蘇る魂の道しるべ(1/16号)
フローリアはより一層、ミールの手をギュッと握り、力強く答える。
そして真っ白な光の中に歩みを進めるのであった。
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しばらく真っ白な光の中を進む2人。
当然、方向感覚なども全くなく、真っ直ぐ進めているかも不明だ。
しかし、不安などは一切浮かんでこない、不思議な感覚だった。
5分くらい経っただろうか。
段々と白い光は薄れ、次第に風景がハッキリと見えるようになってきた。
まるで、のどかな田舎の風景といった感じだろうか。
茅葺きの屋根の家、小さな田園、小川には水車が回り、空には満天の星々。
ミール達はしばらく、その光景を呆然と眺めていた。
エルフの里は隔絶された世界と聞いていたので、もっと不思議な空間というか、生活感がない雰囲気というか。
そんなイメージを持っていたが、目の前に広がっている風景は、自分達の世界と変わりはない。
おそらく、風も吹けば雨も降る。多分四季さえもあるだろう。
植物も昆虫も動物も存在する、多様性溢れる世界のようだった。
「!!!!!」
おそらく門番と思われるエルフが、あからさまにビックリした感じで、椅子から転げ落ちている。
まるで怪物か、お化けを見たような感じだ。
ミールはニッコリと笑顔を返すが・・・
『ぎゃああああぁあぁあ!』
悲鳴を上げながら里の奥へ走って行った。
まあ、しょうがないよな・・・
ミールは逃げる門番を苦笑いを浮かべながら見送る。
毎日見張りをしているのか、年に3回しかない『双月月蝕』の日だけ見張りをしているのかは分からないが、完全に油断していた門番さん。
今まで誰一人、外部からやってきた人間はいないと思われるので、彼が門番として仕事をした初めてのエルフになるのであろう。
ミール達は敢えて歩みを止めて、里の入り口で待つことにした。
ズカズカと里の奥へと歩いていくよりかは、入り口で待機していた方が敵意はないと伝わりやすいと考えたからだ。
やがて、真っ暗だった里のあちこちに魔法の灯りがつきはじめ、奥からエルフの里の長とおぼしき人物を先頭に、成人のエルフ達が群れをなして近づいてくる。
その表情は、警戒、驚き、怯え、嫌悪などが入り交じった表情に見えた。
『この里にどんなご用かな?人間の方々よ』
当然、エルフ語で話しかけてきているのだが、いちいちエルフ語で記載してから、人間の言葉に通訳するのもめんどう・・・失礼。
効率が悪いので、そこは省かせて頂く。
『こんばんは。エルフの里の住人達。突然貴方達の日常を乱してしまい申し訳ございません。僕はミールっていいます』
ミールがエルフ語を話したことにより、少しだけ安堵の表情を見せるエルフの里の人々。
『実はこちらの女性。見ての通り、人間種とエルフの混血。下界ではハーフエルフとよばれておりますが、こちらのお母さん、つまり、以前この里から出たエルフの女性の事で伺わせて頂きました』
エルフの長は少し眉間にシワを寄せて、フローリアをジッと見る。
そして驚いたように呟いた。
『なんと・・・その子はエゼノアの子か・・・』
エルフの長はしばらく目を閉じて、空を見上げる。
昔の事を思い出しているようにも感じた。
『事情は分かりました。では落ち着いた場所で話を聞くとしましょう・・・ザッツ』
『はいっ』
『至急、皆を庭園に集めておくれ。子供達はミレーバの家に集めよう。なるべく全員参加するように』
『はいっ。分かりました!』
そう言うと、ザッツと呼ばれた者は、里の奥へと走っていく。
『ではお客人。どうぞこちらへ』
長は手をかざし、ゆっくりと奥へと歩いて行く。
フローリアは言葉がわからないので、緊張した面持ちでエルフ達を見ていた。
「では、フローリアさん。エルフの皆さんが話を聞いてくれるそうなので、ついていきましょう」
ミールは優しく語りかける。
「は、はいっ!」
ミールは肩を貸しながら、長に続いて中央へと歩いて行く。
その後ろを多数のエルフが警戒しながら付いてきているので、ミール達はサンドイッチにされている感じだ。
途中、寝巻き姿のまま、慌てた様子でエルフ達が家から出てくるが、一様にミール達を見て、驚きの表情を浮かべている。
多分、江戸時代の人達が、初めて黒人を見た時のような感じだろう。
子供のエルフなどは好奇心なのか、指を指して近づいてこようとするが、親が必死に止めていた。
長を先頭に前後を警戒したエルフ達に挟まれているので、犯罪者のように見えているのかもしれない。
そしてミールは歩みを進めるにつれて、ある事に気づく。
廃れている・・・
エルフの里は神に近しい場所、エルフ族は神に使える者。
そういったイメージを持っていた。
いや、確かにその雰囲気はある。
里は『のどか』という言葉が最も相応しい感じで、穏やかで、空気が美味しく、一言で言うと心休まる場所といった感じだ。
そして行き交うエルフ達は温厚そうな優しい顔の者が多かった。
だがそれと同時に、明らかに廃墟になっている家や、手入れのされていない雑草だらけの畑がチラホラ見られ、子供の数も少ないように感じられた。
なんとなくだが、緩やかに過疎化への道を進んでいるような感じだった。
しばらく歩くと集会所のような場所に到着する。
この集会所は屋根は無く、植物のツタと、とても透き通った水が張り巡らされており、長が言っていたが『庭園』という名に相応しい感じだった。
真ん中に椅子が6個、円状に置いてあり、その周りを細い水路が囲んでいる。
その外側は一段高くなっており、多数の椅子が置かれているので、観客席のようだった。
おそらく、何かの会議などが開かれた場合、真ん中の席に代表のエルフが座り、議論を重ね、他のエルフは周りに座って傍聴するのであろう。
ミール達は先に中央の席に座らされ、他のエルフの到着を待つ。
傍聴席には次々とエルフ達が席についていく。
時間は深夜なので寝ていた者がほとんど。
寝ぐせが付いていたり、寝巻き姿のまま来ている者も多数いた。
しかし、全員、信じられないモノを見た・・・って感じで中央に座っているミール達を見てヒソヒソと会話を交わしている。
しばらくして長が、幹部とおぼしき中年のエルフを2人従えて『庭園』に入ってきた。
続く




