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犯人探し

《探偵部》



「この犯人を月宮さんと川君、姫星君に探してもらい見つけたほうの勝ちです。」


「警察に任せたほうがよくないか?そんな凶悪犯。」


「もちろん捕まえて貰うのは任せます。ただ、犯人を見つけるだけです。…出来るでしょう?月宮さんと姫星君なら」


なるほど、同じ学生で相手の嘘を見抜ける二人なら怪しまれずに探せる訳か。


「この件に私や黒野君は参加しません。人数でズルになりますから。」


「…リベンジって事でいいんだな、」


「はい。その代わり川君達が負けたら月宮さんは入部してくれません。」


「あれ?責任重大?」


「はい、期限は一週間。もしお互いが見つけられなくても探偵部の負けです。」


「かなり分が悪くないか?」


「その程度なんとかしてください。あ、この資料はこの周辺地区に住んでいる学生の名前と被害にあった女性の年齢、職業などのプロフィールです。」


そう言って圓城は俺と月宮にその資料を渡してきた。受け取った月宮はそれをパラパラとめくる。


「…襲われた女性は本当にバラバラね。」


「はい。特徴、性格、家族構成にいたるまで何もかも。いったい何で選別していたのかわかりません。」


俺も資料をめくる。…そういや、地図の横に数枚の写真もあったな。俺はテーブルに置いてある写真を手にとる。


「それは襲われる前の被害者の写真です。」


「……。」


みんな笑っている。一人で写っているのや友達や家族で写っているのもあるがみんな楽しそうだ。…今、彼女達にはこの写真のように笑えるのだろうか。


「…圓城、俺はもう先に帰る。」


「あ、はい。わかりました。頑張ってくださいね。」


「……。」


「それじゃ私も帰るわ。…この資料借りていくわね。」


「はい、ではよろしくお願いします。」


俺と月宮は部室を出て行った。






《探偵部部室》


「…蒼夜。」



一人残った圓城はおもむろに呟く。


「なんだ?」


すると窓際のカーテンの裏から蒼夜があらわれた。


「…少し危険だと思うか?」


「かなりな。川のやつ、相当怒ってたな。…お前に対して。」


「それはそうだろう。被害者も出ている凶悪犯を探させる事を勝負事、もといゲームのようにしているんだから。ふざけるなと言いたいだろうな。…だが、これしかなかった。」


「…月宮か?」


「ああ、彼女の能力にでも頼らなければまた次の被害者が出てしまう。…犯人の選別方法がわからない限り。」


「無差別じゃないのか?」


「ない。犯人は必ず目的を持っておこなっている。切り取られた断面はかなり綺麗で犯人はとても手慣れている。奪った部位もおそらく記念品のように大切にされているだろう。…そんなふうに感じる。」


「犯人がお前でもわからないんじゃ、どうしようもないな。」


「…いや、なんとかするだろう。そうなるように私は動いたんだから。」


「……?」



そう言って圓城も部室から出て行った。







《天野川》


探偵部を出た後俺はダラダラと校門に向かって歩いていた。


「……。」


イライラする。どうしようもないくらい。人を傷つける犯人がいる。そのせいで笑えなくなる人がいる。


それを損得のみで考えるバカがいる!



…それなのに俺は何もできることがない。


「…くそっ!」


こんな状況に、こんな空間に何をするでもなくただいる自分が嫌になる。



…もう何も考えたくねぇ。


さらに足が重くなるのを感じながらゆたゆたとただ歩いていた。



「あ、天野君!」


急に後ろから声をかけられ徐に振り返ると満面の笑みの山下が俺に向かって走ってきた。


「…よう。」


「今から帰りですか?一緒に帰りましょう!」


何が楽しいのか何が嬉しいのか山下はすこぶる元気に俺の隣についた。…正直、今は勘弁してほしい。


「…部活、終わったのか?」


「はい!本当に運が良かったです!」


時計を見ると確かに、…ダラダラ歩いていたせいか。こんな事なら早く帰る……。


いや、こんな気持ちだからか。


「…元気ないですね?」


「…まあな。」


「理由当ててあげましょうか?」


山下さんが輝くような笑顔で言ってくる。…山下さんが知るわけないだろう。俺は山下さんから顔を背ける。だが、山下さんはまったく気にする様子もなくカバンから数枚の紙を取り出して俺に見せてくる。


「ジャジャーン!見てください天野君。全教科90点台です。もう見事に山が当たってしまってこれはもう日頃の努力の結果ですね!覚えてますか?テストで負けた方は勝った方の言うことなんでもきくというやつを!ふふん!何してもらいましょうかね?天野君にはいつもからかわれてばかりですから!」


…俺はゴソゴソと鞄から数枚の紙を取り出して山下さんに渡す。


「そうですね!罰ゲームと思って一週間、学校への送り迎えしてもらいましょうか?そ、それとも、に、日曜日に私の荷物持ちとして少し遠出に付き合ってもらうとか。あと、な、名前で…ん?テスト結果ですか?……………………………100、えっ?えええええ!!!」


「…山下さん罰ゲームな。今から語尾に必ずニャーを付けて喋れ。」


「えっ!そ、そんな無理ですニャー!!」


…意外とノリいいな。


「ほ、ほかの罰がいいです………にゃ。」


……。


「や、山下さん。明日までそれで。俺、頑張って明日の授業で必ず山下さんが当たるように先生を説得するから!」


「だ、駄目です、駄目です!それだけは!……にゃぁ。……今日まででお願いします………にゃぁ。」


……。


「…くっ!あはははは!!」


なんだこの子は!マジで!人がせっかくシリアスに決めてたのに!落ち込んでたのに!本当に!今さっきまで!


「わ、笑わないでくださいよ!は、恥ずかしいんですから!……にゃぁ。」



「あはははははははは!!さ!最高だ!」


なんだ俺!馬鹿じゃねぇのか?難しく考える必要なんかない!笑えないやつがいるなら絶対に笑わせてみせればいいじゃねぇか!損得のみでしか考えられないなら笑える事が得だと教えてやればいい!…大丈夫だ、俺にも出来ることはある!



「山下さん、…ありがとう。」


「そ、そんな泣くほど笑わなくてもいいじゃないですか!ニャー!」


ははっ!…本当に。うん、元気でた。





もう考える必要なんかない。人を傷つける犯人がいるなら、俺が必ず見つけ出す!




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