彼女に残る傷
白魔法 黒魔法 は一蓮托生に時の流れを歩む
屋敷の外は落雷が鳴り響き、その日は大雨で酷く荒れていた。その中では警察のサイレンの音が鳴り響いている。
「さて、どうする…。警察の追撃の手が来ている。しかも司令部との通信が途絶えた。このまま任務続行はよくない、が、」
「"ザ•インパルス"」手始めに屋敷内の全員の脳のシナプスを攻撃、人の思考を阻める。魔法による無差別範囲攻撃。かわすことはできない。これで自分を狙えるものはいない。が設置型の魔法によるトラップ攻撃が続く。
これも全て魔法。
魔法は昔から色々なことに利用されてきた。詠唱をすれば無機物からパンを作れたり、子供たちを喜ばす遊園地まで魔法の難易度はあるが夢のような力を秘めている。が、いつしかそれは悪にもなり得るようになってしまった。人は死に権力を手に入れようと醜く争う。そしてそれらの力を未然に封じ込めるために国家は警察より、より特化した犯罪防止組織を作り出した。
しかし、それらもまた人を殺して押さえ込んでいるだけに過ぎず、やっていることは変わらない。
政府高官の屋敷。
屋敷内の全ての障害を突破。残るはターゲットの暗殺のみ。多少の時間ロスがあったが問題ない。殺したからでも逃げる余地はある。
そして俺はある一室に入った。
「(黒鉄槌)…」目の前でもの静かに男が生き絶えた。それは無慈悲なる一方的な殺し。
それを可能とする黒魔法は人が痛みを感じる隙もなく入り込み命を奪っていく。
「あれ…?なんで泣いているんだろう」普段とやっていることは変わらないのにこの時だけは違った。今感じているのは達成感ではない。
今日でまた一人、事前に犯罪を防ぐことができた。そのはずだ。この人を今自分が止めていなければ、どれだけ多くの人が死んでいたかわからない。が、それは全て上からの情報。本当に当人が悪行を企んでいたかなんてわからない。
俺の心には疑問があった。今、自分自身で殺した相手とは面識があった。それもかなり…。誰かまでは思い出せない。どうしてかこの人が犯罪を犯すなんて考えられなかった。でも上からの命令に従うのが務め。
この仕事は父から受け継ぎ国家のために日々仕えた。先代も遥か昔の祖先もそうしてきた。
この家系に生まれたのだからそれは使命として受け止めるしかない。命令には背けない。
でも今日は違った。
今魔法を発動させた手が震えていた。これは人が罪悪感を感じた時に起こる衝動。
自分の過ちに気づいてしまった。「そうだ、俺は何をしているんだ…この人には」
閉めておいた扉が開いた。
「お父様!?」屋敷内の全員はまだ動けないはずがだった。部屋の扉を豪快に開け、自分の父が今目の前にいる敵に殺された事を知った彼女は復讐に燃えた。
「あなたですかよくも父上を…」
あたり一面は魔力生成された火遁で埋め尽くされその炎はいつもに増して勢いよく燃えていた。
「我が力となり炎よ燃えつくせ―(妖狐炎炎)―」
背後から詠唱とともに豪炎が放たれたが、脅威にはならずこちらも詠唱で打ち消した。そして身体に刻まれた身体的反射により魔法を放ってしまった。
「―(暗黒巨浪)―」
無慈悲なる一撃。放たれた魔力は彼女に迫る。
が、魔法は彼女の身体に当たる直前魔法は停止した。それは停止して見えるが実際は別の魔力により仲裁していた。一瞬だけ掴んだ希望、でも彼女は対抗する余地はなかった。手が震え思い通りに魔法を発動できない。彼女は死を悟った「ごめん、しーくん…。.」
そのその力はだんだん弱くなり彼女に一撃を与えてしまった。
俺が彼女に気づいた時にはもう遅かった。彼女は正面に傷を負っただけでなく身体ば組織の多くが放った魔法によりむしばわれ、足の元形を留められずその場で崩れた。
…!「回復」俺は急いで彼女の手当てをしたが傷口からは血が流れ、身体は崩壊し続けていて止まる気配がしない。
止まれ、止まれ。お願い止まってくれ。頭の中は焦りと彼女のことで精一杯だった。外には警察。サイレンの音がもうすぐ側まで来ていた。でも今はどうでもいい。
今日の任務から全てが間違っていた。俺は彼女の父を殺して、今彼女を殺そうとしている。今俺はこんな悪行をしている事を恨んだ。そして自分が今までなんとも思ってこなかったことに対しても。こんなことになるならしなければ良かった。
彼女にもらった恩を仇として返して自分は何をしているんだ。それはまだ幼かった頃から。
どうして彼女がここにいるかはわからない。身分とか家系なんて知らなかった。でもそんなこと言い訳にはならない。
彼女の出血が止まらない。鼓動が弱まっている。
今、彼女を救えなかったら俺は生きている意味なんてなかった。それだけ大事だった。だから…
「暗黒の覇者よ、今我の全ての魔力を捧げる。身体もそして我が命も…"エンド•イン•アビス"」
黒魔法術式の最大展開。それは人の持てる魔力を超えている。
最大魔力で生命維持を続け、細胞、組織の修復に魔力を注いだ。視界は真っ暗で何も神経で感じなくなっていた。罪悪感以外は。
そして白魔法の攻撃が目の前で突きつけられようが回復は辞めなかった。
「特異国家防衛部隊は政治家の汚職が関与して、罪なき人を殺めたことにより解体された。オマエはもうただの犯罪者にずきない。よってオマエを逮捕する。」
警察が俺の手に強制魔法制止装置(LCC)の手錠をかける。
「待ってくれ、彼女の回復がまだだ。黒魔法では効率が悪い、治せる限界がある。頼む白魔法で…」
目の前に白魔法の流れが感じられる。
「黒魔法使いが人の心配とは…。君は昔から変わらないね。災いの家系とは思えない。
安心してくれ、言われなくてもやっているよ。なにせ私のご主人様なんだから助けない選択肢なんてない。」
俺は安堵したのか全身の力が抜けた。
「よかった、ありがと…」俺は意識が保てなくなりその場に倒れた。黒魔法で再生魔法を使うとは正気とは思えない。攻撃に特化した黒魔法それの最大の弱点とは治癒、再生魔法への侵食。魔法発動者は自らの身体が焼かれて最後には命を落とす。発動させるだけで死に至る可能性が高いのだが、それをよく使って治療したものだ。それに何をしたらそんな魔力を引き出せたのかわからないが魔力酷使の影響か彼の寿命は大幅に削られている。
「白夜さん、容疑者の身柄はどうします?今回は黒魔法使いが相手、対応が求められます。いくらLCCがあるかといって効果はあるのか。なんなら抵抗される前に先手を打つべきかと。」
「その必要はない。各隊員は容疑者を確保して署まで連行。拘束は緩くていい。コイツに抵抗の意思はない」
ひとまずお嬢様の命の別状はない。しばらく安静にしていれば後遺症もないはずだ。だがしかし失ったものが多すぎた。
私が離れた間に奇襲されるとは、、、。しかもアイツにやらせるとは闇にいるやつは性格も悪いらしい。
これからどうするのか、
「お嬢様…。私が今できる最善は間違っているかもしれない。どうかお許しください。」
そして白夜は次の行動に移った。
「わたしは彼に託します」




