犯罪者天野川
《公園》
「……そうなの。辛いわね。」
「いや、そんな事はないぞ。」
…何故か彼女に全てを話していた。圓城との事を、
「溜め込むのはよくないと思うわ。我慢出来るからといって傷付かないわけじゃない。全部この程度で済ませようとしてしまう。…高校生にもなると子供みたいに泣けないから痛みを伝えるのがみんな下手になるのよ。」
あのおっさん達に愚痴られたせいだろうか。つい、口が滑ってしまった。
「でも大丈夫、逆に私たちは子供じゃないからその痛みを解決する術がある。」
だが、話を聞いてもらったからか心が少し楽になった。…彼女がいてくれて助かった。
「…どうやって?」
「痛みのもとを消せばいいの。」
「痛みのもと?」
「人を失った悲しみは新たな出会いで消せばいい、人に付けられた傷は医者のような人に治してもらって消せばいい。人に裏切られた怒りは他の人にぶつけて消せばいい、人に与えられた屈辱は次に活かす自分の力にして消せばいい、人に優しくしてもらった罪悪感は他の人に返して消せばいい、」
「……そうなのか。」
「そう、みんなすべて繋がってるの。だから溜め込む必要なんてないの痛みも辛さも喜びもみんな誰かに返してあげればいい、自分が受けたものすべてまた誰かに返してあげる。そうすれば今のあなたの苦しみも消えるわ、だってそうしていけばみんな平等になれる。自分が苦しい時も他の人もこの苦しみを味わっていると思えばきっと耐えられるはずよ。」
「そうか。」
「ええ、だからあなたもその思いを誰かに返してあげればいい、苦しい事を傷ついた事を、……そうすればあなたの思いを理解してくれる。あなたがどれだけ苦しんだのかを、みんなが受け止めてくれるわ。」
「そうか。」
「痛いのが苦しいのはわかってる。でも、みんなが分かち合えばそれは繋がりになる。……みんなで幸せになれる。」
「……みんな幸せに。」
紅夕日はにっこり微笑む。
「ええ、だからまずは返してあげましょう。……あなたの思いを。」
《黒野蒼夜》
「…いない。」
学校から出て川を捜すため走り回っていた。駅前、家、服屋、本屋、学校の周辺よく行く場所をしらみつぶしに捜すが見つからない。今、どんな気持ちでいるのか。……早く探さないと。
「……。」
そのあと2時間後、川は見つかった。場所は海辺の竹林の中。
「…川。」
「…やあ、蒼夜。どうした?」
「どうしたじゃないだろ!」
川の顔は血塗れで右手には包丁が握られている。
「いや、これには訳があってだな。」
「……。」
「ちょっとした誤解なんだよ。」
「……。」
……遅かった。
「俺は悪くない。」
「……。」
川の後ろには、……血塗れの山下杏奈が倒れていた。