オセロ
《黒野蒼夜》
白の中に黒が一人
ガッ!バキッ!ゴッ!グシャッ!
「うおー!やべー!力が漲ってくる!」
「今なら世界記録越えられるんじゃね⁉︎」
白髪の男達がゴキブリのようにうごめく。
ゴッ!ベキッ!ボコッ!
「なんつーか、身体中が研ぎ澄まされてる感じ?」
「俺は24時間走り続けそうな感じだ。」
興奮と狂喜が体を支配する。
ガッ!ドゴッ!ガンッ!
「あー試してぇ!」
「だよな!」
「だからさ、お前ら、」
「早くそいつを殴るの代わって。」
黒は少しずつ赤く染まる。
倒れ伏した黒に容赦なく暴力が振るわれる。
「…いや、しかしこいつも本当人間じゃないよな。」
「ああ、殴って傷付けた所がすぐに治っていきやがる。」
「マジで化け物だよ。」
「おう、だから油断するなよ。20人でローテーションで殴っていくぞ。」
「わかってるって!こいつもいつか死ぬだろ。」
「いやもう死んでるんじゃね?身動きひとつしなくなったぞ。」
「馬鹿が、それが油断なんだよ。このまま続けろ。」
「「「おう!!」」」
赤は思う。
……血がほしい。
黒は思う。
駄目だ。俺はもう人の血を飲まないと決めたんだ。
赤は願う。
……こいつらを殺して何が悪い、豚や牛を殺すのと違いなんてない。……限界なんだ。
黒は思う。
川と約束したんだ。あいつと一緒に学校に行くために。
赤は。
死んだら行けない。
黒は。
川はそんな事望まない。
赤、
殺さなきゃいい。
黒、
血を見て我慢出来ない。
赤、
死ななきゃいい
黒、
守らなきゃ。
赤、
何を?
黒、
川との、……
……違うだろ?
守らなきゃ、
俺たちは、
殺さなきゃ、
死んだら、
血を、
敵を、
川を!
黒は赤に染まる。
ブチブチブチ!!!
「……は?」
殴り続けていた白の手が無くなった。
バリバリ!
「…おいおい。」
ヒュン!
白の腹に風穴があく。
ムシャムシャ。
「……ちょっと待てよ。」
ヒュッ!
ドゴッオオオン!!!
赤の周りから白が吹き飛んだ。
「…何なんだよ!この化け物は⁉︎」
廃工場の中は暗く光はほぼない。だが、はっきり見える。
赤く赤く赤く赤く赤く赤く赤く赤く。
地面の周りは赤く染まる。
倒れた白も赤く染まる。
……黒だった男の眼は赤く輝く。
白は怯える。さっきまでの化け物はなんだったのかと。強さを誇ったあの黒は、倒した相手を殺そうとはしなかった。……だが、この赤は、俺たちを敵としてすら見ていない。気に入らないモノを自分好みに染めるように……殺す気だ。
赤は赤く。
自分の血と返り血に染まり、赤になる。
白の中の赤が震えだす。
ドクドクドクドクドクドク!!
全身の赤が警報を鳴らす。
嗅いだ赤の匂いから、
見える赤い男から、
聞こえる赤が噴き出す音から、
内から感じる、赤の鼓動から、
震える、どうしようもない恐怖が白を襲う。今から味わう赤い味に、
恐怖が赤く染まり始めた。




