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大勢の前で婚約破棄を言い渡されましたが、それは幸せへの道の第一歩でした  作者: 明衣令央


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第46話・ウクブレスト王宮の地下で


 ディスタルの正式な婚約者となり、ウクブレスト王宮へと出入りするようになったある日、スザンヌは王宮の地下に足を向けた。


 王宮の地下は、牢屋になっていた。


 この場所には、いろいろな囚人が捕らえられていたのだろう。


 そして、牢屋から出られずに死んでしまった者、出られたとしても処刑されてしまった者ばかりで、この王宮の地下にある牢屋には、禍々しい残留思念が溢れていた。




「ここに、置いておきましょう」




 スザンヌはこの禍々しい場所に、自分の血を滴らせた黒い魔石を置いた。


 魔石は手のひらサイズで、スザンヌと強く繋がっていた。


 彼女はこの牢屋に残る禍々しい思念を、己の魔力に変換しようと考えていた。


 ここで蓄えた魔力はいずれ、このウクブレストを自分のものにする時に役に立つだろう。




「ディスタル王子は、信用ならないものね」




 ディスタルがスザンヌを利用していたように、スザンヌもディスタルを利用していた。




 いずれ、あの男は自分を裏切るかもしれない――。




 そう考えたスザンヌは、その時に備えて、ここに力を溜めておいたのだ。


 それが今、スザンヌの役に立っていた。


 肉体を失ったスザンヌの思念は、ウクブレストの地下牢に置かれた、魔石へと飛んだ。


 肉体は失ったが、スザンヌの思念は魔石に溶け込み、溜め込んでいた魔力を得た。


 スザンヌがこんな方法で力を取り戻したなど、誰も気づかないだろう。


 もっと力を蓄えて、そして今度こそあの女とあの男を――アリアとリカルドを八つ裂きにしてやろう……スザンヌはそう思った。






 スザンヌはウクブレスト王宮の地下牢の魔石から、状況を見極めていた。


 どうやらステファンたちフレルデント兵が、王宮の一室に閉じ込めていた、ウクブレスト王と王妃、そしてターニアを助け出したようだ。


 フレルデント兵に、今の自分の事がばれたらお終いだ。


 スザンヌはフレルデント兵がウクブレストから立ち去るのを、王宮の地下で静かに待った。


 そしてフレルデント兵が去った後に、静かに瘴気を出し始めた。




 スザンヌは瘴気でウクブレストの国民を操り、生気を吸い取り、自分の力をさらに強めようとしていた。


 誰かがスザンヌの企みに気づき、止めようとするかもしれない。


 だが、それは彼女にとってピンチではなく、チャンスだった。


 自分を止めようと近づいてくる誰かの体を奪う事ができるからだ。


 今のスザンヌは、魔石の中で生きている。


 ここは安全で魔法も使えるが、自らの意思で動く事はできなかった。


 自由に動ける体が欲しい、とスザンヌは思った。


 そして、それはウクブレストの王妃か、娘のターニアが望ましかったが、ウクブレスト王でもいいとスザンヌは思った。


 近づいて、この魔石に触れてくれさえすれば、体を乗っ取る事ができる。




 早く誰か、ここまでおいで。




 だが、瘴気を発し始めた事に気づいたウクブレスト王は、こちらには近寄らず、離れたところから、瘴気を抑える事にしたらしかった。


 ウクブレスト王に瘴気を抑えられたスザンヌは、苛立ちながらも静かにチャンスを待つ事にした。


 彼女は、ウクブレスト王の魔力が強くとも、いずれ力尽き、誰かがここを訪れるしかないという事を、理解していたのだ。



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