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枯淡  作者: 水原伊織


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16/40

16.支払いは織、片付けは裕介――二人の形

駅前のディスカウントストアで、食料品をまとめて買い込んだ。


織は、まさに雑食と言っていい。

好き嫌いがほとんどなく、目についたものを次々とカゴに入れていく。


アルコール類に、つまみとお菓子。気づけばカゴはいっぱいだ。


それでも、選ぶのに迷う気配はまるでない。

せっかちな性格というわけでもないのに。


――マイバスケット、持ってくればよかったな。


裕介はそう思った。

一度あれの便利さを知ると、袋詰めが途端に面倒になる。


レジで織が会計をしている間に、裕介が袋詰めを済ませる。

ちょうど三袋に収まった。


織のところに来ているとき、支払いをするのはいつも織だった。

裕介は、その代わりというわけでもないが、部屋の掃除をしたり、頼まれた買い物をしたりしている。


この半年で、自然とそういう役割分担になった。


もし織が裕介の“愛人”だとするなら、本来は裕介が面倒を見るべきなのだろう。

だが、二人の間に流れる空気は、そういう種類のものではなかった。


毎週のように出かけているのに、財布の中身がほとんど減らない。


そのせいか、彩も詮索してこない。

女遊びをするなら、金はかかるものだ。


裕介は、そこに少しだけ救われていた。


----


織のマンションに戻ると、織がシャワーを浴びているあいだに、裕介は買ってきたものを手際よく片づけた。


時刻は午後九時半を回っている。


冷蔵庫には缶のアルコールや炭酸水を詰め込み、ウィスキーや焼酎のボトルはダイニングテーブルへ。

乾き物はリビングのテーブルに置いておく。


そこまで済ませてから、裕介もシャワーを浴びに向かった。


----


入れ違いにバスルームから出てきた織は、湯気の余韻をまとったままリビングへ向かった。

ハンガーに掛けてある着る毛布を、いつものように無造作に肩へと羽織る。


そのまま和室へ歩き、押し入れのタンスを開ける。

中から、黒いショーツを一枚取り出した。


よく身につけている、軽い素材のものだ。締め付けが少なく、家で過ごすには楽なのだ。


織にとって、部屋での服装は整えるというより、邪魔にならないものを選ぶ、に近い。

どうせすぐに着替えるのだから、といった気楽さがある。

その自然体のまま、織はまたリビングへ戻っていった。


----


ダイニングに行き、冷蔵庫から、缶ビールを取り出す。

リビングのソファに座り、乾き物をつまみながら、ビールを喉に流し込む。


部屋の中は、1日中エアコンをつけていて、冬でも常に暖かい。

それこそ、着る毛布1枚でも過ごせる。


石油ストーブは、灯油が面倒なので、置かない。

織は、家にいる時は、大体、裸に近い格好をしている。


ズボラとか、だらしない、と思われても仕方が無いくらいに、織は、緩いのが好きなのだ。

だから、男にはたいした事を求めないから、男からも、自分に期待しないで欲しいと織は思っていた。


会社員時代は、男には不自由しなかった。

その代わりに、飽きるのも早かった。

と、いうよりは、男の方からいつも離れていく。


織は、男に誘われれば寝るだけだった。

無論、誰でもいい、という訳では無いが。


男は、皆、一度織と寝ると、何故か自分の女という位置づけになるらしい。


男にセックス以外の事など、織は特別に、求めていない。


もとより、男に寄りかかって生きる気など無かったのだ。

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