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文化祭準備②

 10月下旬。来たるべき11月の文化祭に向け、各クラスでは文化祭の準備が行われていた。

 我ら鹿雄かおす高校1年1組の出し物は『お化け屋敷』。お化けの衣装や教室の装飾品を作ったり、当日の教室の間取りや人員の配置を決めたりと、俺らのクラスも着々と準備が進んでいた。

 俺もこのクラスの一員だ。当然準備をしている。


「見て見て、兄間あにま。これこれ」

「どうした、不知火しらぬい。なっ、その剣は……!」

「おう、いいだろ。ハカセに作ってもらった」

「へえ、いいな〜。これ、アレだろ?」

「そうそう、それ。ちゃんと光るんだぜ。ほら。これで遊ぼうぜ!」

「よし! 望むところだ。原作再現しようぜ」

「遊ぶな。手伝え」

「うぐっ」


 兄間と話していたら、後ろからローキックを食らった。

 後ろを向くと、俺を蹴ったのが理富りふだと分かった。


「ち、違う。サボってたわけじゃないんだからねっ」

「口調が気持ち悪い。てか、それアレじゃん。この間ハカセからもらったやつ」

「そそ。先が光って懐中電灯にもなるやつ」


 理富が俺の持ってるおもちゃの剣に興味を示した。


「兄間と話してたってことは……アニメ系のなんかなの?」

「おう。兄間から勧められたアニメ『待ち受けはカウボーイ』に登場する剣だ」

「タイトルから剣要素が全然見えてこないんだけど」

「ジャンルは恋愛もの」

「なおさら見えてこない」

「カウボーイ好きな普通の女子高生がひょんな事からウエスタン風の異世界に転生する話」

「異世界転生モノかよ。それならなんか納得する」

「暗くて先の見えない洞窟に入るときに前を照らすために使ったのがこの剣」

「ほんとに懐中電灯だった!」


 俺が理富にアニメの話をしていると、俺にこのアニメを勧めてきた兄間も会話に入ってきた。


「なになに? 待ちカウの話? いや〜、いいぞ〜、アレは。劇場版も今公開中で内容も一般受けする話だし、マジオススメ。テレビ版はとりあえず3話まで見てみて。3話まで。ネタバレは控えるけど、あの展開はマジで……」

「あ、いいよ。見ないから」

「………………」


 熱く語ろうとして、理富にバッサリと切られた兄間はなんとも言えないような表情をしていた。


「さて、みんながなに作ってるか、他のとこの様子でも見てこようかな」

「いや、だからサボんなっての。他のとこの前に自分のとこをやれよ」

「まあまあ、あれだよ、あれ。敵情視察に行ってくる」

「敵じゃなくて味方なんだけど」

「ちょっとトイレ行ってくる」

「絶対嘘だ! まあ、別に切羽詰まってるってわけじゃないからいいけど」


 そう言うと理富はもともといたセインたちのところに戻り、作業を再開した。

 さて、お化け屋敷でみんなはどんなのを作ってるかな。



 〜〜



 遊台ゆうだいのグループがなにやらきゃっきゃと賑わいでいるのが見えた。


「へい、どんな感じ?」

「あ、不知火くん。ねえねえ、見て。かわいいでしょ」


 俺が声をかけると、遊台がこちらを振り向き後ろにいる猫目ねこめを見せてくるようにして言った。

 猫目の頭にはネコミミがついていた。


「どうニャ。猫又ニャ」


 猫目が手を丸めポーズを決める。

 普段からどことなく猫っぽいだけあって、ネコミミとポーズがとても似合う。


「あー、うん。かわいいかわ……」


 …………かわいかったらダメじゃない?

 俺らがするのはお化け屋敷だ。これじゃあ猫又と言うより、ネコミミメイドっぽい。


「うーん。かっわいいっ!」


 そんなことお構いなしに猫目に抱きつく遊台は、よく見ると頭に幽霊がつけてるような三角の布をつけていた。

 二人とも頭にワンポイントつけただけのなんとも簡易なお化けである。すごい低予算感がする。


「でも、このネコミミはなんかリアルだな。どう作って……」

「!? ニャーッ!」

「痛い!」


 猫目のネコミミに触ったら、猫目は素早い動きで俺を引っ掻いた。そして、距離をとり、「フーッ」と俺への警戒心を強めた。

 そこまで猫になりきらんでも。

 俺は視線をとなりの女子に移した。


座敷原ざしきわらの格好は結構手が込んでるな」

「まあの」


 座敷原は現在制服ではなく和服を着ていた。

 頭になにかつけただけの二人と違って、こっちはちゃんとお化け屋敷っぽい。

 前髪ぱっつんで背が低く、少し暗い色の和服を着た座敷原はまるで……、


「なんか日本人形みたいな感じだな」

「そうか……」

「ねっ。大丈夫でしょ、はなちゃん。堂々としてたら気づかれないって」

「ふむ、りつの言う通りだったの。こういう場では逆に適した格好になって大丈夫のようじゃな」

「もしくは座敷童子みたいだな。座敷原って普段の制服だとトイレの花子さんみたいだから、そのままでもよかったんじゃない?」

「思いっきりバレてるじゃないか!」


 遊台と話した座敷原が俺の言葉に叫んだ。バレてるってなにがだろう?

 よく分からないが、座敷原はこれでお化け役をやるのだろう。この格好は座敷原以外には似合いそうにないから、他の人にはできなさそうだ。

 遊台と猫目のは他の人でもいけそう。


「あー、その、律よ」

「うん?」


 座敷原が少し目をそらしながら遊台の名を呼んだ。


「その……何か忘れておらんか?」

「? どうしたの、花ちゃん」

「だから……その……霊花れいか虎番こばんのやつには言って、ワシには言ってないことがあるじゃろ」

「…………!? もー、花ちゃんったらー。ふふっ、かわいいなー、もー。ほーら、かわいいかわいいかわいい」

「………………」


 遊台が「かわいい」を連呼しながら座敷原に頬ずりをし、座敷原も遊台にくっつかれて満足そうな表情を見せた。

 その女子女子した空気に居心地の悪くなった俺は静かにその場を去った。



 〜〜



 女子3人組から離れ、次のグループへ。

 次は狂止きょうと時音ときおと福背ふくせの男3人組のところだった。


「おっ、歩斗ほと。いいとこに来たな。こっちこっち」


 狂止に呼ばれ、そっちに行くと、狂止は手に赤の絵の具がついた筆を持っていた。


「どう? これ」

「えーっと、どれどれ」


 俺は狂止と向かい合う福背の顔を見た。福背の顔には狂止がつけた赤い絵の具がついていて、これで血を表現したお化けにしたいのが分かる。

 分かるんだけど……。


「血って言うか……なんか」

「だよなぁー。なんか違うよな。俺は不器用だからな」


 血と言うか、ただ赤い絵の具を塗っただけな感じだ。

 どう直したらいいかは分かんないけど、なんか違う。なんだろうな。色?


「水気が少ないんじゃないかな」


 時音の言葉に従い、狂止が水を足したものを福背の顔に塗った。


「ていうか、一回紙に描かない? なんで直接人で試すの?」

「いやー、ほら、やっぱ実際に顔に描かないと分かんないじゃん」

「まあ、いいけどさ」


 文句を言った福背の顔に塗った赤色は……うーん、やっぱりなんか違う。なにかが違う。

 この……なにかは分からないけど、なんか違う感じ。とてももどかしい。

 狂止もおそらく同じようなことを思って微妙な表情をし、福背の顔に絵の具を付け足す。


『←※血』


「ブフッ」


 吹いた。


「ねえ!? 今なんか書いたよな! 明らかに関係ないやつ書いたよな!?」

「書いてない書いてない」

「嘘だろ! 不知火が笑ってたぞ!」


 俺を指差す福背を「まあまあ」と狂止が宥め、さらに血を描き足す。


『←※鼻血』


「ブッフッ!」

「おう、今絶対ヒゲ描いたろ! 描かれた場所から分かるからな! んで、また文字書いたし!」


 残念。ヒゲじゃなくて鼻血だ。


「もういい! 俺が描く!」


 福背は狂止から筆を取ると、自分の顔に血を描き始めた。

 お前が描くのか。



 〜数十分後〜


 その後、俺や狂止や時音も描いていき、最終的に……、


 顔面白塗りで唇が真っ赤の男が完成した。


「「あーはっはっはっ!!」」


 俺と狂止はもう隠そうともせず大笑い。俺らみたいに大声で笑うタイプじゃない時音も口を抑え笑っている。


「ちょっ、どうなったの? だれか鏡持ってない? 鏡」


 福背もなんだかんだでノリがいい方だからな。こういう悪ふざけに乗ってくれる。むしろ、積極的にこの方面にもっていった。


「あれだな。語尾におじゃるとか付きそうな見た目だな」

「たしかに。ちょっと、福背……」

「麻呂に指図するでないでおじゃる」

「「あははははっ!!」」


 スマホで福背の顔を撮り、それを見せて福背も俺たちと一緒に大笑いした。



 〜〜



「あー、おかしかった」


 完全に悪ふざけ一直線だった狂止たちのところで笑い疲れた俺は次のグループへ。

 次は……、


「やってるかね?」

「……どの立場?」

「なにしてるのよ、不知火 歩斗。暇なら手伝いなさい」


 聖華せいか津出つでのところだった。

 二人は地糸ちいと十字じゅうじとダンボールでなにかを作っていた。


「なに作ってんの?」

「……井戸」


 なるほど。井戸かー。そのまま置いておいても怖い雰囲気がしていいし、お客さんが近づいてきたら、中からお化けが飛び出してもいい。お化け屋敷にありそう。


「……サイズが決まらない」

「サイズ?」


 俺の疑問に聖華の代わりに津出が答える。


「今の大きさだと、見た目的にはいい大きさだけど人が入らないの。でも、人が入れるぐらい大きくすると、見た目がおかしくなる。どっちもいい感じにするのが難しいのよ」


 あー、はい、なるほどね。

 どう見ても人が入ってますよー、的な大きさの井戸だと怪しいもんな。お化けが出てくることがバレバレだ。


「じゃあ、もういっそのこと人が入らないやつでよくない? オブジェクトとしての井戸にしたら?」

「……それは却下で。せっかくだからいいやつを作りたい」

「そう。妥協は許されないわ。学校一のお化け屋敷……ううん、世界一のお化け屋敷を目指すのよ!」


 津出がそう宣言して、窓の外のどこか遠くを指差した。志が高い。

 聖華を見ると、「私はそこまでではない」と首を横に振っていた。


「……でも、妥協しないのは同意。ホラーゲーみたいにしたい」

「途中にハーブ置くとか?」

「……アクション性が高くなりそう」


 などと聖華は話しながら、俺が話しかけたことで止まっていた作業を再開する。

 俺も手伝うかな。話しながら。


「そうそう、俺今、兄間に薦められて『待ち受けはカウボーイ』っアニメ観てるんだけど聖華知ってる? それに出てくる剣をハカセに作ってもらってな」

「……ダンジョンで使ったたやつ? たしか名前は《懐中電刀フラッシュ・セイバー》だったはず。もちろん視聴済み。ダンジョン戦は作画もいいし、話の展開もいい。盛り上がる」

「あ、私その映画をこの間観たわ」


 俺と聖華が話していると、津出も会話に加わった。


「……劇場版も当然観た。津出が観てたのは意外だ」

修地しゅうじと観に行ったわ。意外と面白かったわ。ちょっとうるっときちゃった」

「……分かる。時間がないから少し早足ではあるが、きちんと盛り上がるポイントは抑えてあるし、中でも……」


 聖華と津出が映画の話で盛り上がっていた。

 俺が観てるのは、兄間に借りたテレビ版のDVDだからな。話に加われないことはないがちょっと合わない。まあ、二人が話してるところに割って入るのも悪いしな。

 俺は話し相手として、一緒に作業してる地糸と十字の方を見たが、


「へー、シュウっち、ヒーチーと映画観たんだねー? いいなー、いいなー、私も行きたいねー!」

「ああ、いいんじゃないか。いつ行く?」

「やったー! じゃあね、じゃあね、私とー、イッチーとニーチとヨンちーとねー……」

「俺は何回行けばいいんだ……?」


 二人も話してて、俺は加われそうにない。

 仕方ない。おとなしくこの井戸を作っておくか。

 と、しばらく作ったり話したりして、膝ぐらいの高さで人が入れそうなサイズの簡単な井戸が出来上がった。


「よし! とりあえずはこんなところね。デザインは後で決めるとして……中にいる人が外の様子を見れないと困るから、穴を開けたわ。それでちゃんと外が見れるか確かめたいから……ちょっと修地、入りなさい」

「はいはい」


 津出の指示に地糸が素直に従う。

 地糸が井戸の中に入ると、外から見えないように津出がフタをした。


「もうちょっと小さくなりなさいよ。閉まらないじゃない」

「無茶言うな。これで限界だ……いたたたたっ! ちょっ、無理に閉めようとするな」


 やっぱり人が入るには少し小さかったみたいで上からフタを押さえつける津出に、地糸が悲鳴を上げる。

 小柄なやつならいけるかな。座敷原とかならいけそう。


「どう、修地。なにが見える?」


 どうにか収まった井戸に津出が声をかける。

 どう入ったんだろう。仰向けかうつ伏せか。どちらにしろかなりきつそうだ。

 どこに開けたかは見てなかったから分からないけど、どこかに開いた穴から外を見る地糸は答えた。


「……ピンク」

「? ピンクってなにが……。……! この! 修地! あんたは!」

「ちょっ、ごめっ、痛い! 痛いって!」


 井戸のすぐそばに立っていた津出は最初は地糸がなにを言ってるか分からなかったが、すぐにその意味を理解し、頰を赤らめスカートを抑えて地糸のいる井戸を蹴った。


「この! すぐにあんたはそういうとこばっかり見て!」

「ごめん! でも、俺だって見たくて見たわけじゃ……」

「うりゃああぁぁぁ!」


 津出が地糸に蹴りを入れ続けていく。みんなで作った井戸がボロボロになっていく。

 今回は大きさを考えたのがメインで、あの井戸もどうせ作り直す予定だったから、別に壊されても構わない。

 それにしても……ピンクか。


「……おい」

「なに? どした?」

「……白々しい。考えてたよね」

「うん!」

「……開き直るな。まあ、歩斗が悪いわけじゃないけど、とりあえず忘れろ」

「あはは。それはさておきさ」

「……最低」


 返事をボカした俺に対する評価が聖華の中で下がるのを感じるが、それもさておき、


「井戸作りどうする?」

「……できなさそう」


 ボロボロになった井戸と地糸をまだ蹴り続ける津出を見ながら聖華は答えた。ちなみに十字はそんな二人を茶化してる。


「俺は別のところ行くけど、聖華はどうする?」

「……ついてく」


 俺と聖華は津出たち三人の元から立ち去った。



 〜〜



 そして元々俺がいた理富たちがいるところに帰ってきた。


「ただいまー」

「ん、おかえり」

「……お邪魔します」

「一人増えてる。お邪魔されます」


 ここは理富と兄間とセインとワワで、お化け屋敷に置く小物を作っていた。アバウトなのは石とか草とかいろいろを作ったり作らなかったりしてるからだ。


「てか、作ってなくね。俺が出て行ったときと変わってないんだけど」

「いやー、なに作っていいか分からなくてね。お化け屋敷ってなに置いてるっけ?」

「えーっと、お化け?」

「それは分かるよ。小物だよ、小物系。ワワが棺桶はどうかって言ったんだけど、棺桶作るならだれかドラキュラの格好で出てこないといけないじゃん。ドラキュラがいないのに作るのもあれだからね。歩斗が帰ってくるのを待ってた。どう? 他のとこにドラキュラいた?」


 それっぽいサボりの言い訳をする理富に俺は回った他のグループの話をした。話しかけてない他のところもチラチラとは見ていたが、俺が見た範囲ではドラキュラはいなかった。


「そっかー、ドラキュラいないか。てか、津出たちのところで井戸作ってるならかぶるじゃん。ごめんワワ、やっぱ棺桶はなしで」

「うむ、仕方ない。それなら別の物を作らねばな。怖いもの怖いもの……うぅむ、何があるかな……」


 ワワが首を捻りながら考える。

 俺も考える。お化け屋敷にある物……。ダンボールで作れそうな物……。

 ちょっと見た感じでは、みんなお化け系が多かった気がした。

 ハカセはお化けのホログラムを作ると言って路保ろほと発明部の部室に行っていた。無理しない程度に頑張ってほしい。


「そうだ。セイン、あそこ行こうぜ」


 俺はセインの方を見て提案した。

 そうだ。思い出した。あそこに行けば、なにかいいものがあるだろう。


「なに? どこに遊びに行くの?」

「違う違う、遊び違う。ほら、あれだよ。前に夏黄かき先輩たちと見たじゃん。体育倉庫」

「なるほど。たしかにそこならいっぱいものがあったし、使えそうなものがあるかもね。実際に獅子舞は去年使ってたって先輩も言っていたし。行ってみようか」

「なに? 体育倉庫?」


 俺とセインが話していると、理富が興味を示した。いや、理富だけじゃない。みんなこっちを見ていた。


「まあ、ここで考えても仕方ないしな。みんなで行こうぜ」


 と、俺らは6人でぞろぞろと体育倉庫に向かった。



 〜体育倉庫〜


 電灯がなく窓から日の光が入るだけの体育倉庫の中は薄暗かった。こんなときこそ、これの出番だ。


「全ての闇を払う伝説の聖剣よ。我らの道を照らしたまえ!」

「「懐中電刀フラッシュ・セイバー!!」」


 俺がハカセに作ってもらった剣を構えて、アニメで見たセリフを言うと、アニメを知ってる兄間と聖華が続きのセリフを言った。

 それに合わせて手元のスイッチをオンにすると、懐中電刀フラッシュ・セイバーの光は体育倉庫の中を明るくした。


「おおーっ!」


 と、ワワは目を輝かせており、アニメを観ている俺ら三人もアニメシーンの再現に満足していたが、理富とセインは冷めた目で俺らを見ていた。


「んで、ここになにかいいのがあるの?」


 言いながら体育倉庫に入る理富の行く先に懐中電刀フラッシュ・セイバーで光を向ける。

 壊れかけのマネキンが光に照らされた。


「「うおおおっ!!」」


 び、びっくりした……。暗い中でいきなり出てくるとなかなかに怖いな。


「びびった……。これはお化け屋敷に使えるんじゃない?」

「このマネキン? たしかにな。怖かった」

「んー、生首の状態で置いた方が怖そうかな。ちょっと歩斗、その剣でこのマネキンの首おとして」

「怖いこと言うなよ。おもちゃだから無理だし」


 と、俺は体育倉庫の中を照らし、獅子舞を探した。

 その獅子舞は前に俺が変な生き物だと勘違いして、セインたち異世界研究部のみんなと正体を暴いたものだ。

 もともと怖い見た目をしているし、去年の文化祭のお化け屋敷に使ったらしく目が光るように改造されている。

 それを今年のお化け屋敷にも使わせてもらおうと思って、体育倉庫まで来たんだが……、


「あれ? ないな。なあ、セイン。たしかこの辺にあったよな?」

「獅子舞? そうだね。その辺りにあったはずだよ」

「ないとなると……だれか俺らと同じこと考えたやつが持っていったか」

「そうかもね。まあ、ないなら仕方ないよ。他にお化け屋敷で使えそうなものを探そう」


 俺らは獅子舞を諦めて、なにか他にお化け屋敷に使えそうなものがないか探すことにした。

 俺は自分でも軽く探しながら、懐中電刀フラッシュ・セイバーでみんなの言うところを照らす役目。


「む、ホト、すまぬがこっちにライトを向けてくれないか?」

「お、なんかあった? ワワ」

「痛い。本物なら死んでた」

「あ、悪い、兄間」

「歩斗、ちょっとこの辺りをお願い」

「おやすいごようさ、セイン」

「いたっ……振り回すなよ、そんな長いもん」

「ごめん、理富。……使い勝手悪いな! この懐中電灯!」

「……知ってた」


 しばらく探して、ふと聖華が呟いた。


「……ここのやつって勝手に使っていいの?」

「いいんじゃない?」


 適当に返事をする俺に、セインは「いやいや」と言葉を発して、


「一応確認とった方がいいよね。聞いてくるよ」


 と、体育倉庫から出ていった。

 こうして許可をもらったセインと適当なものを取って教室に帰った。

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