↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/52

mission1 救援行動

 Now Loading...

 ダウンロード中...100%

 リソースを解放しています...

 シェーダーをコンパイルしています...


 タップして〈開始〉


第一使命 観測開始


mission1 救援行動

…………

 雪原を、銀狼に乗った騎士団の隊列が進んでいる。彼らの先には巨大な尖塔が、オーロラ色に輝き聳えている。真っ黒な海が流れ込む湖の中心、分厚い流氷に守られた大聖軸で、今年も大会合が行われるのだ。


 大会合へ向けて進む騎士団の隊列の中、団長の娘――ノワーレは、愛機である銀狼の背の上からそれを見た。真っ黒い湖から流氷の上へ、おぞましく蠢く黒い塊が乗り上げようとしている。


 ――災厄獣だ。


 厄災の源たる海を制するために突き立つ大聖軸の真下、女神の恩寵たる厚き流氷の上に、人喰いの獣が現れようとしている。


 あの災厄獣が現れれば、大聖軸が危ない。最悪の場合、大会合へ参加する一〇〇名余りが食われてしまう。


「お父様、私が行きます」


 ノワーレは前を行く父へ短く言い、「任せた」の返事と共に、短い黒髪に雪風を受けながら銀狼を走らせた。ノワーレの後ろを彼女の部下たる小隊員三名が、めいめいの銀狼に跨り追う。ノワーレは雪煙を立てながら青き目で災厄獣を見据え、まさに流氷の上に立ち現れんとする獣の足元を、真横から現れた氷の刃が貫いたのを見た。


 ――女神様の氷!


 驚いたノワーレが刃の軌跡を追うと、小柄な少女が災厄獣の足元を一人駆けていた。ノワーレよりやや年下だろう。肩ほどで切り揃えられた黒銀の髪が風に煽られ、真珠のような七色に輝いている。少女は流氷の裂け目を飛び越える間に、手袋も嵌めていない小さな手から氷の槍を生み出し握り締めた。


 手から氷を生み出せる人間? そんなもの、聞いたこともない。しかも、ノワーレより若い少女。聖獣が傍に見えないということは、騎士ですらない。


 流氷の上に一人でいるのは何故だ? 大会合に参加する誰かからはぐれた子供か見習いだろうか。あるいは、考えたくはないが、既に人を食い成り代わった災厄獣か――いや、違う。あの子は災厄獣へ氷の刃を向けている。


 ノワーレが考える間に、少女は槍を災厄獣へ向けて投擲した。冷たく輝く刃が災厄獣を貫き、天を割くような吠え声が上がる。


 災厄獣に攻撃をしているからには、ノワーレと同じ女神の徒、守るべき民だ。


 子供が災厄獣に食われようとしているのなら、それが誰であれ、騎士として命を賭してでも守らねばならない。


「彼女を保護する!」


 ノワーレは吠え、小隊員たちの応《いら》えと共に自身の銀狼の速度を上げた。右腕に着けた礎石指輪《フォンタシオン・バーグ》へ念じると、指輪は剣となりノワーレの右手へ収まった。少女がいる流氷まであと三呼吸ほどか。災厄獣が少女へ向けて曲がりくねった腕をけしかけ、少女が躱そうとし、氷に積もった薄雪に滑って転んだ。だめだ、間に合わない、せめてあの腕を散らせれば時間が稼げる――ノワーレが剣を投擲しようとした瞬間、ノワーレの耳を、脳を、鋭い氷雪のような歌声が揺るがした。


 ――聖歌唱大隊の戦いの聖歌(イム・ド・サマカント)、独唱。


 少年の歌声が流氷を突き動かし、少女と災厄獣の間に氷の壁が突き上がった。一人で流氷を動かすなど、大隊長ですら難しいはずだ。それを少年は一節の独唱でやってのけた。大会合に来ていた立場ある誰かか――とにかく、少女を助ける隙は生まれた。ノワーレは狼を走らせ、少年の独唱が響く中、転んだ少女の腕を掴み自らの狼の上へ引き上げた。


 少女がノワーレの腕の中で目を見開いた。真珠の如き七色に輝く黒銀の目が、驚きに満ちてノワーレを見上げる。


「え、誰!」

「銀狼騎士団第三小隊長、ノワーレ・ルーアルジャン! 話は後だ、あれを退ける!」

「っ、わかった!」


 少女はノワーレの前で狼に跨り直すと、「わたしを支えてて!」と声を張り上げた。


「ぜんぶぶつけて閉じ込める!」

「なんだそれ!」

「たぶん、あの人、流氷立てられる!」


 少女が指差す方へ目を向けると、氷の壁に阻まれもがく災厄獣の向こうから、金の馬に乗った少年がこちらへ駆けてきていた。聖歌唱大隊の白い正装を纏い、聖杖を握っている。女神の加護篤き、厳冬に波打つオーロラ色の長髪。歳はノワーレと同じくらいか。その若さで流氷を一人で動かしたというのか? 一体どれほどの女神の権能を行使できるのか。


「わたしがそれ全部ぶつけてあいつ閉じ込める! 石は君が壊して!」


 流氷で災厄獣を閉じ込めるから、おまえが災厄獣の心臓たる嘆石(ラマンタシオン)を破壊しろ。言われ、ノワーレは判断に迷う。少女の言う通り事が進めば嘆石を壊すのは難しくない。しかし、その作戦は果たして機能するのか?


「それ伝えられるの?!」

「わかんない! でもできる!」


 少女の根拠のない自信にノワーレは眉を寄せた。このまま少女を抱えて離脱した方が安全かもしれない。今の状況であれば、小隊員に任せても大惨事になることはないだろう。しかし、災厄獣はあれ一体だけとは限らない。


「……小隊、両翼から援護!」


 一旦、女神の恩寵たる氷を生み出す少女を信じ、今いる災厄獣を退けよう。少なくともこの子は普通ではない。実際に氷の槍を生み出し災厄獣を傷つけたのだ。そんなことをできる人間など、ノワーレの知る限り存在しない。


「フェリーチェは右翼、ピエールは左翼、ミゲルは彼を守れ!」


 小隊員たちの応《いら》え。ノワーレの背後で二頭の銀狼が左右に散り、一際大きな銀狼に乗った青年がノワーレを追い抜きながら「任された」と金馬の元へ氷を散らし駆けだした。


 気づいた少年が流氷の上に馬を止めた。災厄獣が氷の壁を叩き壊そうとする中、少年の歌声が鋭く響く。再び流氷が立ち上がり、少女が腕を突き出すと、流氷が軋みながら震えた。ノワーレの眼前で巨大な流氷がいくつも轟音を立てて海から浮き上がり、少女が宣言した通り、災厄獣の上へ墜落する。流氷に潰された災厄獣の呻き声は、少年の独唱がかき消した。


「氷じゃ潰しきれない、あいつの石を壊して!」

「わかってる!」


 ノワーレは狼をけしかけ流氷を登った。流氷の下、黒く蠢く影に目を凝らし、右手の礎石剣(ラルム)が求めるまま、災厄獣の心臓たる嘆石(ラマンタシオン)目指して刃を突き立てる。


 刃は滑らかに流氷を貫き、ノワーレの右手に、嘆石が砕け散る感触が伝わった。


 刹那、流氷の隙間から、少女と同じ真珠色の目に見つめられた気がした。


 まさか、下に人が。


 災厄獣が断末魔を上げながら、氷の下で霧散した。積み上がった流氷が崩れ、ノワーレは少女を支えたまま、慌てて剣で流氷を突き崩す。誰もいない。だとしたら、災厄獣の眼差しだろうか。あり得なくはない。災厄獣とは生きている者を真似するものだ。目の前の少女の真似をして人型を取ろうとしたのかもしれない。


 ひとまず、他に巻き込まれた者がいないのならそれでいい。

 

 考えながら、ノワーレは平地を探し流氷の山を駆け降りた。とにかく少女を安全なところへ連れて行かなくてはならない。少女が何者であるにせよ、子供が災厄獣との戦いに巻き込まれたのだ。一刻も早く安全な場所へ連れて行き、親がいるなら探して引き合わせてやらなくては。


「大丈夫? 怪我は?」

「勝った……? よかった……」


 ノワーレが少女を伺うと、ノワーレの腕の中で少女が安心した声を出し、急にぐったりと意識を失った。


「えっ、ちょっと?!」


 ノワーレは慌てて剣を指輪へ戻し、両腕で少女を抱き抱えた。

 そこへ隊員二人が戻ってきて、フェリーチェ、ピエールそれぞれが報告を始めた。


「隊長ー! お疲れ様です、災厄獣の消滅確認しました! さすが我らが小隊長! 最速かつ最強の先鋒隊! その子無事ですか? って、うわっ薄着! 死んじゃう!」

「周辺確認しましたが、他に災厄獣は出てきてないっぽいです……その子、大聖軸に保護してもらった方が良さそうですね」

「うん、お前たちも無事でよかった……この子、何者だ?」


 ノワーレは少女を抱え直し、自身のコートの前をくつろげて少女を包んだ。確かにひどい薄着だ。上着もなく、暖炉の前にでもいるような薄い胴衣姿で、頬は寒さに赤くかじかんでいる。抱えた体はとても軽く華奢で、ノワーレのように戦いに従事するものとは到底思えない。この子はなぜこんなところに一人でいたのか。とにかく今は上着を着せ、冷え切った体を温めて、起きたら温かな茶でも飲ませて安心させてやらなくては。


「お見事です、銀狼のノワーレ」


 そこへ、金馬に乗った少年がミゲルを伴いやってきた。上背のあるノワーレが見上げるほど大柄だが、面立ちは体躯に似合わず柔らかで、オーロラ色の目に穏やかな笑みを浮かべている。


「騎士として当然のこと……あなたは?」

「僕は、歌唱大隊見習いのクラウナー。大聖軸を守ってくれてありがとう。その子、寝かせてあげましょう。大聖軸に部屋を用意します。あなたたちも、怪我などないか診て貰わないと……」


 クラウナーが大聖軸の方を振り返ると、ちょうど、十歳ほどの幼い少女が壮年の男に抱えられやってくるところだった。女神の加護篤きオーロラ色の目と長い髪。真っ白な装束は聖歌唱大隊の正装で、額に金のティアラをつけている。聖歌唱大隊の長にして聖軸筆頭預言士、エヴァ。この世で最も尊き方と、その専任守護騎士だ。


 何故そんな偉い人がこんなところに。ノワーレたちは急いで居住いを正し、銀狼を降りて氷の上に膝をついた。ノワーレは少女を抱えたまま、少女はノワーレの気も知らず眠ったままだ。横目で見たクラウナーは突っ立ったまま、バレた、というように肩をすくめている。


「クラウナー! あなた! 勝手に出て行ったらだめでしょ!」


 喚きながらやってきたエヴァは専任騎士の腕から流氷へ降りると、ノワーレの腕で眠る少女を見て表情を無くした。


「……救世主さま」


 ノワーレの腕の中、少女が寒そうに縮こまり、ノワーレのコートの中へ顔を埋めた。


…………


mission1 完了


報酬を集計しています...


戦闘 勝利S


称号獲得

ノワーレ「民を守る騎士」

クラウナー「歌唱大隊見習い」

謎の少女「救世主?」


mission2へ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。