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05 気がつくともう一日村に滞在していた私

村の宴の翌日です

 翌朝、私たちはもう1日タリク村に滞在することになりました。


 だって、ニーナさんもプリムもまだ寝てるし。

 ランドさんなんて外で酒場の親父さんと爆睡してるしっ!






 朝起きて一階に降りると誰もいない。酒場で手持ちぶさたに立っていたら、女将さんが苦笑しながら厨房から出てきてランドさんたちのことを教えてくれた。


 午前中は寝てるんじゃないかって思ったから、とりあえずリードさんが起きてくるのを待とうと決めて、女将さんのお手伝いをすることにした。


「あら、面白いわねぇ。そば粉の薄焼きかい?初めて見たよ」


「うふふ。ガレットって言います。私の育った孤児院では小さい子が多かったのでお団子よりもこっちのほうが喜ばれたんです」


 そば粉と水と卵と塩を混ぜたのに溶かしバターを加え半刻ほど寝かせて、鉄鍋で薄く焼く。


「ハムとチーズだけでも美味しいですよ。でも、卵は半熟のが堪らない。そうそう、茹でたいんげんや癖のない茸もいいです」


 そんなことを女将さんに言いながらも、生地の中央にトマトとハム、チーズをのせて卵を割り入れる。

 卵が半熟状になったら火をとめて生地の四辺を折り畳む。


「これで、簡単なサラダと紅茶かカフィでもあれば私は幸せですね」


「へぇー、面白い」


「女将さん味見してみてください」


「いいのかい?」


 女将さんはいそいそとフォークとナイフでガレットを口に運んだ。


「美味しい!塩とチーズだから、確かにいんげんや茸も合いそうだ」


「良かった。熱々が美味しいんです。だから大勢の子供に作るのは大変ですけれど。喜んでくれるもんだから、つい。あ、皮が余ったら野菜やチーズを重ねてオーブンで焼いてもいいです」


 小麦粉でも作れるし、甘くしてもいいですよ。なんて私たちが和気あいあいと朝食をとっていると、階段を降りてくる足音がした。

「眠いーー。あー、あったま痛てぇ……」


 ウェスさんだ。意外。一番はリードさんだと思ってた。


「おや、おはよう」


 女将さんが挨拶すると、ボサボサの頭をかきながらウェスさんが酒場のカウンターの前にくる。

 私たちはカウンターの奥の厨房の作業台で朝ごはんをしていたのだ。


「うぃーす。あれ?何か旨そうな匂いがしますね?」


「おはようございます。ウェスさん。朝ごはん食べますか?」


「ん?おお!?何で、あんたが女将さんと朝飯食ってるんだよ」


 驚くウェスさんに女将さんはいたずらっぽく笑った。


「チェスカちゃんが一番に起きてきてね。朝食の準備も手伝ってくれたのさ。これはチェスカちゃんのところの料理なんだよ」


「へぇ……」


「ガレットっていいます。今から用意しますね」


 私が厨房のかまどのほうに向かおうとすると、もうひとつ声がかかった。


「おはようございます。私の分もお願いしていいですか?」


「あ、リードさんおはようございます」


 よれよれのウェスさんとは違って、リードさんは朝から爽やかだ。


「んだよ?その目は」


 ウェスさんはカウンターにぐたーっと伏せて、じとりと目だけをこっちに向けてくる。


「べっつにーー。ガレット何枚食べれます?」


「いちまい。」


 ……なんか二日酔いっぽいからスープとジュースも用意したげよう。

 次にリードさんを見るとにっこり笑ってくれた。


「私は二枚お願いします」


 二人は相対的だなぁ。私はひとつうなずいてかまどの前に戻る。


「チェスカちゃん飲み物はあたしが準備するよ」


「わぁ。ありがとうございます!だったらーー」


 そうして、私たちは起きてこないランドさんたちを置いて和やかに朝食をとったのだった。






「おはようチェスちゃん」


「おはよぉなのー」


 ニーナさんとプリムが起きてきたのはお昼二刻も回ってからだ。

 ちなみに親父さんは私たちが朝食をとったあとに戻ってきて女将さんに怒られていた。

 親父さんも二日酔いで顔が青かったなぁ。


「おはようございます。頭痛くないですか?」


 笑いながら聞くとニーナさんは苦笑した。


「そこは、ほら。ヒールをこっそりね」


「どーせ今日はもう出発しないでしょ?明日になれば魔力も回復するからぁ」


 うんうんと偉そうにうなずくプリムをウェスさんが小突く。


「ばぁか。お前らのせいでもう一泊じゃねーか。いい歳こいて何やってんだか」


「あらぁ、女性に年齢の話をしては駄目なのよー?ウェス君は女心を分かってないのねぇ」


「らんぼーものだしっ。あれ?あれ?あれれ?ランドはー?」


 キョロキョロと辺りを見回すプリムにリードさんが言った。


「ランドはまだ外で寝てますよ。あの人、一体どれだけ寝るんでしょうね?それより二人とも出立の準備はしておいて下さいね」


 そうなのだ。ランドさんったら村の広場の真ん中で大の字になって、まだ寝てる。


 あの巨体がでんって寝てるんだもの。初めに見たときは心臓が跳ねたよ。

 重たいので誰も運びたがらず、そのままだ。

 一応、虫が近寄らないようにと日光を和らげる結界は張ったけど。虫さされに関しては実は手遅れ……


「わー。ランドが面白い顔になってるーーー」


 遠くからプリムのはしゃいだ声が聞こえた。

 見に行ったんだな。






 ニーナさんとプリムはまだ本調子じゃないのと明日の準備の為に部屋へ戻っている。

 ランドさんは先ほどやっと起きてきた。けどすぐに悲鳴をあげてニーナさんのところに行っちゃった。

 寝てる間に掻きむしったりしたのかな?顔の虫さされが午前中より悲惨だった。


 で、私はというと。


「なるほど、旗を何に使うのかと思ったら、ピンの代わりなのですね」


「そうなんです。更地ならピンで充分なんですけど、森や草原だと旗の方が無くなりにくいので」


「うげぇ。これ、中の草とか消去してやがんのかよ?」


「だって、チクチクするのやじゃないですか」


「瞬間で燃やしてんの?」


 ウェストポーチの中の結界道具たちをお披露目中だったりする。


 村外れの森に近い空き地でウェスさんとリードさんに結界を披露することになったのだが、ポーチからピンではなく旗を取り出すとウェスさんから怒濤の如く質問が始まったのだ。


 ええ?ウェスさんキャラが違う……。


 空き地は私のすねくらいまでの草がぼうぼうだったからね。旗を使おうと思ったの。


 リードさんがウェスさんを羽交い締めにして困り顔で言った。


「チェスカ、まず結界を張る前にその道具について教えてくれますか?ウェスもちょっと落ち着いてください!」


「おい!離せや。よく見えねーだろ」


 や、ウェスさん。その距離だとしっかり見えてると思うよ。

 どうにも調子が狂うなぁ……。それにやりにくいかも。私はひとつため息を吐いた。


 そんなこんなで道具の説明からまず始めることにして、私は布を広げてその上に道具を並べていった。


「旗とピン、それからこの紐を結界の範囲を決めるために使ってます」


「まじないで最初に使ったのが紐でしたっけ?」


 リードさんは私がした獣避けのおまじないの話を覚えててくれたみたいだ。少し嬉しくなる。


「そうです。紐の内側に結界を張ったのが最初だったので練習はずっと紐でしていましたし、紐もなかなか便利なんですよ」


「基本的に囲う必要があるのか?マジックシールドみたいに障壁として展開はできない?」


 ウェスさんはニワトコのピンをいじりながら私の顔をのぞきこんできた。近い!私はのけ反って逃げる。


「何もないところにもできるんですけれど、無駄が多くて。消費魔力が10倍くらいかかっちゃうんです」


「ふーん。袋の中に結界とかはやんねーの?」


 だから、私のポーチ勝手に開こうとしないで!中身はもう出したから。空だから。

 説明を始めてからずっとウェスさんの食い付きがすごい。見かねたリードさんが彼の襟首を掴んで引き離してくれた。


「すみませんね。ウェスは魔法のことになると目の色が変わってしまうんです」


「は、はい。大丈夫です。えっと袋ですね」


 布の上に並ぶのはニワトコのピンが入った缶に10束単位でまとめられた旗が三つ。麻紐を編んで太くした紐を毛糸玉のようにまるめたのが一つ。細かく切ったボロ布が数枚に艶出しの油。

 ちなみに袋はない。


「昔は袋を使おうとしたこともあるんですけど、私が調子にのって魔力枯渇を繰り返しちゃったんで封印しました」


「魔力枯渇?なんでだ?」


「袋に入れた食べ物をいつも新鮮にってのを試したんですけど、気づかない間にも魔力を使ってしまうらしくて」


「ん?気づかない間って何だよ。無意識に結界を展開し続けたってこと?寝てる間にも?」


「う……。たぶん。どうもずっと新鮮にとか頭のどこかで考えてしまうみたいで。試す度に翌日くらいに気絶しちゃうのを繰り返してしまったんです」


 ふぅんと口元に手をあて目を閉じて何やら考え出したウェスさん。


 私とリードさんはじっと彼を見守る。

 パチンと指を弾いてウェスさんが私を見た。


「分かった。イメージ力だ。結界とは囲うもの、そして楔が境界を意味する。あんたの頭はそんな感じに結界の力を認識してる。だから、無期限でないとと考えてしまう鮮度を保つ魔法とやらはあんたの魔力を枯渇まですいとってしまう。んで、袋=枯渇のイメージが固定されてそうなる」


「??????」


「えーと?つまりどういうことですか?」


 私もリードさんも良く分からなかった。

 なのにウェスさんは勝手に納得して頷いている。


「枯渇を繰り返したから、あんたの魔力量も上がったんだな。偶然とは言えすげぇわ」


 私の結界の説明は、大体こんな感じで一人ウェスさんが納得しながら進んでいった。


「リードさん。私、ウェスさんの言っていることが良く分かりません」


「大丈夫です。私も分かっていませんでした」


 二人で並んでポカーンとウェスさんを見守り続ける私たち。


 そんな風に終わっていったタリク村の滞在でした。

 明日はいよいよフォルスに向かいます。

カフィ=コーヒー

安直。食べ物は日本のものと架空のものと適当に混ぜています。

チェスカの口調はちょいちょい日本人思考が混ざってる。

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