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後ろのメリーさん  作者: 10.bi
着信アリ
3/34

1.3

「あと少しすれば退院を許されるよ」


 早苗が言うと、少女は大層喜んだ。

 早苗が健康と保障されることについてだろうか。いや、違う。

 

「やっとこの退屈な部屋から出て行くことが出来るのね?」


 病室と云う白い箱を出られることに対し、少女は喜びを感じていた。

 様子に、早苗は嘆息する。

 

「嫌なら出て行けば良いだろう?」

「嫌よ。貴方を見ておきたいの」

「見て居ても楽しいことはないだろうに」

「あった。お医者様に人形のように扱われるのは、見ていて楽しい物よ」


 思い出したのだろう。少女は笑う。

 浮かべられた笑みは、早苗には見ることが出来ない。

 

 カーテンの向こうに隠された顔は、果たしてどのような表情を浮かべているのか。

 そもそも、早苗は少女の顔を見たことがなかった。いまも靴が姿を見せるばかりで、少女の姿を見ることは叶わない。


 視線に気づいたのか、カーテンが揺れた。

 少女はカーテンの向こうで首を振っていた。

「私の顔を見ようとしているのね。まだ駄目よ」

「それはいつになったら許されるのかな」

「本当は、いつでも構わないのよ。ただね、折角だから退院してからにしようと思うの」


 退院祝いとして顔を見ることが叶う。

 あまり嬉しくない。ただ興味を惹かれる言葉に、早苗は頷いた。

 

「ところで、自己紹介をしようとは思わない?」

「退院したら、ね」

「名前が分からないから、呼び辛い」


 仕方がないと言うように、少女は言う。

「そうね、……メリーが良いかしら?」

「メリー?」

「ええ、メリー」


 メリーは頷き、また笑みを浮かべた。


 鈍感にも早苗が気付くことはなく、勘付くこともなかった。

 三日後、早苗は退院した。

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