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お茶時々コーヒー  作者: 須景夜々


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「ねえ(かがり)くん。茶道室に何か花を置こうと思ってるんだけど何がいいと思う?」


朝霧(あさぎり)さんは飲んでいたお茶を置いてそう言ってきたので、僕は口に頬張っていたカステラを飲み込み、答える。


「唐突だね。室内で楽しむならベゴニアとかがいいんじゃないかな。どの季節も楽しめるし」

「そうだよね。私もそうしようと思ってた。」


 茶道室には小さな冷蔵庫と小さな棚。そして座布団が数枚。壁には申し訳程度の掛け軸があるが、かなり殺風景で寂しい部屋だった。この部屋に花でもあったら雰囲気がよくなりそうだ。今の所、部屋を開ける者はいたけど誰も入部していない。ワクワクして部屋を開けて、日本人形みたいな朝霧さんと目があったら僕でも逃げる自信がある。僕らは如何(いかん)せん暗くて親しみがない。フレンドリーにとか言われても僕らは理解できなかった。



「と、言う訳で花を買いに行きましょう」


朝霧さんはそう言いながら茶道具を片付け始めた。


「すごい行動力だね。何か理由があるの?」


僕も急いで湯呑みとお皿を片付けて、外へ出る準備しつつ、もう靴を履き始めた朝霧さんに聞いた。


「私ね、生き物を飼ってみたいと思ってて。でも、私はもしかしたら生き物の世話とかできない人間かもしれない。だからね、花に毎日水をあげてそれが半年続いたら飼おうと思って。」

「なるほど、計画的だね。ちなみに何を買いたいの?」

「亀。ちっちゃいリクガメが飼いたいの」


朝霧さんはああいう動物が好きなのか。確かに亀とか飼ってそうな感じだ。

朝霧さんが待っているので、僕も靴を履いて外へ出た。

 花屋は学校から徒歩5分の場所にあり僕は何度か来た事があった。だいたい僕がこの花屋に来る時は一人で仏花を買いに来る時なので誰かと行くのは新鮮だ。朝霧さんは行った事がなくスマホで確認しながら行こうとしていたので僕が花屋まで案内した。

 5分ほど歩き花屋に到着。花屋のおばさんと僕は顔見知りなので軽く会釈し季節の花コーナーへ向かった。


「たくさんあるね。ハイビスカス、アサガオ、ポーチュラカまである。アサガオはちょっと無理かな。茶道室がジャングルみたいになっちゃう。」

「ここにあるガーベラとかいいんじゃない?」


僕は植木鉢に植えられているガーベラを指差す。朝霧さんはガーベラを吟味したがお気に召さなかったようで別のコーナーへ行ってしまった。僕は外に飾ってある花を見に行った。店の前では大きな向日葵が2輪並んでいた。まだまだ成長段階のようで非売品の札が貼ってあった。一輪は太陽と逆方向を向いていてこの二輪はなんだか仲の悪いみたいだ。もう少し夏が深まったらこの向日葵を買おうかな。

 そろそろ朝霧さんは花を決めたかなと思い、探しに店の奥へ向かうと何か手に花を持っている朝霧さんを発見。手に持っているのは、、、わからないな。何の花だろう。


「朝霧さん、手に持ってるその花、なんて花?」

「これはね篝くん、アンスリウムっていうんだよ。綺麗でしょ」


満面の笑みで手に持った花を見せつけてきた。ご満悦で何より。朝霧さんの選んだ花は葉がハート型で赤い。見たことあるようで見た事がない花だ。こうみると朝霧さんは花を持つ姿が似合っているな。なんというか華やかだ。いつもいい匂いがするからそれかもしれない。


「それにする?」


年中咲く花じゃないよ、と言おうと思ったけど水を差すのはやめておいた。やっぱり季節物がよくなったのだろう。


「うん。篝くんも買おうよ。せっかく来たんだし」


僕は定期的に来てるけどね。

つい一昨日バイトの給料日で懐には余裕があったので僕はピンクのガーベラを一輪買うことにした。根っこまである花を買うのは初めてかもしれない。

 プラスチックのプランターごと購入。手に持つとずっしりと重く、ガーベラのいい匂いがした。


 部室へ戻り僕たちは花を置く場所を決めることにした。


「私の花は掛け軸の下に置くね。」

「わかった。じゃあ僕はここに。」


ガーベラは風通しが良くないといけないらしく窓際に置くことになった。部活中は網戸にしたら問題ないだろう。なんだか花を置いたら随分と爽やかになった気がする。これは新入部員が期待できる。

 朝霧さんは早速飾った花を眺め始めている。あんまり夢中に見ているので気になって、僕も朝霧さんの花を見るとてんとう虫が茎にくっ付いていた。なるほど、これを見ていたのか。こうなってしまうと何も聞こえなくなり梃子でも動かなくなるので僕は電子ポットに水を入れてコーヒーを作る準備を始める。棚からコーヒースティックを取り出しお湯が沸くのを待った。茶道部に入ったばかりの頃、お茶を飲んだ後にコーヒーを沸かして朝霧さんに怒られた事があるのでお茶を飲む前に作らないといけないのだ。今思えばあれはとんでもない行為だったなと、自分でも思う。もしあの時に朝霧さんがたまたま日本刀を持っていたら僕の首は吹き飛んでいた。

 お湯が沸いたのでコップに注ぎ、そこへコーヒー粉末を入れる。そしてスプーンでだまが目視できなくなるまで混ぜて完成。

せっかくなので本でも読みながら飲もうと思いリュックの中にある本を取り出そうとリュックに手をかけた瞬間、上から巨大なものが落下したような音が聞こえて僕は驚いて尻餅をついてしまった。


「な、なんだ?」


パラパラと天井から埃が落ちてくる。この部屋の上は、、、美術室だ。

僕は茶道室に被害がないことを確認し、急いで美術室へ向かった。


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