処かに腰を据えたいって考えた奴が街を守護する代わりにそこに居座るって決めた結果の存在だ。基本的に人間と共存するような物好きって事だな。」
「気難しい・・・恩恵貰えるくらい仲良くなれるかな?」
恩恵を貰う=神と仲良くなると言う認識のグレンデルは気難しい性格の神に少し不安そうになる。
「私はフナブ様苦手だよ〜!!堅い人は私には合わないねっ!!」
バッサリと神が苦手と言い放ったリューシュは「出来れば会いたくないね〜!」と付け加えていた。恐らく彼女の性格上全く合わないのだろう。
「このまま1時間ほど魔法車を走らせたら着くだろう。もうしばらくドライブだな。」
「は〜い!」
「・・・おやすみなさい。」
車内には元気に返事をしたリューシュの声だけが響いた。
変わらず荒野の中を走った魔法車の先に高層の建物が乱立する都市が見えてくる。この距離からでもかなり発達した都市だという事が見て取れる。
「さぁ、二人とも。フナリスが見えてきたぞ準備しとけよ。」
運転しっぱなしのサリスは欠伸をしながらさらに魔法車を進ませる。
「グレンデルちゃん!!起きて起きて〜!そろそろ着くよ〜??」
「ぅ・・・もうちょっと寝たい。」
「じゃあ着いたらお姫様抱っこして運んであげるね〜!?」
「起きた。ドクター、準備も出来た。」
大都市でお姫様抱っこをされると考えると眠気も吹き飛ぶ。リューシュが「そんなに嫌なの〜?」と少しいじけているが、見なかった事にして外出用のフード付きのマントを羽織る。髪飾りも付けたし、杖もある。準備はバッチリ。
魔法車は無事フナリスに到着した。
「建物すごく大きい・・・」
目もくらむ様な高層の建物が乱立する街には網目のように道路が敷かれ、そこを大勢の人々と魔法車が行き交う。荒野にこの街があるのと人口が多い為か「少しホコリっぽい。」というのがグレンデルの率直な感想だった。
わぁ、と見上げるグレンデルはそびえ立つ建物に興味津々。
「おい、早く歩け〜」
「グレンデルちゃんのんびり歩くんだね!?迷子になっちゃうよ〜!?」
サリスとリューシュの後ろをてくてく歩くグレンデルはとてもスローペースで歩いていた。このままでは人混みに飲まれる心配があったのでリューシュが手を繋いで歩くことになった。抱っこを断られたのは言うまでもない。
「さて、早速神殿に向かいたいところだが、とりあえず今日の宿の確保が最優先だな。俺が適当に決めても構わんか?」
辺りに宿が無いか見回しつつサリスは二人に確認を取る。
「私良いところ泊まりたい〜!!ご飯が美味しい宿ね!!」
「ドクター、私はフカフカのベットがあれば大丈夫。」
サリスの予想通り注文の多い女性陣であった。しかし彼の中では今日の宿は既に決まっていた。
しばらく歩いてサリスが見つけた宿は他の建物と比べてかなり背の低い建物だった。外装は石造りのかなり凝った作りになっている。
「あったあった。宿はここにしよう。」
「うん。分かった。」
「はーい!!」
二人の承諾を聞き流しサリスがドアを開けると
「わぁ・・・すごい。」
「綺麗だ!!これは期待出来そうだねぇ〜!!」
グレンデルは息を飲み、リューシュは満足といった表情だ。
内装はリューシュの豪邸と負けず劣らずの豪華さだった。外装と違い木で出来た壁や床は木目が目に優しい。飾られた装飾品はどれをとっても一流の物だろう。ほんのり香る木の匂いに心も休まる様な気もする。
「いらっしゃいませ。ようこそ『妖精の泊り木』へ・・・ってサリス!?お前だよな!?リューシュまで!?」
フロントの奥から姿を見せたサリスと同い年程の店員の男性は客がサリスとリューシュだと分かると驚きの声を上げた。
「よう。アベンチュリン。久々だな。」
サリスはニヤニヤと旧友に挨拶。
「アベンチュリン君の宿屋だったのか〜!!!君らしくてとてもいい内装だよっ!!」
リューシュはこの宿が気に入ったのか再会を喜んでいる。
「こんな街に何しに来たんだ?お前が来るってことはいい予感はあまりしないんだが・・・」
アベンチュリンと呼ばれたスーツ姿で高身長の男はサリスのニヤニヤ顔に整った顔を引き攣り笑顔で歪ませるのであった。
一通り旅の目的を聞いたアベンチュリン。
「なるほど。グレンデル様の記憶を戻す旅か・・・それに付いていくサリスとリューシュね。」
腕を組み状況を理解したアベンチュリン。
「そういう事だ。って事でしばらく泊めてくれ。」
「それなら問題ない。部屋なら空いている。好きに使ってくれ。」
旧友頼みではあるがなんとか宿を手に入れ胸をなで下ろすサリス。
快諾してくれたアベンチュリンに「ねぇ」とグレンデルが声をかける。
「私だけ様付けないで。なんか嫌。」
「いや、しかしグレンデル様。貴女は私のお客人。呼び捨てなどと言う不躾なことは出来ません故。」
胸に手を当て一礼しながら丁寧に断るアベンチュリン。見かねたリューシュはグレンデルに近寄る。
「あ〜。グレンデルちゃん?多分このモードに入ったアベンチュリン君には何言っても無駄だね!!完全にお客さん扱いだもんね!!」
グレンデルは少しうつむき
「うん、恥ずかしいのに・・・」
と独り言を言うのだった。
「ではサリスはこの部屋を使ってくれ。」
案内された二階の上級客用の部屋は大きいベットが一際目立つ立派な部屋だった。
「お〜。こんな立派な部屋ありがとうな。」
サリスは率直な感想と礼を述べる。
「旧友の頼みさ。最大級のもてなしをさせてもらうよ。」
そう言ってアベンチュリンは部屋を出る。
「さて、リューシュとグレンデル様はこちらを。」
女性陣が案内された隣の部屋はサリスが案内された部屋と変わらない内装だがベットが二つあった。
「ベットふかふか、よく寝れそう。」
「これはすごいねぇ〜!!スイートルームってやつかな??」
大きいベットをバフバフと叩き寝心地を確かめるグレンデルと目を輝かせているリューシュ。
「気に入ってもらって何よりだ。自由に使ってくれ。では僕はほかのお客様もいるので失礼するよ。」
アベンチュリンは部屋を出てフロントに戻ったようだ。
「おいリューシュ、グレンデル。」
代わりに部屋に訪れたのはサリスだった。
「サリス君??何の用だい?」
首をかしげたリューシュにサリスが答える。
「フナリスでの行動の確認だ。すぐ終わるよ。」
「ん〜っと、神殿に行くだけじゃなかったっけ!?」
「まぁ、そうなんだが神殿行って何するかは言ってないだろ?」
「そっか〜!!聞いてないね!」
「ドクター、神様に会う以外することあるの?」
二人の会話を聞いていたグレンデルも会話に入る。サリスは頷きつつ話を続ける。
「今回は神にはあまり用事はなくてな。用事があるのは神殿に居る妖精だ。奴らに会いに行く。」
一方疑問だらけのグレンデル。
「どして妖精さんに会いに行くの?」
サリスは苦笑いしつつ
「全部答えるから待ってくれよ・・・妖精に会うのは。」
とここでサリスはグレンデルの髪飾りを指さす。
「そいつの操作をグレンデルにマスターしてもらう為だ。動かせば強い道具も動かないなら意味がないからな。フレイの話通りなら本物の妖精とも同じ点があるはずだ。だから妖精がいるこの街に来たって事だ。」
「なるほど〜!!神に用事がなくて妖精に用事とはなんだかフナブ様に怒られそうだね〜!!」
アハハハと笑いながら話を聞いたリューシュ。
グレンデルは
「ん。分かった。妖精さんに会ってこの子使うんだね。」
ちゃんと理解した様子。
サリスは満足げに頷き
「よし、明日出発だ。しばらくは休んでおいてくれ。俺も運転で疲れちまった」
大きな欠伸をしながら部屋を出ていった。
一方サリスと違い体力が有り余っているグレンデルとリューシュは
「グレンデルちゃん!!せっかくフナリスに来たんだしさ!!街に遊びに行こうよ〜??行くよね!!行かない??」
「うん。一回おっきい建物に入ってみたいっ。あとね、お店とか見てみたい。」
グレンデルも街に繰り出すのは賛成のようだ。
「よーし!!じゃあ、しゅっぱ〜つ!!」
リューシュの元気な掛け声で二人はフナリスの街へ飛び出したのだった。




