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スライムには負けるけど魔王には勝ちます  作者: すふぃ~だ


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蘇る魂の道しるべ(1/22号)

 しばらくして(おさ)が、幹部とおぼしき中年のエルフを2人従えて『庭園』に入ってきた。





 真ん中の席にエルフの(おさ)が、ミール達の正面の位置に座る。


 そして腕を組んでミール達を睨みつけている中年のエルフは、右側の席にドカッと座った。


 もう一人、髪の長いエルフは少しミールの事を見つめて・・・クンクンと近づいてきてミールの匂いを嗅いだ。

 そして直ぐに、『ふむ』と意味ありげな言葉を残して左側の席に座った。



 あれ??

 もしかして俺って臭うのかな。



 確かにスワップの街を出発してから一度もお風呂に入れてない。

 しかし、ククラーソン村でルルの介護をしている時に、タオルで身体は拭いたし、『香水鏡』も使用したので大丈夫かと思っていたが・・・



 唐突のカミングアウトになってしまい申し訳ないのだが、結構冒険者は臭い。見た目以上に臭いのだ。



 皆さんはアニメやゲームなどで、冒険者に触れ、姿をイメージしているかと思う。

 どんな服装をしているだろうか。

 作品によっては上半身裸でズボンのみの男がいたり、ビキニのような防具を身につけている女性もいたりする。

 かくいう自分もそういった冒険者を登場させているが・・・



 想像してほしい。



 命のやり取りをする戦場で、貴方だったらどんな装備を身につけるだろうか。


 最近はクマによる被害も多くでているので、少しは想像しやすいと思う。

 体長1メートルであっても、噛む力は相当なモノだ。

 それが2メートルを越える大人のクマに噛まれようものなら、簡単に頭蓋骨は粉々になる。

 そして、その巨体で時速40〜60キロで向かってくるのだ。

 


 本当に薄着で向かって行けますか?

 


 モンスターの中には、炎ブレスを吐く奴もいれば、毒ブレスを吐くやつもいる。

 そんなブレスを素肌で喰らったら、あっという間に火傷、浸食されるだろう。


 又、森の中では頻繁に雑草たちが皮膚を傷つけてくるし、もし攻撃をくらって砂利じゃりのような地面に吹き飛ばされたら、皮膚はただれ、全身血まみれだろう。


 ましてや、この世界はゲームの世界ではない。

 貴方の世界と同じように死んだら終わり。やり直しなどきかない世界だ。



 もう一度言おう。

 本当に裸や薄着で向かっていけますか?



 貴方達も車に乗る時にシートベルトをするだろう。

 自転車・・・は、まだまだしてる人は少ないが、バイクはヘルメットをするだろう。

 それは何故?


 ルールで決まってるからだ!・・・と言う人もいるだろうが、もしルールで決まってなくても、多分、自分はシートベルトをする。ヘルメットを被る。

 それは、こんなんで命を守れるなら安いものだからだ。



 ご存知の方も多いだろうが、シートベルトやヘルメットをした場合と、しない場合では、致死率に非常に大きな差が出る。


 実際に自分は若い時に、バイクの運転中に、信号無視のタクシーに跳ね飛ばされた経験がある。

 その時、頭からアスファルトに叩きつけられたのだが、ヘルメットをしていたおかげで助かった。

 もし、あの時、ヘルメットをしてなかったら、今の自分はいないだろう。

 そういった経験をしているからこそ、自分は必ずシートベルトをするようにしている。



 冒険者の装備も似たようなモノ。



 装備を身につけた方が圧倒的に致死率は下がる。

 もし2メートルを越えるクマに噛みつかれても、兜を装備していれば、頭蓋骨を守る事が出来る。

 太い腕から繰り出される鋭い爪も、鎧やショルダーガードなどを身につけていれば助かる事もあるだろう。


 そして戦いを経験するにつれて、これを装備してたおかげで助かった!・・・てな体験は増えていき、身につける装備も増えていく。


 なので、ほとんどの冒険者達は、いくつかの防具を重ねて身につけているのが普通だ。

 身軽さを優先しているリリフでさえ、服の下には鎖帷子(くさりかたびら)を着込んでいる。


 だがしかし、貴方の世界でもシートベルトをするのを嫌がったり、風を感じたいからとヘルメットをするのを嫌がる人がいるように、こちらの世界でも、複数の装備を身につけるのを嫌がる冒険者も多い。


 それらを否定はしない。

 装備を複数身につけると、俊敏性は確実に落ちるし、攻撃の邪魔にもなるからだ。

 今は火力重視のPTが多いので、防御力は捨てて、その分、俊敏性や回避能力を上げ、とにかく攻撃力に全振り!・・・といった、アジリティ型も増えている。

 なので、裸や水着のような軽装備のみで戦っている冒険者も確かに増加傾向にあるのだが・・・やはり全体的に見れば少数派。


 ほとんどの冒険者はいくつかの防具を重ねて身につけているのが現状だ。



 へー。

 やっぱり備えは大切なんだね。

 僕も、私も、後悔してからじゃ遅いし、シートベルトやヘルメットをする事にするよ!・・・と思った貴方。



 違う違う。

 本題はここからだ。



 つまり、ほとんどの冒険者は装備をいくつか重ねて身につけており、それが攻撃を受け止める盾役であれば、尚更、装備は重量を増していき、そして『臭さ』も増していく。



 剣道の防具などを身につけた事がある方なら分かるかと思うが、鎧などはとても重いし暑い。

 それを身につけて命を落とすかもしれない現場で戦うのだ。

 まるで、ぬいぐるみの着ぐるみを着ているかのような暑さで、大量の汗をかくのは必然であろう。

 その汗で服や下着はびしょびしょ。蒸れて雑菌が繁殖し、酸っぱい匂いが湧いてくる。


 そして道中は、モンスターの返り血、体液なども大量に浴びるのだ。



 臭くないわけないのである。



 貴方達の世界でも、車や高級ブランド品を一人で大量に所持している人がいるだろう。

 しかし、多くの人は、車は持っていても一台、ブランド品も数点だけのはずだ。


 同じように、鎧などはかなり高額な為、複数所持している者は少ない。

 銀ランククラスになると収入は倍増するので、遠征毎に鎧や防具を変えている冒険者も多いが、普通の赤や紫ランク程度では、同じ鎧をずっと使い続けているのが一般的。


 アニメでも、キャラクターは同じ服や装備を身につけているだろう。

 あれは、登場の度に衣装が替わると視聴者が混乱する、いちいち変えていたら作画が大変になりコストもかかる・・・といった大人の事情も多少あるが、何より街から街へと転々とする冒険者は多くの荷物を持てない。

 故に、荷物は最小限にする必要がある。


 つまり、何回も同じ防具や服を身につけて、戦いに向かう。

 その度に汗やモンスターの血、体液が防具に染み込んでいく。



 もう一度言おう。

 臭くないわけないのである。



 街ですれ違っただけで、『あ、このPTは遠征帰りか』と分かってしまうほど、冒険者と悪臭は切っても切れない関係なのだ。



 だがしかし、先程ミールが言っていたように『香水鏡』という魔道具が開発されてから状況は一変する。

 この魔道具は手鏡のような形をしており、魔力を注ぐと鏡部分からビームが発射され、そのビームに触れた部分の匂いを消してくれるのだ。

 香水鏡によってはストロベリーやシトラス、フローラルなど、様々な香りに対応しており、冒険者の心強い味方となっている。


 ミールはあまり香水を付けるのは好まないので、使っているのは無臭タイプ。

 なので、匂いそのものが消えていると思っていたが、考えが甘かったようだ。


 確かに『香水鏡』を使えば匂いは消えるが、汚れそのものが無くなる訳ではない。

 例えば、汗の染み込んだシャツに『香水鏡』を使えば、臭いは消えるが、汗の結晶はシャツに付いたまま。

 皮膚のカスや血のりなども、そのまま服に付着したままなのだ。

 おそらく、そういった付着物に、このエルフは反応したのであろう。



 そうだよな。エルフにとっては別種族なわけだし・・・

 俗に言う『人間臭い』ってヤツだろう。



 さっきの泉で身を清めといた方が良かったか・・・

 ミールは頭をポリポリといて、人知れず反省する。



『では、まずはどうやってこの里に来ることが出来たのか。それからお聞かせ願いますかな?里の者は皆、不安に感じております。もしかしたら今後、多数の人間や悪魔種が攻めてくるのではないかと』


 おさを始め、幹部、そして周りのエルフ達、全員が厳しい目でミールを見つめる。


『不安に感じられるのはもっともです。突然皆様の平穏を乱してしまい、改めて謝罪致します。今回、僕らがこの里に来れたのは、このハーフエルフのお母さん。つまり、以前この里に住んでいた女性の日記を見ることが出来たからです。その日記にはこう書かれていました。『清らかな清流にオルランの花が咲く時。泉の中央、聖木に門が現われる。全ての癒やしの根源の筆頭たる器に誓うべし。我が願うは共存。武を捨て知を取り、尊重の苗を育てに来た者なり』と。この暗号めいた言葉を解読し、私達はここへ辿り着いたということです』


 ザワザワザワ・・・


 傍聴席に座っているエルフ達からざわめきが起こる。


『え?今のどういう意味?・・・』

『あれだけの情報でここまで来たというのか?』

『嘘よ。人間の言うことを信じちゃダメ・・・』


 ヒソヒソと意見交換する傍聴席のエルフ達。



『嘘だ!!今ので何が分かるのだ?!他にも何か隠しているに違いないっ!俺は騙されないぞっ!!』



 長の右側に座っていた中年のエルフが怒鳴り声を上げる。


『確かに信じられない気持ちも分かります。ですので、まず、このハーフエルフの話を聞いてもらえないでしょうか?なぜ、このように里に来ようと思ったのか。それを聞いてから判断して頂けると幸いです』


 ミールの落ち着いた対応に、怒鳴り声を上げた中年のエルフも、ムスッとしながらも椅子に座った。


「ではフローリアさん。エルフの皆さんに、何故ここに来ようと思ったのかを、正直に話してみてください」

「は、はいっ・・・」


 フローリアは若干緊張した表情を浮かべて立ち上がる。

 エルフの人達から罵声が飛び、ざわめきが起こっているので、あまり歓迎されてないと感じたからだった。


 フローリアは首にかけた母のネックレスを握りしめながら話し出す。


  続く

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