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職業:家畜:全年齢版  作者: 秋月心文


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再就職は大変だ

(みち) 貞男(さだお)は、大手企業に就職し、ソフトウェアを開発する仕事をしていたが、36歳になって、それまでの『激務』がたたり、胃や心臓を悪くし何度も入院した。

その結果、今まで通りの『激務』をこなせなくなり「社内で一番残業が少なかった」という理由で、それまで勤めてきた会社をリストラされて失業した。


その後、いくつかの会社に募集してみるも、採用はならなかった。

法律では、1年以上失業している者は『家畜』になる事が義務づけられている。

だから『家畜』になった。


しかし『家畜』がおさめる食肉は、年齢を重ねる毎に下落していくそうだ。


48歳を超えてから『家畜』の収入では、生活費を賄うだけの収入が得られず、貯金をつき崩す日々。


そうして、36歳から14年間を家畜で過ごし、50歳になった。

今の貯金残高では、あと3年暮らせるかどうかだろう。


そこで、職探しを始めた。


だが、会社では、自分が自ら仕事をするというより、仕事が出来るヤツを、やる気にさせて、仕事を手伝ってもらうという感じの仕事をしてる方が多かった。


それで、全ての仕事が回っていた。


それに甘んじていたせいか、自分には、人より『優れた技術』など持っていなかったし、『資格』とかも取ってこなかった。


『家畜』になってからも『ストレス』が加わると『肉質』が悪くなるので、難しい勉強とか、難しい訓練とかしないで下さいねと言われてきた事もあり、それに甘えていた自分がいた事も確かなのだが…。


加えて、結局、50歳になった今でも、童貞で、独身のままだ。

この年齢で、妻子がいないと、就職は難しいと聞いた事がある。


名前が『道 貞男』なので、子供の頃『やーい、ドウテイ男』と散々バカにされてきたが、実際、そうなってしまった。


結局、いくつかの会社に募集してみるも、採用はならなかった。


  『・・・が出来ます』というけど、それを証明出来るものあるの?。


  14年も『家畜』してきたヤツに仕事なんて出来るのか?


  妻子もいないんじゃカンタンに辞められるだろうから、責任ある仕事とか任せられないよ


  そもそも前の会社だって、リストラされたんだろう。使えるのか?


  プログラムが組めますって言われても『資格』がないんじゃ…。


  50歳を過ぎて硬くなった頭に、プログラマーの仕事なんて任せられないよ。


…とまぁ、散々な事を言われ続けてきた。

 

何か『資格』でも取ってくれば良かったと、何度も思う。

なんの証明もない以上、結局、年齢とか、リストラされるような奴と問題視されてしまい、なかなかやとってもらえない。


国は、家畜になれば、何歳でもやっていけると甘い展望を持っていたようだが、国は、現実が見えていない。



最近、TVでもSNSで、頻繁に流れている有名なCMを思い出した。

『高額買取』『秘密厳守』『無料送迎』『家畜』契約なら『アシュビー』…という内容を、耳に残りすぎる音楽にのせて、ちまたで一番有名と言われるアイドルが躍るCMだ。

コミカルだけどカッコイイと評判のダンスと、音楽が、妙に記憶に残っている。


『高額買取』って言ってるし、ここで『家畜』契約したら、もっと稼げたりするんだろうか?。

『秘密厳守』って言っていたし、話だけでも聞いてみようか…と思った。


日曜日だけど『アシュビー』に電話をかけたら、普通に繋がった。

『家畜』契約の事を考えている旨を言うと、お迎えの車を寄こすという。


数分後…


『大富豪』しか乗らないような超高級車が家の前にやって来た。

車から 俺と同じくらいの年代の執事みたいな人が降りて来て、丁寧に出迎えてくれた。


『秘密厳守』という割に、やたらと目立つ送迎だな…と思った。


『アシュビー』では、通常の入口の他に、VIP専用入口みたいのが用意されていた。

 …というか、これ以外の出入り口がないようにも思えた。


普通の治療に来た人は、どこから入るのだろう?。


車を降りると、足元から、汚れ一つないレッドカーペットが敷かれていた。

正直、やりすぎだろ…と思ったが、外資系の会社だし、価値観が違うのかもしれないと思った。


そうして、VIPルームのような立派な応接室に通された。


話聞くだけだというのに、美味しいお茶や、美味しいケーキが出された。

お茶も ケーキも とても高級そうな感じのものだったが「おかわり」して構いませんよ…と言われた。

甘いものが大好きなので、ケーキもお茶も、いくつもおかわりしてしまった。


そこで、説明を受けてみると、

「お客様、騙されていますよ。

 家畜の食肉が歳を取る毎に下落していくなんて嘘です。当社なら、そんな事ありません。」


「ホントですか。」


「えぇ『一生』働けます。保証しますよ。では、折角ですので、ここで、契約してしまいましょう」


「え?、今?」

ちょっと、早すぎないか?。


「ちょうど、今日まで、キャンペーン期間中でして、

 今、契約すれば、一生食肉の買い取り価格が15%プラスされるんです。

 明日にならば、キャンペーンが終わってしまうので、今が、おススメです。」


それなら、まぁ、今日、契約しちゃうのが良いか…と思った。

分厚い、契約書に、あちこちサインしていく。

オッサンにとっては、字が小さすぎて読めない。


前に契約した時は、こんなに多くなかったんだけど。と言うと…。


「前の契約を解約する手続きとか、キャンペーン参加の申し込みとかありますので、

 どうしても、多くなってしまうのです。ご容赦ください。」

 

サインをしながら、少しづつ契約書に目を通した。

見知らぬ文字を使う言語で書かれた部分もあった。


「知らない言語で書かれて読めない部分があるんだけど?」


「外国の方が契約する事もあるので複数の言語で書かれているんです。」


「なるほど‥!?」

と…納得を装うけど、疑念が膨れあがっていく。

おかしい…。何か、おかしい。


よくわからないけど、直観的に何か変だと感じた。


『贅肉』だけを扱うハズなのに、

契約書には、ところどころ『臓器』とか『骨』とか『皮膚』とか、『贅肉』と関係ない単語が目に付く。


契約を終え、施術室に移動する際に、俺は、その病院から逃げ出した。


そして、オンラインゲームのオフ会で知り合った、国立病院にいる知人の医師「大横おおよこ りょう」の元を訪ね、これまでの事を話した。


「それは、お前、騙されてるよ。」


「どっちに?」


「もちろん『アシュビー』にだ…。」


医師(大横 亮)の紹介で、弁護士事務所に相談に行った。

そして、この件の問題を裁判にもちこむ話になった。

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