16.支払いは織、片付けは裕介――二人の形
駅前のディスカウントストアで、食料品をまとめて買い込んだ。
織は、まさに雑食と言っていい。
好き嫌いがほとんどなく、目についたものを次々とカゴに入れていく。
アルコール類に、つまみとお菓子。気づけばカゴはいっぱいだ。
それでも、選ぶのに迷う気配はまるでない。
せっかちな性格というわけでもないのに。
――マイバスケット、持ってくればよかったな。
裕介はそう思った。
一度あれの便利さを知ると、袋詰めが途端に面倒になる。
レジで織が会計をしている間に、裕介が袋詰めを済ませる。
ちょうど三袋に収まった。
織のところに来ているとき、支払いをするのはいつも織だった。
裕介は、その代わりというわけでもないが、部屋の掃除をしたり、頼まれた買い物をしたりしている。
この半年で、自然とそういう役割分担になった。
もし織が裕介の“愛人”だとするなら、本来は裕介が面倒を見るべきなのだろう。
だが、二人の間に流れる空気は、そういう種類のものではなかった。
毎週のように出かけているのに、財布の中身がほとんど減らない。
そのせいか、彩も詮索してこない。
女遊びをするなら、金はかかるものだ。
裕介は、そこに少しだけ救われていた。
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織のマンションに戻ると、織がシャワーを浴びているあいだに、裕介は買ってきたものを手際よく片づけた。
時刻は午後九時半を回っている。
冷蔵庫には缶のアルコールや炭酸水を詰め込み、ウィスキーや焼酎のボトルはダイニングテーブルへ。
乾き物はリビングのテーブルに置いておく。
そこまで済ませてから、裕介もシャワーを浴びに向かった。
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入れ違いにバスルームから出てきた織は、湯気の余韻をまとったままリビングへ向かった。
ハンガーに掛けてある着る毛布を、いつものように無造作に肩へと羽織る。
そのまま和室へ歩き、押し入れのタンスを開ける。
中から、黒いショーツを一枚取り出した。
よく身につけている、軽い素材のものだ。締め付けが少なく、家で過ごすには楽なのだ。
織にとって、部屋での服装は整えるというより、邪魔にならないものを選ぶ、に近い。
どうせすぐに着替えるのだから、といった気楽さがある。
その自然体のまま、織はまたリビングへ戻っていった。
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ダイニングに行き、冷蔵庫から、缶ビールを取り出す。
リビングのソファに座り、乾き物をつまみながら、ビールを喉に流し込む。
部屋の中は、1日中エアコンをつけていて、冬でも常に暖かい。
それこそ、着る毛布1枚でも過ごせる。
石油ストーブは、灯油が面倒なので、置かない。
織は、家にいる時は、大体、裸に近い格好をしている。
ズボラとか、だらしない、と思われても仕方が無いくらいに、織は、緩いのが好きなのだ。
だから、男にはたいした事を求めないから、男からも、自分に期待しないで欲しいと織は思っていた。
会社員時代は、男には不自由しなかった。
その代わりに、飽きるのも早かった。
と、いうよりは、男の方からいつも離れていく。
織は、男に誘われれば寝るだけだった。
無論、誰でもいい、という訳では無いが。
男は、皆、一度織と寝ると、何故か自分の女という位置づけになるらしい。
男にセックス以外の事など、織は特別に、求めていない。
もとより、男に寄りかかって生きる気など無かったのだ。




